著者:REACH24H化学品コンプライアンスチーム
更新日:2026年8月
その上で企業は「既存化学物質」「新規化学物質」それぞれに適用される規制ルートに従い、輸入時の TSCA 証明、製造前届出(PMN)、化学品データ報告(CDR)、リスク管理など各種義務を履行しなければなりません。
REACH24Hでは、物質の同一性、予定用途、輸入計画、既存データなどを踏まえ、ワンストップのTSCA規制対応サービスを提供しています。TSCAインベントリー調査、規制ルートの判定、新規化学物質届出、既存化学物質の継続的なコンプライアンス対応まで、米国市場参入に必要な準備を総合的に支援し、円滑な取引をサポートします。
米国有害物質規制法(TSCA)とは
『米国有害物質規制法』(Toxic Substances Control Act:TSCA)は米国議会により制定され、1977年に発効し、2016年に初の大幅な改正が行われました。実施機関は米国環境保護庁(EPA)です。同法は、米国内で流通する化学物質が環境、経済および社会に与える影響を総合的に考慮し、人の健康および環境に対する「不合理なリスク」を防止することを目的としています。
TSCAは、米国における商業用途の化学物質を管理する主要な法律です。米国向け製品がTSCAの規制対象となる企業にとって、TSCAへの適切な対応は通常の輸出・輸入取引を行うための前提となります。
米国TSCAの規制対象範囲
TSCAは名称に「有害物質」とありますが、化学物質を単純に「有害物質」「無害物質」と分けて管理する法令ではありません。基本的には、化学物質を「既存化学物質」と「新規化学物質」に区分して管理しており、「新規化学物質」に該当するかどうかは、その物質がTSCAインベントリー(TSCA Inventory)に収載されているかによって判断されます。
食品、農薬、医薬品、たばこなど、他の米国法令によって管理される物質については、TSCAの適用対象外となります。
米国TSCAインベントリーは随時更新される動的なインベントリーであり、約86,847種の化学物質が収載されています。インベントリーは公開部分と非公開部分に分かれています。
TSCAインベントリーに収載されている物質は既存化学物質、収載されていない物質は新規化学物質として扱われます。米国内で既存化学物質または新規化学物質を製造・輸入する事業者は、それぞれに適用される規制義務を履行する必要があります。

TSCAインベントリーのチェック:
REACH24Hが独自開発したグローバル化学品インベントリー検索システム「ChemCheck」では、物質名またはCAS番号から、対象物質が最新のTSCA公開インベントリーに収載されているかを無料でオンライン検索でき、あわせて初期的なコンプライアンス情報を確認できます。
米国TSCAにおける既存化学物質の管理
TSCAインベントリーに収載されている既存化学物質であっても、製造、輸入または商業流通を行う際には、継続的な規制対応が必要です。
主に、以下の5つの領域への対応が求められます。
TSCA適合・適用除外証明(輸入通関対応)
米国税関・国境警備局(CBP)の要求に基づき、化学品または化学物質を含む対象製品を輸入する際には、TSCAへの適合または適用除外を証する証明書の提出が必要となります。提出しない場合、または TSCA 違反の疑いがある場合、貨物が留置される、あるいは輸入が許可されない可能性があります。
重要新規利用届出(SNUN)*
対象物質が重要新規利用規則(SNUR)の対象となっており、企業が予定する用途がSNURで定める「重要な新規利用」に該当する場合には、その製造または輸入を開始する少なくとも90日前までに、EPAへ重要新規利用届出(SNUN)を提出する必要があります。その審査プロセスは、新規化学物質に対するPMNと類似しています。
化学品データ報告(CDR)
CDRは4年間を一つの報告サイクルとして実施されます。通常、報告サイクル内のいずれかの暦年において、年間製造・輸入量が25,000ポンド(約11.3トン)以上となった場合、年間活動量、製造・加工拠点、労働者のばく露情報など、所定のデータをEPAへ報告する必要があります。次回の通常報告期間は2028年に開始する予定です。
また、特定のTSCA規制の対象となる物質や重点管理対象となる物質については、報告基準が2,500ポンド(約1.13トン)まで引き下げられる場合があります。
