米国では、食品接触用リサイクルプラスチックに関する規制を、米国食品医薬品局(FDA)が「異議なし書簡(NOL)」発行制度を通じて運用しています。このNOLは、リサイクルプラスチックの構成、工程および用途について、安全性・適合性が担保されている場合に発行され、企業の製品適合証明として利用されています。日本国内とは異なる制度運用のため、本資料は米国での制度内容に基づき解説しています。
法規背景および規制当局
米国における「食品接触用リサイクルプラスチック」の規制は、米国食品医薬品局(FDA)が所管しています。通常の食品接触用プラスチックと同様に、リサイクルプラスチックも「連邦食品・医薬品・化粧品法(21 CFR:連邦規則集第21編)」の関連要件を満たす必要があります。
加えて、FDAは『食品包装用リサイクルプラスチックガイドライン』を公表しており、本ガイドラインは法的拘束力を有しないものの、公式ガイダンスとして食品接触用リサイクルプラスチックの利用に関する具体的な基準を示しています。
FDA異議なし書簡(NOL)とは
FDA異議なし書簡(No Objection Letter、NOL)とは、米国食品医薬品局(FDA)が発行する正式な文書であり、特定の製品またはその成分の安全性および適合性について、FDAが異議を唱えないことを示します。これにより、NOLは市場普及や製品販売時において、権威ある適合証明書として活用されます。
企業が特定製品や成分に関する資料をFDAへ提出すると、厳格な審査手続きが開始されます。審査では、関連規格への適合性および消費者の健康への影響を包括的に評価し、すべての要件を満たすと認められた場合に、FDAはNOL(異議なし書簡)を発行し、安全性および適合性を公式に確認します。
NOLの参考例
NOL申請の対象者
申請主体
NOLの申請主体は、リサイクルプラスチック設備サプライヤーおよびリサイクルプラスチック製造業者です。
認可利用
FDAは、設備サプライヤーが自社設備に関するNOLを素材製造業者に認可利用させることを認めています。この場合、製造業者が用いるリサイクルプラスチック材料・工程条件・設備が、サプライヤーがNOL申請時に使用した条件と全く同一である場合に限り、そのNOLをそのまま活用でき、新たな申請は不要です。
NOL申請が可能なリサイクルプラスチックの範囲
『食品包装用リサイクルプラスチックガイドライン』では、リサイクルプラスチックは三つの段階(一時再生・二次再生・三次再生)に区分され、いずれもNOL申請が可能です。
一次再生
食品接触用プラスチックの製造時に生じる端材(インダストリアル・ポストリサイクルプラスチック)。申請時は、工場全体がGMP(適正製造規範)に適合していること、および材料回収後の性状に著変がないことを、試験結果等で証明する必要があります。
二次再生
リサイクルプラスチック原料を破砕・洗浄・溶融・押出といった機械的処理(物理的リサイクル)で、主な汚染物質を除去します。再生後の成分・構造は変化せず「物理的再生」ともいいます。
三次再生
リサイクル原料を化学的分解し、モノマーやオリゴマーへと還元。これらを精製・蒸留・純化して汚染物質を大部分除去した上で、純化モノマーを再重合して新規プラスチックペレットを生成する方法です。
リサイクル工程の安全性評価に関するFDA要求
各企業のリサイクル工程が異なるため、製品が食品接触グレードに適合し、また除染工程で再生材料中の汚染物質が十分除去されているかどうかをFDAが評価します。具体的には、汚染物質が食品中へ移行する推定一日摂取量が1.5マイクログラム/人・日(μg/人・日)を超えないことが条件です。
この要件を確認するため、企業はリサイクル工程の除染性能を評価する「代替汚染物質試験(別名:チャレンジ試験)」を実施する必要があります。
プラスチック代替汚染物質試験(チャレンジ試験)
