著者:REACH24H 農用化学品コンプライアンスチーム
更新日:2026年9月
対象市場の規制要件、物質の構造、不純物の状況、利用可能な既存データなどを踏まえ、プロジェクトごとに適切な予測モデルと評価戦略を策定し、農薬登録申請、技術的根拠の作成、研究開発における意思決定を支援します。
主な適用場面
農薬原体の同等性評価|関連不純物のリスク評価|新規農薬の研究開発など
主な技術手法
QSAR|Read-Across|WoE|TTC|Molecular Docking など
対応市場・機関
EU|ブラジル|オーストラリア|メキシコ|アルゼンチン|ロシア|FAO/WHO など
農薬QSAR予測・毒性評価が必要となるケース
QSARは単一の毒性エンドポイントの予測のみを目的とした手法ではありません。グローバルな農薬登録や研究開発では、農薬原体の供給元の変更、不純物組成の変化、対象市場における規制要件、データギャップなど、さまざまな理由からQSARや追加の毒理学的評価が必要になる場合があります。
農薬原体の同等性評価
新たな供給元の農薬原体を参照原体と比較した結果、新規不純物が検出された、または既存不純物の含有量が上昇した場合、当該不純物による潜在的な毒性影響について追加評価が必要となることがあります。当該評価結果は、新たな供給元の農薬原体と参照原体の同等性を判定するための科学的根拠となります。
農薬不純物の毒理学的評価
農薬原体に含まれる不純物、代謝物、その他の関連化合物に対し、対象市場の規制要件や各プロジェクトの状況に応じ、下記に挙げるエンドポイントの予測・評価を実施可能です。
遺伝毒性
発がん性
生殖毒性
急性毒性
感作性など
新規農薬の研究開発と初期スクリーニング
新規活性化合物の研究開発段階では、(Q)SARやその他の計算毒性学的手法を活用して潜在的な有害性を早期に把握することができます。
これにより候補化合物のスクリーニング、分子設計の最適化、後続の試験戦略の策定といった、研究開発初期段階の意思決定を支援可能です。
農薬原体の同等性評価・不純物毒性評価におけるQSARの活用
農薬原体の同等性評価は、ジェネリック農薬原体が各国・地域の市場に参入する際に活用される効率的な評価ルートです。
現在、農薬原体の同等性評価では一般に2段階の評価プロセスが採用されており、新たな供給元の原体と参照原体を比較し、化学組成または毒性の同等性を評価します。
第1段階では化学的評価を行い、新たな供給元の原体に含まれる各種不純物の構造および含有量を定性・定量的に評価します。
第1段階の化学的評価で同等性を確認できない場合、すなわち参照原体と比べて新たな不純物が確認された場合、または既存不純物の含有量が増加した場合には、新たな供給元の原体と参照原体の毒性が同等であることを確認するため、第2段階の毒理学的評価が必要となります。

EU、オーストラリア、ブラジルなどでは、第2段階の毒理学的評価に(Q)SAR予測が活用されており、主な目的は、新たな供給元の原体に含まれる不純物が健康または生態に対して潜在的な毒性を有するかを評価することです。すべての不純物について(Q)SAR予測結果が良好であり、必要に応じてin vitro遺伝毒性試験や急性毒性試験などのデータ、または有害性分類・リスク評価を組み合わせることで、新たな供給元の原体と参照原体の毒性が同等であることを十分に示せる場合には、追加の毒理学試験資料が不要となることがあります。
このように、同等性評価に(Q)SAR予測を活用することで、毒理学的評価の網羅性を確保しながら、不要な毒理学試験の削減や登録期間の短縮につなげることができます。
QSARとは?基本原理と予測方法
QSAR(Quantitative Structure-Activity Relationship、定量的構造活性相関)は、化学物質の分子構造と特定の性質・作用との関係に基づいて、その性質や影響を予測する非試験手法です。規制・技術文書では、SARとQSARを総称して「(Q)SAR」と表記することがあります。(Q)SARの基本的な考え方は、類似した構造を持つ分子は類似した性質を示すというものです。分子構造と作用の定量的・定性的な関係をモデル化することで、対象物質の分子構造から特定のエンドポイントを予測でき、時間や費用を要する従来の試験への依存を減らせる点が大きな特徴です。

一般的に、(Q)SARモデルは以下の5つのステップで構築されます。

主要国・地域における農薬QSARの規制要件
以下は各市場における一般的な規制・審査傾向を整理したものです。実際の申請では、対象国・地域の最新要件、申請目的および案件条件に応じた確認が必要です。