非アクティブ物質の活動届出(NOA Form B)
TSCAインベントリーで非アクティブ(Inactive)と指定されている物質について、商業目的の製造または輸入を再開する場合には、活動開始前にNOA Form Bを提出する必要があります。届出完了後90日以内に、予定していた商業活動を開始します。
高リスク化学物質に対するリスク管理
EPAがTSCA第6条に基づき重点的なリスク管理を実施している高リスク化学物質については、製造、加工、流通、使用などに関する禁止・制限措置を守る必要があります。例えば、5種類のPBT(難分解性・生物蓄積性・毒性)物質や、リスク評価を経て規制措置が導入されたジクロロメタンなどが該当します。
企業は、適用される禁止・制限要件に加え、該当する場合には、適用除外に関する記録保存、サプライチェーン下流へのコンプライアンス情報伝達、禁止・制限措置への適合確認などを行う必要があります。
*注意:SNURとSNUNの違い
重要新規利用規則(SNUR):EPAがTSCA第5条に基づき制定する規則であり、特定の化学物質について、どの用途が「重要な新規利用(Significant New Use)」に該当するかを定めます。
重要新規利用届出(SNUN):企業がSNURに定められた「重要な新規利用」を行おうとする際に、EPAへ提出する正式な届出です。
米国TSCAにおける新規化学物質の管理
米国 TSCA インベントリーに収載されていない新規化学物質について、免除要件を満たさない場合、製造者または輸入者は新規化学物質届出を実施しなければなりません。EPA による審査・承認を取得した後に限り、製造や輸入といった商業活動を開始することができます。届出手順は下記の通りです。

ステップ1:TSCAインベントリーへの収載状況を確認
TSCAインベントリーには公開部分と非公開部分があります。
公開インベントリーに収載が確認できない物質については、EPAへ真摯な意図通知(Bona Fide Notice)を提出し、非公開インベントリーへの収載有無を確認することが可能です。
ステップ2:届出タイプおよび適用可能な免除を確認
新規化学物質の主な届出タイプ
*各種新規化学物質届出の実際の審査期間は、法定審査期間と異なる場合があります。商業化スケジュールには十分な余裕を持たせることを推奨します。
新規化学物質届出の免除
法定上の除外・免除対象となる不純物、一定の副生成物、非単離中間体のほか、ポリマー免除の要件を満たす物質や、少量の研究開発用途などについては、新規化学物質届出が免除される場合があります。
ポリマー免除を例にすると、適用可能性の評価では主に以下の3点を確認します。
原料リストの確認:添加量が 2 重量%を超えるすべてのモノマー、その他反応原料が TSCA 既存化学物質インベントリーに収載されているか確認します。
分子量およびオリゴマーの測定(GPC分析):ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって数平均分子量(Mn)を測定し、分子量500未満および1,000未満の低分子量成分(オリゴマー)の割合を算出し、所定の基準値を満たしているかを確認します。
構造の確認:ポリマーの化学構造、モノマー組成、元素含有量などを評価し、TSCAにおけるポリマーの定義を満たしているか、また、カチオン性、ペルフルオロ・ポリフルオロ構造(PFAS)、分解しやすいポリマーなど、免除対象外となる構造に該当していないかを確認します。
ステップ3:資料準備および電子申請
新規化学物質届出に必要となる主な情報
化学物質の同一性情報:化学構造式、分子式、CAS番号、適切な化学物質名称。
物理化学的性状・環境運命に関するデータ:融点、沸点、蒸気圧、溶解度、LogKow、生分解性など。既存の実測データまたは信頼性のある推定値を使用します。
製造工程および用途:製造・加工拠点、工程フロー、年間生産量、具体的な商業用途・消費者用途、製品カテゴリーコード。
ばく露・排出評価:労働者のばく露状況(保護措置、接触時間)、環境への排出経路、汚染防止技術。
CBI申請:具体的な化学物質名称や処方など、重要な営業秘密を保護する必要がある場合は、申請時に秘密企業情報(Confidential Business Information:CBI)として指定し、実質的な根拠説明を提出する必要があります。なお、2016 年 TSCA 法改正後に承認された当初の CBI主張については、10 年間の有効期間が間もなく満了します。過去にCBIを申請し、引き続き秘密保持を希望する企業は、有効期限を確認し、必要な更新申請を適時行うことが重要です。