代替汚染物質試験(以下、チャレンジ試験)は、リサイクル工程の除染能力を評価するためのもので、次の手順で進行します。
汚染シミュレーション:ポリマーフレークを特定処方の代替汚染物質混合溶液(模擬汚染液)に浸漬し、リサイクル原料の汚染状況を再現する。
汚染物質検出:汚染後のプラスチック初期汚染物質濃度を測定する。
工程再現:汚染されたペレットを実生産ラインやラボでリサイクル工程として再現(模擬再現)し、除染処理を行う。
最終検出:最終製品中の残留汚染物質濃度を測定し、洗浄有効性を確認する。
NOL申請手続きの流れ
リサイクルプラスチックが食品包装に利用される用途に応じ、提出資料や申請要件が異なります。主に「特定用途」と「一般用途(ジェネラルユース)」の2種があります。
特定用途
リサイクル食品接触用プラスチックが新鮮な野菜・果物・殻付き卵等に使用される場合、または直接食品に触れず、加熱工程を伴わない用途(FDAの食品接触タイプ分類に準拠)。この場合、チャレンジ試験なしで申請が可能です。
一般用途(ジェネラルユース)
リサイクル後の食品接触用プラスチックが多様な食品に用いられ、かつ高温殺菌等の条件が含まれる場合。この場合、チャレンジ試験の実施が必要です。
1.情報収集
・リサイクルプラスチック区分(一時再生・二次再生・三次再生)の特定
・リサイクルプラスチックの出所、リサイクル工程、想定用途の明確化
2.データギャップ分析
・既存資料がFDAの要件を満たしているか評価
・追加試験(チャレンジ試験等)の必要性検討
・リサイクル工程がFDAガイドラインに適合するか確認
3.試験手配
・認定第三者試験機関によるチャレンジ試験実施
・試験過程の監督およびデータの完全性確保
4.申請ファイル作成
・FDA申請書類の作成
5.ファイル提出
・FDAへ正式に申請ファイルを提出
・提出内容がFDAガイドライン等の要件を満たすことを確認
6.技術審査
・FDAによる科学データ、工程関連資料の内部審査
・必要に応じて追加データや詳細説明の求め
7.追加資料提出
・FDAによる指摘内容に基づき追加資料を提出
・必要に応じて技術ミーティングを実施し、工程・試験方法について説明
8.FDAによるNOL(異議なし書簡)発行
・FDAが全ての要件を満たすと認めた場合、NOLを発行
・企業はNOLを製品の適合証明書として顧客または規制当局に提出可能
企業がFDA NOLを申請するメリット
法規要件の遵守と業界での適合証明
FDA NOLを取得することで、製品がFDAリサイクルプラスチックガイドラインの要件を満たしている証拠となり、業界内での高い信頼と評価を得ることが可能です。これにより市場競争での優位性が高まり、顧客からの信頼獲得にも寄与します。
顧客信頼向上と市場競争力の強化
FDA NOLの取得は、製品がFDAの厳格な科学的審査を経て適合性が認められたことを意味し、食品企業や包装材料企業など取引先からの信頼を大幅に高めるとともに、さらなるビジネス機会の創出へつながります。
REACH24Hが提供するサービス
REACH24Hは、米国リサイクルプラスチックFDA NOL申請サービスを一括してご提供しています。専門チームが申請プロセス全体をサポートし、円滑な申請進行を確保します。
・米国リサイクルプラスチックFDA NOL申請
・米国FDAとの公式連絡
・チャレンジ試験監理
・一般用途・特定用途ファイル申請
当社の強み
REACH24Hは、リサイクルプラスチックFDA NOL申請支援の豊富な実績を有し、数多くの企業に対しNOL取得を支援してきました。専門技術チームがFDAと長年にわたり緊密に連携し、申請ファイル要件にも精通、高い成功率を維持しています。
さらに、提携試験機関と長期的な協業関係を構築し、企業ごとに最適な適合ソリューションの設計が可能です。製品設計から工程規範まで一貫した専門知識を有し、お客様の申請完了・市場参入を力強くサポートいたします。