徹底解説 | 化粧品ペプチド原料の開発動向、申告状況および市場応用

徹底解説 | 化粧品ペプチド原料の開発動向、申告状況および市場応用

2026-01-16

近年、化粧品関連技術の継続的な発展や中国における消費市場の高度化に伴い、化粧品原料に対する需要は多様化しています。その中で、化粧品においてペプチド原料とタンパク質原料の応用は年々拡大しており、現在では製品開発および基礎研究の重要な注目対象となっています。これらの原料の活用は、消費者の選択肢を豊かにするとともに、化粧品産業における技術革新の促進にも寄与しています。

このような背景を踏まえ、REACH24Hは、こちらの記事においてペプチド原料に関する技術的な発展動向および最新の研究成果を整理させていただきます。ご参考になれば幸いです。

ペプチド原料とは?

ペプチド原料とは、複数のアミノ酸がアミド結合によって連結された化合物を指します。このような化合物は、遺伝子組換えによる発現、生物由来原料の抽出、化学合成など、さまざまな方法によって製造されます。

なお、米国パーソナルケア製品評議会(Personal Care Products Council:PCPC)が策定する「INCI命名規則(INCI Nomenclature, 202505 version)」に基づき、ペプチドは構成するアミノ酸の数に応じて、以下のように分類・命名されています。

  • 2~10個のアミノ酸から構成されるペプチドは、構成アミノ酸数に基づき命名されます(例:「トリペプチド-1(Tripeptide-1)」)。

  • 11~100個のアミノ酸から構成されるペプチドは、「オリゴペプチド/Oligopeptide)」の形で命名されます(例:「オリゴペプチド-1」)。

  • 100個を超えるアミノ酸から構成されるペプチドは、「ポリペプチド/Polypeptide」の形で命名されます(例:「ポリペプチド-1」)。

ペプチド原料の発展動向

1.ペプチド原料の研究動向

  • 原料の機能

公開されている文献や特許情報によると、化粧品に用いられる生理活性ペプチドは、一般に以下のような機能を有する可能性があるとされています。

具体的には、保湿、美白・シミ改善、抗シワ、肌の引き締め、鎮静・修復などが挙げられます。

  • 構成構造

一般的なペプチド原料(修飾や構造改変を行っていないもの)に加え、安定性や生理活性の向上を目的として、ペプチド原料には各種の化学修飾や構造改変が施される場合があります。

主な例としては、N 末端へのアセチル化/パルミトイル化/ナイアシン化/カフェオイル化(例:ACETYL HEXAPEPTIDE-8)、C 末端のアミド化(例:ACETYL DIPEPTIDE-31 AMIDE)が挙げられます。これらに加え、近年注目を集めている環状ペプチド原料(例:Cyclo Dipeptide-30)も含まれます。

  • 特許出願の状況

中国国家知識産権局(CNIPA)特許検索・サービスシステムに収載されているデータによると、2025年7月31日時点での機能別ペプチド原料の特許出願状況は以下のとおりです。

(「ペプチド」+各機能に関するキーワードを用いた検索結果件数に基づく)

図1:機能別ペプチド原料の特許出願数(CNIPA).png

図1:機能別ペプチド原料の特許出願数(CNIPA)

潜在的な抗シワ機能を有するペプチド原料を例に挙げると、国家知識産権局特許局が公開した文献「ペプチド特許技術の抗シワ化粧品への応用および研究動向」によれば、2024年12月31日時点で提出された特許出願件数は合計6,216件に上ります。

これらの出願について、INCOPAT特許データベースに基づいて特許ファミリー単位で集計した結果、3,308件が確認されています。その中でも、中国における特許出願件数は全体の約53%を占め、他国・地域を大きく上回っています(図2参照)。

図2:国・地域別の特許出願数ランキング(INCOPAT).png図2:国・地域別の特許出願数ランキング(INCOPAT)

これらの結果から、中国においては特許保護に対する認識が広く浸透していることがうかがえるとともに、国内の研究開発者がペプチドの美容分野での応用を重視している状況も読み取れます。こうした傾向は、中国市場における大きな需要規模とも相互に整合しています。

特許出願人ランキングの上位10社のうち、4社は中国の代表的なブランド企業です。

また、全体の上位5社は、THE PROCTER & GAMBLE COMPANY、L’OREAL、SEDERMA、LIPOTEC SA、ならびに深圳市維琪科技股份有限公司となっています。

このうち、深圳市維琪科技股份有限公司は、革新的なペプチド特許を主軸とし、現在では中国化粧品新原料の申請件数ランキングにおいても上位に位置しています(図3参照)。

図3:特許出願人ランキング(INCOPAT).png

図3:特許出願人ランキング(INCOPAT)

