中国国家薬品監督管理局(NMPA)は、「化粧品用バイオテクノロジー由来原料の技術要求通則」を正式に公布しました。同標準は2027年5月1日から施行されます。
同じ原料でも命名ルールに適合しない場合、届出の差し戻しや審査における度重なる調整対応といった課題に直面する可能性があります。本稿では REACH24H がバイオテクノロジー系原料の命名方法と技術的留意点を整理し、関連企業のコンプライアンス対応をサポートします。
命名の標準化:バイオテクノロジー由来原料の命名方法
「発酵由来化粧品新原料の命名に関する技術ガイドライン(意見募集稿)」によると、発酵由来新原料の中国語名称を設定する際には、使用菌株、発酵基質、製造工程、化学組成など、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。
企業は、以下の基礎情報について十分な研究を行い、原料の実際の特性に応じて、科学的かつ妥当な中国語名称を設定することが求められます。具体的な命名パターンについては、意見募集稿の附属表も参照可能です。
表1 発酵由来新原料の命名に必要な基礎情報
基礎情報 | 要件 | 補足説明 | 命名規則および例 |
菌種 | ・特定の菌種:菌種の由来を明確にし、使用する微生物の分類学的情報を確認したうえで、安全性・安定性などに関する背景資料を分析する ・自然選抜により得られた菌種:必要な資格を有する専門の第三者機関による同定を受ける | ・遺伝子改変を行っている場合は、菌種の同定に加え、改変プロセスが菌種に及ぼす影響についても説明する ・複数の微生物を用いて共発酵する場合は、共発酵の方法と、複数微生物を個別発酵後に物理混合する手法との相違点を明記する | ・菌種は原則として属レベル以上まで特定する。属名のみでは誤認の恐れがある場合(特に当該属に病原性微生物が含まれる場合)は、種レベルまで具体的に示す ・原料名に菌種の中国語名のみを記載すればよく、ラテン語学名の追記する必要はない ・自然発酵技術により得られた新原料については、原料名から菌種情報を省略し、「〇〇果実発酵物」など、発酵工程を示す用語を用いることができる |
基質 | 得られる原料に実質的な影響を与える基質を重点的に確認する | 微生物を用いて植物由来原料などを発酵させる場合は、①使用原料が微生物の生育・代謝に関与し、新原料の品質・安全性に実質的な影響を与えることを説明し、物理的混合と区別する、②原料の種を同定し、分類学的情報を明確にする | ・菌種培養に用いる一般的な培地または典型的な発酵基質(例:グルコース、ペプトンなど)は、原料名に含める必要はない ・植物由来原料を基質として使用する場合は、原則として植物の中国語名称とラテン学名を明記し、使用部位も明確にする。植物抽出物を発酵させる場合は、「抽出物」であることを名称に反映し、元の植物と混同しないようにする ・大型菌類は植物の命名方法を参照する |
製造工程 | 得られる原料に実質的な影響を与える発酵工程および後処理工程に着目する | 一般的な後処理工程には、細胞溶解(溶胞)、ろ過、抽出などが含まれる | 一般的な後処理工程に応じて、「発酵物」「発酵物ろ液」「発酵溶胞産物」「発酵溶胞産物ろ液」などを原料名の接尾語として使用できる。さらに抽出・分離して抽出物を得た場合は、「抽出物」を接尾語として追加する |
化学組成 | 発酵由来新原料の主要な化学組成を十分に研究し、必要に応じて特定の化学物質または化学物質群について定性・定量分析を行うとともに、化学構造の解析・同定を実施する。これを、新原料のケース分類および適切な命名の重要な根拠とする | 特定の化合物を選択的に得ることを目的とし、最終含量が一定割合(通常は乾燥重量基準で90%以上)に達する場合 | 化学原料の命名方法を参照するか、広く認知され業界慣行に合致する名称を採用できる。この場合、使用した菌種や基質などの情報を原料名に反映する必要はない |
特殊な ケース | 最終産物に一般名または慣用名がある場合 | ― | 一般名または慣用名を用いて命名できる。例:ヨーグルト、ジェランガム、キサンタンガム、ワインなど |
表2 意見募集稿の附属表に示された主な命名パターン
確認項目 | ケース1 | ケース2 | ケース3 | ケース4 | ケース5 | ケース6 | ケース7 |
特定菌株の使用 | 自然発酵 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
非典型的な 発酵基質の使用 | 〇 |
| 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
後処理 プロセス | 溶菌処理 |
|
|
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| 〇 | 〇 |
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ろ過処理 |
|
|
| 〇 |
| 〇 |
|
追加の抽出・分離 |
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|
|
| 〇 |
最終製品 の形態 | 液体 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
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固体 |
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| 〇 |