ステップ4:EPAによる審査と正式な判断
受領確認(Day 1)
EPAが完全な申請資料と行政手数料を受領すると、通常7~10日以内に受領確認が発行され、正式な審査開始日(Day 1)が確定します。
法定審査期間
標準的なPMNの法定審査期間は90日です。免除届出・申請については通常30~45日です。
審査期間中、EPAは化学物質の化学的特性、ばく露、生態リスクおよび人の健康リスクを評価します。EPA側の審査案件滞留、審査スケジュールなどの客観的要因により審査が一時中断する場合、企業は適宜連絡・フォローアップを実施する必要があります。また、資料の補足が必要として照会を受けた場合は、所定の期間内に追加情報を提出します。
EPAによる正式な判断
リスクなし判定(Not likely to present an unreasonable risk):企業は審査終了後、商業目的の製造または輸入を開始できます。
リスク懸念または情報不足判定(May present / Insufficient information):EPAは通常、TSCA Section 5(e)に基づく制限命令(Consent Order)を発行し、個人用保護具の使用義務、特定用途の制限などのリスク管理措置を要求したり、一定数量に達する前に追加の毒性試験などを要求したりします。また、多くの場合、これに伴ってSNURが制定されます。
ステップ5:TSCAインベントリーへの収載
PMN 審査とEPAによる判定が完了した後、対象物質の米国内での製造または初回輸入を実施する場合、企業は開始から 30 日以内にNOC(Notice of Commencement:製造・輸入開始届出)を EPA へ提出しなければなりません。
EPAがNOCを受領すると、新規化学物質はTSCAインベントリーに正式に収載され、以降は既存化学物質として扱われます。その後、他の企業も適用要件を満たす範囲で製造または輸入できるようになります。
米国TSCAにおける企業のコンプライアンス対応ルート
『米国有害物質規制法』(TSCA)は、米国へ化学品を輸出する海外企業とその米国輸入者の双方に関係します。米国向け製品がTSCAの規制対象となる企業にとって、TSCAへの対応は通常の貿易を行うための前提条件です。
ステップ1:物質の用途を確認
米国向け製品に含まれる化学物質がTSCAの規制対象に該当するかを確認するとともに、その物質がTSCA既存化学物質インベントリーに収載されているかを確認します。これにより、新規化学物質か既存化学物質かを判定します。
ステップ2:既存化学物質の日常的なコンプライアンス管理
既存化学物質の場合は、重要新規利用規則への対応、CDR報告、NOA Form Bの提出、輸入時のTSCA証明など、適用される日常的な規制対応を行います。
CDRについては、通常の25,000ポンド基準、および特定物質に適用される2,500ポンド基準を確認する必要があります。
また、5種類のPBT物質、ジクロロメタンなどの高リスク物質についてEPAが導入している禁止・制限措置やその他のリスク管理要求にも適切に対応します。
ステップ3:新規化学物質の事前確認
新規化学物質の場合は、まずポリマー免除、研究開発目的の免除などが利用できるかを評価します。
免除を利用できない場合には、商業目的の製造または輸入を開始する前に、PMN、LVEなどの新規化学物質届出についてEPAの審査を受ける必要があります。
ステップ4:重点規制のモニタリングと新たな個別政策への対応
PFAS、MMO(混合金属酸化物)正極材料、MWCNT(多層カーボンナノチューブ)などのナノ材料を含め、特殊な規制や高リスク管理の対象となる物質については、個別の規制要件を確認する必要があります。
また、10年間の有効期間満了が近づくCBIについては、有効期限を継続的に確認し、必要な更新申請を期限内に行うことで、重要な処方情報や営業秘密の秘密保持状態が失われないよう対応する必要があります。
REACH24Hの米国TSCA規制対応サービス
TSCAインベントリー調査・規制ルート判定
TSCA公開インベントリーの調査および非公開インベントリーに関するBFI対応を支援します。また、REACH24Hが開発した検索システム「ChemCheck」を活用し、企業によるインベントリー収載状況の確認と初期的な規制判断を支援します。
