EUは2024年11月20日、デジタルラベル制度および関連要件を導入する規則(EU) 2024/2865を公布しました。当該規則は、デジタル時代の新な取引モデルに適応し、ラベルの透明性とアクセス可能性を向上させ、広告と通信販売を規制するものですが、その高額な導入コストと過剰な要求が利害関係者から懸念を引き起こしました。
これを受け、欧州委員会は各方面からのフィードバックを収集し、関連問題について議論・投票を経て、2025年7月8日に提案COM(2025) 531を提出しました。これは、物質および混合物の分類、表示、包装(CLP規則)に関する規則(EC) No 1272/2008の特定の要件と手続きを最適化するものです。
提案COM(2025) 531は、EU CLP規則の以下の内容を修正することを提案しています:
デジタル連絡先の導入
ラベル要素として、サプライヤーの電話番号の提供から、サプライヤーのデジタル連絡先の提供に変更されます。「デジタル連絡先」とは、登録やアプリケーションのダウンロードなしに、サプライヤーに連絡したりやり取りしたりできる最新かつアクセス可能なオンラインコミュニケーションチャネルを指します。
ラベル形式と小容量包装のラベル免除規則の最適化
これまで義務的の文字のサイズ、行間などの形式規定を撤廃し、ラベル情報が明確で読みやすいことのみが要求されます。
補足情報(追加のサプライヤー連絡先など)をデジタルラベルのみで提供することを許可し、物理ラベルのスペース的な制約が緩和されるとともに、情報の更新がやすくされます。
10ミリリットル未満の容器については、企業が「サイズや形状により完全なラベル要件を満たせない」ことを証明することなく、ラベル情報を簡素化できるようになります。特に低危険性物質については、10ミリリットル包装のラベル免除の適用範囲が明確化されます。
ラベル更新期間の調整
ラベル更新の6ヶ月固定期限を削除し、新しい分類・ラベルデータを入手後、サプライチェーンの複雑性や折りたたみラベルの生産サイクルが長いという実情に適応するため、企業に適時なラベル更新を要求するように変更されます。
広告および通信販売規則の簡素化
1)広告および通信販売規則の適用範囲を縮小し、一般消費者向けの化学品にのみ適用されます。B2B取引(企業間取引)については、REACH規則が専門的なサプライチェーンの情報伝達を既にカバーしているため、広告における危険有害性情報の要件は免除されます。
2)広告内容は「製品ラベルと製品情報を必ずお読みください」という注意喚起のみを含めればよいことになり、ラベルに記載されている危険有害性情報(絵表示、注意喚起語など)を繰り返し表示する必要がなくなります。
燃料ポンプの一部ラベル要素の免除
燃料ポンプには「公称数量」および「固有の配合識別子(UFI)」を表示する必要がなくなります。
移行期間の設定
改正条項の発効時期は段階的に実施され、一部の条項(ラベル形式の調整など)は2028年1月1日まで延期されます。すでに市場に投入されている化学品は、移行期間中も従来のラベルを継続して使用可能です。
これらの改正は、化学物質の安全管理と企業のコンプライアンスコストのバランスを取ることを目指しています。柔軟性の向上、デジタルツールの普及、冗長な要件の簡素化を通じて、EU化学産業の競争力が向上されつつ、人間の健康と環境に対する高水準の保護が維持されることを目指しています。現在、提案COM(2025) 531は一般立法手続きに進むため、正式なCLP規則改正案の公布時期はまだ決まっていません。したがって、今、企業は元の規則要件に従ってラベルを作成しつつ、新規則の動向を密接に追跡し、製品のコンプライアンス適合をタイムリーに準備しておくことが重要です。