EU
EUでは、加盟国によって(Q)SAR報告書に求められる内容が異なりますが、使用するモデルは主にRule-basedモデルとStatistical-basedモデルに分類されます。評価報告書では、毒理学的観点から(Q)SAR予測結果を解釈・説明し、不純物について適切な有害性分類またはリスク評価を行う必要があります。急性毒性試験やAmes試験など、一部の原体試験データを補足資料として参照し、不純物が関連不純物に該当するかを判断することもできます。特に遺伝毒性や内分泌かく乱作用などに留意する必要があります。
ブラジル
一般的には、少なくとも3つの異なるQSARソフトウェア(Three expert systems)を使用する必要があり、(Q)SAR予測では催奇形性、発がん性、変異原性など必要なエンドポイントをカバーすることが求められます。必要に応じて、内分泌かく乱作用などの追加エンドポイントを評価する場合もあります。また、毒理学的観点から(Q)SAR予測結果を解釈・説明する必要があります。
オーストラリア
オーストラリアでは、Rule-basedモデルとStatistical-basedモデルの両方の予測結果を提出することが求められます。EUとは異なり、特に遺伝毒性と発がん性の評価が重視され、(Q)SAR予測結果について毒理学的観点から解釈・説明する必要があります。両モデルの予測結果が良好な場合、不純物の毒性を示すAmes試験などの毒理学試験資料が免除されることがあります。
ロシア
(Q)SARモデルを用いて必要な毒性エンドポイントを予測し、遺伝毒性、特に変異原性に関連するデータを重点的に評価する必要がありますが、モデルの種類について具体的な指定はありません。(Q)SAR予測結果が十分でない場合には、不純物を対象としたAmes試験の実施を求められる可能性があります。
メキシコ
メキシコでは、(Q)SAR予測として主に急性経口毒性(LD50)が求められます。催奇形性、発がん性、変異原性などのその他のエンドポイントは通常求められない、または一定の条件下では不要とされる場合がありますが、案件によって追加情報が必要となる可能性があります。
使用する予測モデルの数は、予測結果に応じて判断する必要があります。あるモデルで十分な結果が得られない場合には、問題を説明するために十分な(Q)SAR証拠が得られるまで、追加のモデルを用いて評価します。少なくとも2つのモデルによる予測結果の提出が推奨されますが、最終的には毒理学的原則に基づいて総合的に判断する必要があります。得られたLD50予測結果については、FAOの方法に基づいて計算し、参照原体との毒性同等性を評価します。
FAO/WHO
FAO/WHOの農薬同等性評価では、(Q)SARが評価手法の一つとして推奨されており、EUの同等性評価要件も参考にしながら、不純物の遺伝毒性やその他の毒性影響を重点的に評価します。また、Rule-basedモデルとStatistical-basedモデルの両方を用いた(Q)SAR予測も推奨されます。
米国、カナダ、アルゼンチンなどの農薬QSAR規制要件
(Q)SARは、毒理学的評価を補完する情報の一つとして活用されています。予測が必要なエンドポイントについては通常、対象化合物または不純物の構造上の特徴、ならびに入手可能な既存データをもとに判定します。
農薬QSAR予測・規制評価の主なポイント
Rule-basedモデルとStatistical-basedモデルの違い
ルールベースモデル(Rule-based models)は、専門家の知見に基づいて化学構造と作用の関係を評価するモデルで、主に警告部分構造(structural alert)の識別に用いられます。
統計ベースモデル(Statistical-based models)は、統計的・機械学習的手法により化学構造と作用の関係をモデル化します。代表的な手法には、線形モデル、KNN、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシン(SVM)、ニューラルネットワークなどがあります。
QSAR予測報告書のフォーマット要件
現在の全世界の農薬原薬の同等性評価において、(Q)SARモデル報告に対してREACH法規のように、(Q)SAR予測に対してQMRFとQPRF様式の報告書の提出が義務付けられていないが、この様式の(Q)SAR予測報告はOECD(Q)SARの「五準則」の要求に基づいて作成されたものであるため、適用性が高く、ほとんどの国と地域(Q)のSAR報告の要求を満たすことができる。
