背景概要
近年、持続可能な開発の世界的な推進に伴い、BASF(バスフ)、ロレアル、レノボ、アップルなどの有名企業は、マーケットの需要に応えて社会的責任を果たすため、サプライチェーン管理の強化を進めています。
このような背景のもと、ここ2年間、サプライヤーは下流顧客からのカーボンフットプリントやライフサイクルアセスメント(LCA)の要求に直面するようになります。
最近では、持続可能性管理に関する基準が厳格化されたことにより、サプライヤーは環境製品宣言(EPD)という新たな要件にも対応する必要があります。
EPDとは
EPD(Environmental Product Declaration)は、ISO 14025規格に準拠したタイプIII環境宣言であり、製品やサービスがそのライフサイクル全体を通じて環境に与える影響を伝えることを目的とした、検証・登録済みの文書です。
ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づいて、EPDは原材料の取得から、生産、製造、輸送、使用、最終的な廃棄処理に至るまでの各段階における、客観的で比較可能な第三者検証済みの環境情報データを提供します。
EPDを通じて、企業は自社製品の環境パフォーマンスを透明に示すことができ、消費者、パートナー、その他のステークホルダーが製品の持続可能性をよりよく理解・評価できるようになります。
なぜEPDが必要なのか
規制や政策要件への対応
一部の国や地域では、製品が市場に進出する前に環境評価を実施し、EPDを発行することが法的に求められる場合があります。例えば、EUの「建築製品規則(CPR)」では、建築材料が建築環境基準を満たすためにEPDの提出が求められます。
また、一部の政府機関や公共機関は持続可能な調達を実現するために、調達時にサプライヤーに対してEPDの提供を求めます。たとえば、EUのグリーン公共調達制策では、環境認証を取得した製品の優先的な調達をすすめます。EPDは、その評価基準の一つです。
サプライチェーンの持続可能な要件
一部の大手企業や多国籍企業は、サプライヤーに対してEPDの提出を求めることで、サプライチェーン全体の環境パフォーマンスを確保します。EPDにより、企業はサプライチェーンの透明性を高め、顧客の要望に応えるとともに、環境パフォーマンスに厳しい基準を持つパートナーとの長期的な関係構築が可能となります。
市場競争力の強化
現在の消費者は製品の環境影響に対して高い関心を持っています。EPDを取得することで、企業は環境保護に対する取り組みをアピールでき、環境意識の高い消費者を引きつけることができます。EPDは、企業が環境管理や持続可能性の分野でリーダーシップを取っている証であり、ブランドイメージや市場での評価向上にもつながります。
社内管理および意思決定の支援
詳細なLCA分析を通じて、企業は環境に影響の大きいプロセスを特定し、改善策を講じることが可能になります。これらのデータは、製品設計、生産プロセスの改善、材料選択など、企業の戦略的意思決定を支援し、企業のより持続可能な発展を促進します。
EPDの申請方法
EPDの申請は、一般的には以下のとおりです:
1. 準備段階
EPDの申請対象となる製品と、要求元が指定するEPD体系を確定します
関連する製品カテゴリールール(PCR)を調査・遵守します
2. LCAの実施
製品のライフサイクル全体のデータを収集します
国際規格(ISO 14040/14044)に基づきライフサイクルアセスメント(LCA)を行います
3. EPD報告書の作成
製品概要、LCA方法、環境影響データ等を含むEPD報告書を作成します
内部審査を実施し、報告書の正確性と完全性を確認します
4. 第三者検証
資格を有する第三者検証機関を選定し、EPD報告書を提出します
第三者機関は審査・検証を行い、関連する基準への適合を確保します
5. 登録・公開
EPD報告書を関連するEPDプログラムとデータベースに登録します
EPD報告書を自社ウェブサイトやマーケティングチャネルで公開します
※EPDシステム:現在、国内外には複数のEPDシステムが存在しており、例としてInternational EPD® System、EPD推進センター、ノルウェーとイタリアでのEPD評価などが挙げられます。これらのEPDシステムは、それぞれ異なる組織や国によって運営されており、一部には相互認証の仕組みがあるものの、各国政府が自国の環境政策や法令に基づいて特定のEPDシステムを支持・認定する可能性があります。
当社ののサービス
製品カテゴリールール(PCR)の開発
EPD文書の作成
第三者機関との連携によるEPD検証
EPD登録・発行の支援
ライフサイクルアセスメント(LCA)/カーボンフットプリント(PCF)
EPDとLCA、カーボンフットプリントとの関係
前述のEPDの概念からわかるように、ライフサイクルアセスメント(LCA)は環境製品宣言(EPD)の前提条件となります。企業がすでにLCA評価を完了している場合、EPDの基準に合わせて評価内容を細かく調整するだけで済み、再評価の必要はありません。