背景概要
マイクロプラスチックとは、一般的に直径5mm未満で目では識別しにくいプラスチック粒子を指します。これらの微細粒子は一度環境中に放出されると除去が非常に困難であり、大気、地表水、海流などを通じて南極地域を含む世界各地に拡散し、長期的な汚染を引き起こします。
深刻化するマイクロプラスチック汚染に対応するため、欧州委員会は2023年9月にEU REACH規則附属書XVII の第 78項目、すなわち「マイクロプラスチック汚染防止規則案」を通過し、EU市場内での大部分の合成ポリマー微粒子(SPMs)の意図的使用に対して厳格な制限を行いました。*
マイクロプラスチック規制
EU REACH 規則の附属書 XVII の第 78項目、すなわち「マイクロプラスチック汚染防止規則案」は、別名「EU SPMs規制」とも呼ばれ、合成ポリマー微粒子(SPMs)を以下のように明確に定義しています:「直径が5mm未満の炭素系合成ポリマー粒子、または長さが15mm以下かつ長径比が3を超える繊維」
なお、注意すべきなのは、水に溶解する(≥2g/L)または生分解性のポリマーはこの定義には該当しませんが、法令で求められる標準試験によって評価を受ける必要があります。
EU SPMs規制は上記の合成ポリマー微粒子の意図的使用を禁止していますが、香料や化粧品など低リスクと見なされる業界に対しては、代替材料の探索期間として4年から10年の猶予期間を設けています。
また、EU SPMs規制は産業用SPMs、体外診断用機器、医療機器などの特定用途に対しても免除条項が設けられており、これらの免除条項の下では、関連企業は規定期間内において引き続き合成ポリマー微粒子を使用することが可能です。
企業のコンプライアンス義務
EU SPMs規制では、許可された用途におけるポリマー微粒子の包装表示、情報伝達および年次報告について詳細な要件が定められています。また、用途に応じて*、各企業には異なる情報伝達および年次報告という義務があります。
(*第4項(a):工業用途の合成ポリマー微粒子、第4項(b):医薬品および動物用医薬品、第4項(d):食品添加物、第4項(e):体外診断用機器、第5項:低放出リスクのSPMs製品、第6項(c):化粧品)
◆ 情報伝達
製造業者は、下流ユーザーに規則で定められた必要な情報を提供する義務があります。具体的なスケジュールは以下のとおりです:
2025年10月17日より、第4項(a)(工業用途の合成ポリマー微粒子)に該当する供給者は以下の情報を提供する必要があります:
産業下流ユーザーに対して、SPMsの使用および廃棄に関する説明;
コンプライアンス宣言の表示:「提供された合成ポリマー微粒子は、欧州議会および理事会規則(EC)No 1907/2006附属書XVII第78項目の条件に適合しています」;
物質または混合物中に含まれる合成ポリマー微粒子の数量または濃度情報(該当する場合);
製造業者、産業下流ユーザーおよびその他の供給者が第11項および第12項の義務を履行するために、物質または混合物中に含まれるポリマーの特性に関する一般情報。
2025年10月17日より、第4項(d)および第5項(食品添加物および低放出リスクのSPMs製品)に該当する供給者は、専門ユーザーおよび一般市民に対しSPMsの使用および廃棄に関する説明を提供する必要があります。
2026年10月17日より、第4項(e)(体外診断用機器)に該当するSPMsを含む製品を販売する供給者は、専門ユーザーおよび一般市民に対しSPMsの使用および廃棄に関する説明を提供する必要があります。
2031年より、第6項(c)(化粧品)に該当するSPMsを含む製品を販売する供給者は、「本製品にはマイクロプラスチックが含まれています」という表示を行う必要があります。本要件は2031年より適用されますが、それ以前に市場に進出する製品については2031年12月17日まで表示を延期することができます。
※すべての情報は、明確に視認可能でできて読みやすく、消去不可能な形式で表示しなければなりません。テキストまたはピクトグラムで製品ラベル、包装または安全データシート(SDS)上に表示するか、デジタルツールを用いて電子形式で提供することも可能です。
◆ 年次報告
毎年5月31日までに、企業は欧州化学機関(ECHA)へ前年度のSPMs排出量および関連情報を報告する義務があります。具体的な要件は以下のとおりです:
2026年より、産業施設で粒状・フレーク状または粉末状のSPMsをプラスチック原料として使用する製造業者および産業下流ユーザーは、前年度のSPMs年次報告を提出する必要があります;
2027年より、その他のSPMs製造業者および産業下流ユーザー、第4項(b)、(d)、(e)および第5項に該当するSPMs含有製品の供給者も、前年度のSPMs年次報告を提出する必要があります。
当社のサービス
REACH24Hは豊富な経験と専門チームにより、EUマイクロプラスチック規制への対応を支援するために、包括的なコンプライアンスサービスを提供しております:
SPMsコンプライアンス判断:当社はEU SPMs規則を深く分析し、企業が製品の免除条件への該当可否を正確に判断できるよう支援し、規則に準拠した市場進出を確保いたします。
SPMs試験および監査:豊富なラボ資源と試験経験を活かし、規制要件に準拠したSPMsの水溶性および分解性試験を企業に提供いたします。
SPMs製品ラベルおよびSDS作成:EU CLP規則およびSPMs規則に基づき、適切な製品ラベルおよび化学品安全データシート(SDS)の作成、情報伝達義務の履行をサポートいたします。
SPMs年間報告サービス:企業がECHAの年次報告要件に適合し、適法な市場投入を実現し、毎年のSPMs年間報告を円滑に完了できるよう支援いたします。