QMRF:(Q)SAR Model Reporting Format
QPRF:(Q)SAR Prediction Reporting Format
警告部分構造に基づくルール・ベース・モデルの予測結果については、他の様式の報告フォーマットを採用することもできるが、モデル結果を十分に検証し、具体的な毒理学評価根拠を提供しなければならない。
農薬原薬の同等性評価において、各国の審査機関が農薬同等性評価において遺伝毒性に注目する理由
農薬原薬の同等性評価において、不純物に対する遺伝毒性は常に各国の評価の重点であり、主な原因は遺伝毒性(Genotoxic)物質が毒性に関する閾値がないと考えられ、厳密に言えないが遺伝毒性化合物への暴露が存在すれば、人体に対して直接的なDNA損傷を引き起こす可能性があり、それによって、癌の誘発率が著しく高くなる。そのため、異なるソースからの原薬に含まれている不純物の含有量が極めて低くても、その遺伝毒性に対して十分に評価する必要がある。
QSARを補完する毒性評価手法
毒理学データの検索
証拠の重み付け(Weight of Evidence:WoE)に基づき、データベースから関連する毒理学データを検索し、各データの妥当性と信頼性を評価することで、不純物または対象化合物の有害性を明確にします。
リードアクロス(Read-Across)
リードアクロス(Read-Across)は、1つまたは複数の化合物に関するエンドポイント情報を用いて、類似した特性を持つ別の化合物の同一エンドポイントを予測し、データギャップを補完する手法です。不純物や対象化合物の評価では、専門家の判断に基づき、主に構造類似性、代謝類似性、傾向分析の観点から検討します。
毒性学的懸念閾値(TTC)
毒性学的懸念の閾値(TTC)は、十分な毒性データがない化合物について、発がん性その他の毒性リスクが無視できると考えられる摂取量の目安を示す手法です。TTCは一般に保守的な考え方に基づいて設定され、低レベル曝露におけるリスク評価を支援します。
定量的毒性閾値の計算
農薬原体中の不純物について合理的かつ科学的な限度値を設定するためには、不純物自体の定量的な毒性閾値を明確にする必要があります。毒理学データの検索、Read-Across、TTCなどにより毒性を定量的に評価し、必要な不確実係数を考慮した上で、一日許容曝露量(PDE/ADE)または許容摂取量(AI)を算出し、不純物の限度管理に活用します。
不純物の限度管理
不純物の限度管理では、リスク評価の考え方に基づき、不純物の有害性を示す値と潜在的な曝露量を比較し、不純物の含有量が許容範囲内にあるかを判断します。
内分泌かく乱作用の評価
EUの農薬・殺生物剤に関する内分泌かく乱評価ガイダンスに基づき、Level 1およびLevel 2に関連する評価では、分子ドッキング(molecular docking)や(Q)SAR予測などを活用し、対象化合物が潜在的な内分泌かく乱作用を有するかを評価したり、関連する作用機序の解明を支援したりします。
皮膚感作の限定方法(OECD TG 497)
2021年6月に公表されたOECD TG 497は、皮膚感作性の有害転帰経路(AOP)におけるキーイベント(KE)に関連するin vitro試験と(Q)SARツールを組み合わせ、標準化された手順に基づいて対象化合物の皮膚感作性を評価するDefined Approachesを示しています。
新農薬研究開発における計算毒理学評価
農薬研究開発で新たに得られた活性化合物について計算毒理学的評価を行い、化合物または分子フラグメントの潜在的な毒性を予測することで、分子設計の最適化や候補化合物の選定を支援し、新規農薬の研究開発を効率化します。
REACH24Hの農薬QSAR予測・毒性評価サービス
グローバル農薬QSAR予測サービス(EU、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、メキシコ、ロシアなど)
証拠重み(WoE)に基づく毒理学データの検索と評価
リードアクロス(Read-Across)
定量的毒性閾値計算と不純物限度管理(TTC,PDE/ADE,AI)
内分泌かく乱作用の評価
皮膚感作の限定方法(OECD TG 497)
新農薬研究開発における計算毒理学評価
内分泌かく乱物質のドッキング(molecular docking)
(Q)SARモデリング
グローバル農薬QSARプロジェクト実績