TSCA適合・適用除外証明の作成支援
米国輸入時に使用するTSCA証明書類について、ポジティブ証明やネガティブ証明の作成を支援し、通関書類が要求事項を満たすよう確認することで、輸入時のリスク低減を支援します。
新規化学物質届出の全プロセス支援
PMN・LVE・LoREX・TME・ポリマー免除
届出ルートの評価から、資料準備、EPAシステムへの提出、追加データに関するコミュニケーション、CBI申請まで、一連の手続きを支援し、製品・物質の状況に応じた米国市場参入ルートをご提案します。
重要新規利用届出(SNUN)
適用されるSNURの内容を整理し、具体的な規制要件を分かりやすくまとめるとともに、サプライチェーン川下へのコンプライアンス情報伝達を支援します。SNUNが必要な場合には、申請資料の作成から提出まで支援します。
化学品データ報告(CDR)
報告対象となる物質の特定、報告データの集計、申請資料の作成、CDRシステムへのオンライン提出を支援し、2028年のCDR報告への対応をサポートします。
非アクティブ物質の活動届出(NOA Form B)
非アクティブ物質について、活動状態に関する届出を支援し、商業活動の再開前に必要なTSCA要件への対応をサポートします。
PFAS個別コンプライアンスサービス
TSCA Section 8(a)(7)に基づくPFAS報告や、高懸念物質に対するリスク管理規則について、個別の規制評価および対応方針の策定を支援します。
TSCA対応戦略の総合分析
複雑な製品ポートフォリオを有する企業を対象に、届出ルート、時間・コスト、PFASリスク、最新の重要政策動向などを総合的に考慮したTSCA対応戦略分析レポートを提供します。
REACH24Hが選ばれる理由
REACH24H は17年にわたりグローバル化学品規制支援分野で事業を展開し、米国に現地法人を保有しています。
TSCAインベントリー調査から市場参入前後の規制対応まで、ワンストップのコンプライアンスサービスを提供します。
現地サービスネットワークとEPAとの直接コミュニケーション
REACH24Hの米国現地チームが、プロジェクトにおける各種コミュニケーションをサポートします。
現地でEPAとのやり取りを行うことにより、情報伝達上のギャップを抑え、申請プロセスを円滑に進められるよう支援します。
豊富なTSCA実務経験
PMN、LVE、SNUNなどの新規化学物質・重要新規利用関連届出や、CDR対応について多くの実務経験を蓄積しています。
EPAの審査ポイントや、申請時に発生しやすい追加資料要求を踏まえたプロジェクト支援を行います。
多言語・多地域での連携
中国語、英語、日本語、韓国語などの多言語対応が可能です。中国、日本、韓国、東南アジアなどから米国へ製品を輸出する企業に対し、言語や地域をまたぐプロジェクトコミュニケーションを支援します。
デジタルツールを活用した効率的な調査
REACH24Hの検索システム「ChemCheck」では、CAS番号または物質名から最新のTSCA公開インベントリーへの収載状況を無料で検索できます。企業による初期的なコンプライアンス確認の効率向上を支援します。
サプライチェーンにおける営業秘密の保護
厳格な秘密保持契約に基づき、サプライチェーン上の関係者間で取り扱われる処方・組成情報を適切に管理し、企業の営業秘密保護に配慮します。
米国TSCAコンプライアンス評価を開始
米国で化学品または化学物質を含む製品を製造、輸入または販売する予定がある場合には、TSCAの適用性、インベントリーへの収載状況、今後必要となる手続きを判断するため、まず以下の基本情報をご準備いただけますようお願いいたします。
物質名、CAS番号、組成および必要な構造情報
製品用途、川下用途、およびサプライチェーンにおける製造者/輸入者としての役割
予定する年間製造量または輸入量、および商業化スケジュール
既存のSDS、物理化学・毒性・生態データ、および過去の届出資料
秘密保持が必要な営業情報の範囲
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公式情報
EPA:TSCA Chemical Substance Inventory
EPA:Pre-Manufacture Notice(PMN)
EPA:Chemical Data Reporting(CDR)