命名例 | XX基質発酵物 | XX菌株発酵物 | XX菌株・ XX基質発酵物 | XX菌株・XX基質発酵物ろ液 | XX菌株・XX基質発酵溶菌産物 | XX菌株・XX基質発酵溶菌産物ろ液 | XX菌株・XX基質発酵物抽出物 |
バイオテクノロジー由来原料には、発酵工程によって得られる原料だけでなく、細胞工学、タンパク質工学、酵素工学、遺伝子工学を利用して製造される原料も含まれます。
国際的な命名ルールである「INCI Nomenclature Conventions」および前述の発酵由来原料の命名原則を踏まえると、各原料の命名方法は次のように整理できます。
表3 発酵由来以外のバイオテクノロジー原料の命名
原料の由来 | 主な命名ルールおよび例 |
細胞工学 | 菌株の中国語名+必要に応じて特徴的な基質名称+最終製品の形態、という構成を基本とします。 |
遺伝子工学・ タンパク質工学 | ・遺伝子改変またはデノボ設計などの手法が用いられ、組換えDNAによって遺伝的に改変された生物に由来する原料の場合は、接頭辞「r」を付して表示します。 ・遺伝子工学によって特定の高度に精製された化学成分を製造し、その最終含有量が一定割合に達する場合は、「ヒアルロン酸ナトリウム」など、化学原料に準じて命名できます。 ・タンパク質は、通常、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミンなどの一般名称を使用します。 ・完全に加水分解されたタンパク質原料の一部には、従来、由来に基づいて「ケラチンアミノ酸類」「シルクアミノ酸類」などと命名されたものがあります。これらは既存名称として維持されますが、加水分解の程度に応じて命名する従来のルールは現在使用されていません。 ・現在は加水分解の程度を区別せず、由来に基づいて「加水分解コラーゲン」「加水分解乳タンパク」などと命名します。 |
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酵素工学 | 酵素工学は、溶菌などの後処理工程に使用されることが多いため、前述の発酵由来原料におけるケース5またはケース6の命名ルールを参考にできます。 |
ペプチド原料に関する補足
一般名称を有する天然タンパク質およびその誘導体に由来するペプチド原料は、発酵由来原料の特殊ケースと同様に、一般名称または慣用名称を使用できます。
一方、化学合成または組換え技術で製造されたペプチド原料は、アミノ酸配列および天然タンパク質との相同性を根拠に命名します。
技術要件:主要な品質指標と管理ポイント
「化粧品用バイオテクノロジー由来原料の技術要求通則」は、原料規格の制定枠組みを規定しており、主な要求項目は以下の通りです。
表4 主要な技術要件
技術項目 | 通則で定める検査・技術要求 |
原料識別情報 | 中国語名・英語名・INCI名・CAS番号・由来生物種のラテン学名などを明確にする |
生物情報 | バイオテクノロジー由来原料の種類ごとに、以下の情報が求められる |
発酵工学 | ・菌株の安全性レベル(「中華人民共和国薬典」第三部に準拠)・遺伝子工学により改変した菌株を使用する場合:遺伝子供与生物の分類および遺伝子改変の目的を明確にする |
細胞工学 | ・細胞培養履歴 |
タンパク質工学 | ・宿主が微生物系の場合:菌株の安全性レベル・宿主が植物系の場合:植物種に天然毒素またはアレルゲンが含まれるか、アレルギー反応を引き起こしやすいか、有害な二次代謝産物を含むかを確認する |
酵素工学 | ・安全性評価を受けていない極限環境微生物由来酵素を使用しているか確認する |
遺伝子工学 | ・不要なマーカー遺伝子(耐性遺伝子など)が除去されているか、誘導発現系が安全であるかを確認する |
原料組成 | ・化学構造が明確な場合:分子式、化学構造式および相対分子質量 ・化学構造が未確定の場合:成分組成または主要成分の種類 |
製造工程 | ・主要工程およびパラメータを簡潔に記載する |
感覚指標 | ・色調、性状、においなど |
物理化学的指標 | ・融点、沸点、相対密度、pH、屈折率、分配係数(Log Pow)など |
定性・定量 | ・主要化学成分または指標成分を明確にする。・現時点で特定できない原料については、原料の特性(有効性指標など)に応じて確認方法および判定パラメータを設定する |
安全性管理 | ・微生物/重金属:「化粧品安全技術規範」に適合すること・その他のリスク:原料の由来および製造工程を踏まえて特定する。 例: 発酵工学では、生体アミン、エンドトキシンなどに留意する。 細胞工学では、外来因子(ウイルスなど)、アレルゲンなどに留意する。 タンパク質工学では、潜在的に毒性を有する夾雑タンパク質(意図しない発現タンパク質など)、不純物ペプチドなどに留意する。 酵素工学では、潜在的に毒性を有する酵素反応副生成物(酵素分解過程で生じる有害な低分子化合物など)、酵素由来微生物の有毒代謝産物(マイコトキシンなど)に留意する。 遺伝子工学では、挿入変異、遺伝子の水平伝播などに留意する。 |
「化粧品用バイオテクノロジー由来原料の技術要求通則」の公布により、バイオテクノロジー系原料の命名および技術要求に関し、統一化・規格化された管理枠組みが整備されることとなります。原料メーカー各社に対し、REACH24H は原料メーカー各社に対し、新原料届出の実施前に命名ルールおよび各要件を照合し、原料名の適法性を確認するとともに、本通則に定められた技術資料を体系的に整理することを推奨いたします。これにより書類不備による複数回の修正手続きを防ぎ、届出業務の効率化を実現できます。
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