EUの輸出業者にとってのEPR(Extended Producer Responsibility)の重要性
2025-05-27

近年、使用済み電気電子機器、廃棄電池、廃棄包装材などの固形廃棄物がもたらす社会的および環境的な問題が一層深刻化しています。これに伴う影響を軽減するため、一部の先進国では、段階的に新しい制度――EPR制度(拡大生産者責任制度)――の構築および導入が進んでいます。

EPR(Extended Producer Responsibility/拡大生産者責任)について、欧州連合(EU)は2009/98/EC指令にて、「生産者が製品使用後の回収、再生、処理責任を負う」ものと定義しています。この政策の目標は、生産者が製品設計や工芸技術の改善を進めることで、製品ライフサイクル全体における汚染物質の発生を抑制することにあります。広義において、EPRは生産者に課せられる責任であり、実際の運用においては、EU各加盟国が自国の国情に応じた新たな政策手段として適用しています。

なぜ企業はEPR登録が必要なのか

名称からも明らかなように、EPRの適用対象は生産者ですが、ここでの「生産者」には包装製品の製造だけでなく、包装製品を輸入または国内市場で販売する企業も該当します。EU域内では、フランスは2022年1月1日から、ドイツは2022年7月1日から、該当国市場に投入される製品についてEPRのコンプライアンス認証を取得することを義務付けており、これを取得しない限り販売はできません。関連規定に違反した企業には、該当製品の販売禁止および高額な罰金が科せられます。

どの分野でEPR登録が必要か(ドイツ・フランスを例に)

現時点において、ドイツのEPRは包装、電池、WEEE(廃電気電子機器)の3分野が対象となっています。フランスでは、包装、WEEE(廃電気電子機器)、電池リサイクル、家具、タイヤ、紙、繊維製品、園芸用具、スポーツ・レジャー製品、おもちゃの10分野が対象です。うち園芸用具、スポーツ・レジャー製品及びおもちゃは、2022年10月に新規則により追加されており、今後も規制範囲のさらなる拡大が予想されます。

複数の分野に該当する製品について、企業は複数のEPR登録が必要です。同一カテゴリ内の異なる規格の製品については、製品カテゴリ単位での登録が認められます。

企業がEPR登録を申請するには

EPR登録を申請するには、企業は関係機関に申請書を提出し、企業情報および対象製品情報を記載する必要があります。その後、年間予想販売量に基づく回収費用をPRO(生産者責任機関)に支払い、回収契約を締結した後にEPR番号が付与されます。

申告手続きにおいて企業が直面し得る主な課題は以下のとおりです。

・EU各加盟国でEPRの対象分野が異なる

・加盟国ごとにEPRの実施細則が異なる

・同一国内でも、PRO(生産者責任機関)ごとに価格基準や申告周期が異なる

・各国のEPR規制が頻繁に変更される

・その他

こうした要因により、企業はEPR申告の過程において、EU各加盟国のEPRの実施状況および各国やPRO(生産者責任機関)ごとの実施細則を常に注視し、把握する必要があります。

企業がEPR登録完了後に履行すべき義務

EPR登録完了後、企業が履行すべき主な義務は以下の三つです。

経済的責任:

生産者は、製品材料のカテゴリや販売量等に応じて、指定の生産者責任機関(Producer Responsibility Organization(生産者責任機関, PRO))に費用を支払う場合があります。国によっては、政府機関への登録および所定の支払いが必要となります。

❷ 情報共有義務:

生産者は、消費者に対し、販売した使用済み製品の回収方法を共有する、または製品包装や請求書に回収方法等に関する情報を記載する必要があります。さらに、生産者は、製品の販売量等に関する報告書を政府機関に提出する義務があります。また、大規模ECプラットフォームの場合は、企業のコンプライアンス証明の共有が求められることもあります。

❸ 回収責任:

一部の国では、販売した製品について消費者に対し旧品の回収サービスを提供する義務が発生する場合があります。

✅ Reach24hは、欧州市場における多年来の経験を有し、欧州消費財市場の法規動向を常時注視・追跡しています。欧州市場への進出や製品の市場投入前にEPR申告が必要な場合は、是非ご相談ください。適切な支援とサポートを提供いたします。


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