2.PCPCデータベースへの収載状況

INCI名称は、化粧品成分を識別するための国際的に認められた体系的名称であり、国際命名法委員会(International Nomenclature Committee:INC)により審査・付与されます。当該名称は、最終的に米国PCPCが発行する『国際化粧品成分辞典・ハンドブック(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook)』およびwINCIオンラインデータベースに掲載されます。

2025年7月31日時点で、wINCIデータベース上のペプチド原料の基本的な状況は以下のとおりです。

  • INCI名称の総数

現在、wINCIデータベースには、「Peptide」を含むINCI名称を基準として、3,353種類のペプチド原料が収載されており、全体の約8%を占めています。

  • 構造改変・修飾の状況

wINCIデータベースに収載されている環状ペプチド原料の数は39種類です。

N末端にアシル化が施されたペプチド原料は約900種類で、ペプチド原料全体の約27%を占めています。

その中で、パルミトイル化(206種類)、アセチル化(159種類)、メチオニル化(134種類)が比較的多く見られます。このほか、ミリストイル化(41種類)、カフェオイル化(27種類)、ナイアシン化(25種類)などの修飾タイプも確認されています。

C末端のアミド化が施されたペプチド原料は317種類で、全体の約10%を占めています。

また、二量体構造のペプチドは33種類、三量体構造のペプチドは2種類確認されています。

  • 同源性の状況

ヒト由来タンパク質と部分的に同源性を有するペプチド原料は、INCI名称に「sh-」または「rh-」を含むものとして1,091種類確認されており、これはペプチド原料全体の約3分の1に相当します。

このほか、比較的多く見られる由来としては、ムール貝由来ペプチド(34種類)、クモ由来ペプチド(30種類)などが挙げられます。

  • 製造プロセスの形態

ペプチド固相合成法を用いて製造されたペプチド原料は約300種類で、全体の約10%を占めています。一方、組換え技術を用いたペプチド原料は約1,400種類で、全体の約40%を占めています。

3.  中国でペプチド原料の応用状況

中国の「化粧品原料使用目録」には、現在70種類以上のペプチド原料が収載されています。

また、中国食品薬品検定研究院が公表した統計記事「化粧品におけるペプチド原料・タンパク質原料の分類研究およびスマート規制」によると、国家薬品監督管理局が公開している化粧品の登録・届出情報を基に、ペプチドまたはタンパク質に該当する可能性のある212種類の関連原料について使用頻度の集計が行われています(2020年6月時点で)。

その結果、これら原料の使用回数は合計77万回超に達しており、そのうち、特殊化粧品で約6,000回、一般化粧品で約76万回の使用が確認されています。

また、使用頻度上位30種類の原料における使用回数は合計約56万回であり、全関連原料の総使用回数の72.73%を占めています。このことから、ペプチド原料の化粧品への使用は、一定の原料に集中する傾向があることが示唆されます。

使用頻度上位5位のペプチド原料は、オリゴペプチド-1、アセチルヘキサペプチド-8、カルノシン、オリゴペプチド-3、パルミトイルペンタペプチド-4です。

作用機序から見ると、最も多く使用されている成分はシグナルペプチドであり、これに続いて神経伝達物質阻害ペプチドおよびキャリアペプチドが多く使用されています。シグナルペプチドの使用頻度が高い背景には、当該成分について有効性を裏付ける科学的エビデンスが比較的多く蓄積されていることが関係していると考えられます。

公開されている統計情報によると、近年、アセチルヘキサペプチド-8などは化粧品において最も広く使用されているシグナルペプチド成分の一つとなっています。2024年10月時点では、アセチルヘキサペプチド-8を含有する化粧品の届出件数は4万件を超えています。

4.化粧品新原料の届出状況

既に届出された新原料の状況を見ると、2025年7月31日時点において、ペプチド系新原料の届出件数は37件となっており、これは現在の新原料届出総数の約12%を占めています。このうち、14種類の原料が安全監視期間に移行しています(原料名称に「ペプチド」を含むものを対象として集計)。

ペプチド新原料の届出件数.png

また、ペプチド新原料の届出件数は年々増加傾向にあり、特に2025年上半期においては、ペプチド原料の届出件数が急増しています(図4参照)。

図4:ペプチド系新原料の届出状況.png

図4:ペプチド系新原料の届出状況

中国香料香精化粧品工業協会が PCHi 2025 において公表した統計データによると、既に届出されたペプチド新原料の中で使用頻度が最も高いのは芋螺ペプチドであり、412品目の化粧品に使用されています。これに次いで、オリゴペプチド-215が160品目の化粧品に使用されています。

このように、ペプチド原料は、分子構造の設計自由度や機能・効能の多様性に加え、特許および届出件数の継続的な増加を背景として、化粧品産業におけるイノベーションの中核を担う原料の一つとなっています。

今後、技術の進展および規制環境の最適化が進む中で、ペプチド原料は、機能性スキンケア、差別化された製品開発、さらには国際競争力の向上といった分野において、より大きな価値を発揮していくことが期待されます。



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