REACH24Hではこれまで、EU、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、オーストラリア、ロシア、FAO/WHOなど、複数の国・地域および国際機関に向けて数千件の(Q)SAR予測・毒理学評価報告書を提出してきました。これらのプロジェクトを通じ、規制当局による評価に対応してきた実績があります。また、専門技術チーム、豊富なソフトウェアリソース、およびこれまでのプロジェクト経験を活かし、(Q)SARなどの非試験手法(non-testing methods)を用いて、農薬・医薬品企業や研究機関による新規有効成分の開発および事前評価を支援しています。
さらに、REACH24Hは、毒性予測ソリューションを提供するLhasa社と正式に連携しており、(Q)SAR予測システムであるDerek NexusおよびSarah Nexusを顧客向けプロジェクトで利用可能な評価ツールとして導入しています。
REACH24Hの技術チームは現在、数十種類の(Q)SARソフトウェアを規制対応に活用するノウハウを保有し、数百種類の評価モデルにより下記をはじめとする各種エンドポイントの予測に対応可能です。
物理化学的性質
ヒト健康毒性
生態毒性
環境中運命
また、予測モデルおよび予測結果については、OECDの原則に基づきQMRFおよびQPRFなどを活用し、モデルおよび予測結果の妥当性・信頼性を検証します。さらに、(Q)SARを規制対応に活用する上で評価難易度の高い遺伝毒性(genotoxicity)、生態毒性、内分泌かく乱作用などについても、過去のプロジェクトを通じ評価手法と対応ノウハウを蓄積しています。
REACH24Hが選ばれる理由
国際資格保有の毒性学専門家が複数在籍し、分野横断型チームにより強固な技術サポートを提供します。
長年にわたるグローバルQSAR予測・毒性評価の実務経験を有し、高品質な技術サービスを提供します。
2025年12月時点で、数千件のQSAR予測・毒性評価報告書を作成し、高い審査承認実績を維持しています。
充実したQSARソフトウェアリソースおよび技術開発チームを保有しています。
各国・地域の専門家と長期的な連携体制を構築し、サービス品質および業務効率を確保しています。
有効かつ信頼性の高いQSAR予測ツールを活用し評価を実施します。
農薬原体の同等性評価において、REACH24Hは十数種類の(Q)SARソフトウェアを活用した予測と専門家評価に対応しています。また、予測結果の妥当性と信頼性をさらに高めるため、世界有数の(Q)SAR予測システムであるDerek Nexus & Sarah Nexusを導入し、幅広い毒性エンドポイントについて質の高い評価を提供しています。
Derek Nexusの紹介 ― ルールベースモデル(Rule-based models)

Derek Nexusは、EUの農薬原体同等性評価やブラジルなどの農薬規制当局で推奨されている(Q)SAR予測システムであり、医薬品分野でもFDA、EMA、NMPAなどで広く採用されています。
特徴:
毒理学の専門家の数十年の経験に基づく
数百種類の警告部分構造をカバーし、芳香族アミンなどの予測困難な毒性構造を十分に最適化する。
幅広い毒理学的ノード:遺伝毒性、皮膚感作性、発癌性、生殖/発達毒性、神経毒性など
透明性が高く、すべての毒理学評価の根拠、文献の出典は入手可能。
Sarah Nexusの紹介 ― 統計ベースモデル(Statistical-based models)

Sarah Nexusは、階層クラスタリングに基づくSOHN手法を用いてトレーニングセット中の分子フラグメントを学習し、機械学習により対象分子に含まれる遺伝毒性関連の構造特徴を高感度に識別します。
特徴:
高感度な予測手法で、Derek Nexusと組み合わせることで予測の妥当性と信頼性向上を支援します。
信頼性の高い大規模なAmes変異原性試験データに基づいています。
トレーニングセットは十分な信頼性検証が行われ、追跡可能なデータソースを提供します。
透明性が高く、予測に至る推論プロセスを確認できます。
REACH24HはQSARサービスに豊富な実績を有し、関連分野の専門家とともに複数の国・地域でプロジェクトを実施してきました。各市場の農薬登録要件に応じた体系的なQSARソリューションを提供します。
農薬QSAR予測・毒性評価に関するよくある質問(FAQ)
REACH24Hでは、プロジェクトの具体的な状況に応じて、必要となる追加評価について提案するとともに、その後どのような資料や科学的根拠を準備すべきかを整理し、対象市場の要求に対応した技術的根拠の作成を支援します。
