米国リサイクルプラスチック最新政策まとめ:リサイクル含有率と罰金の連動、プラスチック企業は十分な留意が必要無題ドキュメント
前回はEUリサイクルプラスチック減税政策について解説しました。実際、米国でもリサイクルプラスチックの使用や普及を促進するため、「正式な法律として署名・成立していない政策」や「成立済の政策・法案」など、さまざまな取り組みが提案・導入されています。
本稿では、REACH24Hが連邦レベルおよび州レベルの両面から、米国のリサイクルプラスチック関連政策・法案について解説します。
米国連邦レベルのリサイクルプラスチック政策
米国連邦レベルにおいては現時点で、リサイクルプラスチックを対象とした減税を定める強制的な法律も、PCR(消費後リサイクルプラスチック)使用比率目標やEPR(生産者拡大責任制度:Extended Producer Responsibility)の全国統一制度も存在しません。ただし、近年米国議会では複数のリサイクル関連法案が審議されており、いずれも現在は正式な法律として成立していません。
1. REDUCE法案(未再生汚染物質削減努力奨励法案:Rewarding Efforts to Decrease Unrecycled Contaminants in Ecosystems Act)
2023年9月、複数の上院議員および下院議員によってREDUCE法案が提出され、現在も審査段階にあります。正式な法律となるまでには、なお多くの手続きが必要です。法案の主要内容は下記の通りです。
課税について
使い捨てバージンプラスチック樹脂の販売に対し、樹脂製造業者・製造業者・輸入業者に2024年は1ポンド(約0.45kg)あたり10セント、2025年は15セント、2026年までに12セントまで段階的に課税。対象は使い捨て製品用途のバージンプラスチック樹脂(プラスチック包装、飲料容器、食品包装、サービス製品等)。
豁免について
輸出されるバージンプラスチック樹脂および消費後リサイクルプラスチック(PCR)は課税免除。また、医療製品、医薬品容器・包装、パーソナルケア製品、危険物梱包、非使い捨て製品の製造に用いるバージンプラスチックも免除。さらに年10トン以下または総収入2,500万ドル未満のバージンプラスチック樹脂業者も免除。
基金の設立
プラスチック廃棄物削減基金を設立し、徴収した課税収入をプラスチック廃棄物の削減やリサイクル活動(リサイクルインフラ整備、海洋ごみ削減等)へ充当。
2. 2023年プラスチック汚染根絶法案(Break Free From Plastic Pollution Act of 2023)
2023年10月、下院に同法案が提出され、現在も委員会審査中です。食品接触用包装に関する主な規定は以下のとおりです。
生産者拡大責任制度(EPR: Extended Producer Responsibility)の明確化
特定製品(プラスチック食品容器包装、飲料ボトル等)の収集・管理・リサイクル責任を生産者に付与。リサイクル率目標の設定および罰金
2030年までに50%以上、2040年までに65%以上、2050年までに75%以上のリサイクル率目標を義務付け、未達成の場合は「1回の違反につき最大50,000ドルの罰金」を科す。
3. 2024年プラスチック循環経済加速・リサイクル革新法案(H.R.9676-Accelerating a Circular Economy for Plastics and Recycling Innovation Act of 2024)
2024年9月、与野党の議員が下院に本法案を提出。全米統一のリサイクル基準を設け、リサイクル率向上を目指します。主内容は以下のとおりです。
リサイクル含有率の最低使用比率
米国内で販売・流通するバージン樹脂及びリサイクル樹脂で製造された包装について、2030年までにリサイクル含有率30%以上の最低使用比率実現を義務付け、評価プロセスを設け進捗管理を明確化。
第三者認証とラベル表示、温室効果ガス排出調査
リサイクル含有率は第三者認証を取得し、ラベルにて明示。加えて、プラスチック材料の温室効果ガス排出についても調査実施し、政策立案者への情報提供を促進。
回収・リサイクル技術の新たな法的枠組みと罰金規定
新リサイクル技術のための法的枠組みを整備し、継続的なイノベーションと投資を支援。2030年時点でPCR目標未達成の場合、実数と目標値との差分に対し1ポンド(約0.45kg)あたり5セントの罰金を科す。
米国州レベルのリサイクルプラスチック政策
米国では州レベルでも同様の政策や目標が策定・実施されており、連邦よりも進展が速い州も見受けられます。主な方策は対象製品へのPCR最低比率設定とEPR導入です。以下、代表的な州政策を示します。
1. ニュージャージー州
2022年にSB 2515法案が成立し、2024年以降、硬質プラスチック容器・プラスチック飲料容器・ガラス容器・紙およびプラスチック製手提げ袋・プラスチックごみ袋など、多様な包装材にリサイクル含有率最低要件を義務付け。
2024年より平均リサイクル含有率15%以上、以降3年ごとに5%ずつ上昇、2045年には50%(ホットフィル工程を用いたボトルは30%)のPCR目標設定。
乳製品包装・医療用食品・特殊用途食品・乳児用調製粉乳包装にはPCR最低比率制限は適用除外。
その他食品包装・容器は5年の施行猶予(2027年より適用)。また、売上一定以下や所定申請手続きを行った企業は適用豁免可能。
違反時には1,000ドル以上25,000ドル以下の民事行政罰金を科すことができます。
2. カリフォルニア州
30年以上前に「カリフォルニアリサイクルバリュープログラム(CRV:California Redemption Value)」によるデポジットリサイクル制度が設けられ、回収・リサイクル体制が確立。
2020年に成立したAB 793法案により、2022年1月1日以降、飲料製造業者が同州で販売するCRV対象飲料用プラスチック容器には、消費後リサイクルプラスチック(PCR)を平均15%以上(2025年には25%、2030年には50%)含有させることが義務化。
2024年3月1日以降は、製造業者が毎年「カリフォルニア州資源リサイクル局(CalRecycle)」へ再生プラスチックの販売数量を報告。目標未達成時は未達成PCR量1ポンド(約0.45kg)あたり20セントの罰金を科す。
さらに2022年6月には、「SB 54法案(プラスチック汚染防止・包装生産者責任法案)」の成立により、EPRプログラム(生産者拡大責任制度)の創設が開始。使い捨て包装生産者は「生産者責任団体(PRO:Producer Responsibility Organization)」設立義務を負い、法令遵守の監督、2032年までに全包装のリサイクル可能・堆肥化可能化、プラスチック包装生産量25%削減、65%以上のリサイクル率達成を義務付け。
2028年までに包装材料の30%リサイクル可、2030年までに40%リサイクル可と段階的義務化。不達成の地方自治体には行政罰金を科します。
3. メイン州
LD 1467法案により、2026年1月1日から2030年12月31日までメイン州で販売・流通するプラスチック飲料容器の平均PCR含有率を25%以上と義務付け。2031年1月1日以降は30%に引き上げ。
目標未達の場合、製造業者または流通業者は一定額の支払いにより代替措置可能。
再生プラスチック供給の中断・不足等、市場の異常事態発生時は州当局に1年の豁免申請が認められ、申請時には処理手数料100ドルの納付及び異常事態の証明書類が必要。