最近、欧州委員会はREACHおよびCLP規則主管当局合同会議(CARACAL)において、《化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則》(REACH)の全面改訂提案を発表しました。
提案内容は、登録内容の更新、ナノ材料の定義、サプライチェーンのデジタル化、認可および制限プロセスの簡素化、税関執行の強化など、主要分野を網羅しています。 EU REACH法規が施行されてから約20年ぶりとなる初の体系的な改訂提案であり、その改訂の目的は現行制度の実施における構造的矛盾の解消を目的としています。 しかし、現在の産業界の慎重な態度や重要技術的要素の実施難易度を考慮すると、この提案は利益の均衡や実務的観点で多くの課題に直面しており、その最終的な実現効果は実践による検証を待つ必要があります。
CARACALとは?
REACHおよびCLP規則主管当局合同会議(Competent Authorities for REACH and CLP、CARACAL)は、欧州化学品規制システムの中核的な調整メカニズムであり、欧州連合に立法提案を提供する組織です。CARACAL会議の動向は欧州の規制トレンドを直接反映しており、企業はその動向を追跡することでコンプライアンス要件の変化を予測することができます。
改訂のポイント
1. 登録要件の更新、登録の有効性およびポリマー登録に大きな変革が予定される
登録有効期間は統一して10年とされ、登録文書が更新されていない場合や不適合が発見された場合、ECHAは登録番号を取り消す権限を持つことになる;
年間1トン以上を生産または輸入するポリマーについては、企業はまず通知を行い、危険有害性基準に基づいてポリマー自体の登録が必要な物質を決定する;
以下の場合、登録文書の更新が必要です:
物質がSVHCにリストされる場合;
1~10トンの簡易登録(登録文書に物理化学データのみを提供するもの)は、全データ要件に更新する必要があります。
データ共有を推進し、動物実験の削減を目指す; REACH法規の附属書IIIおよびXIIIの削除を提案し、附属書I、VI-X、XIなどのデータ要件を更新する。
2. ナノ材料の管理要件をさらに明確化し、川下ユーザーの申告を追加予定
法規は2022年の欧州におけるナノ材料の定義を採用する;
データ要件を明確化し、特に川下ユーザーはナノ形態特性および安全評価データを報告する必要がある。
3. 公式評価およびコンプライアンス審査を強化し、ECHAにより大きな権限を付与
ECHAは、登録文書が不完全である場合や企業が公式評価に応じない場合、登録番号を取り消すことができる;
試験提案および登録文書の完全性決議の評価プロセスにおいて、リードアクロス(類似物質のデータを利用する手法)などの他の方法を実際の試験の代わりに使用することが許可されル;
公式機関は、潜在リスク、構造類似物/成分/分解生成物などの要因に基づいて物質評価が必要な物質を選定することができる;
PMT(持続性・移動性・毒性物質)、vPvM(非常に持続性が高く非常に移動性が高い物質)、内分泌攪乱物質(EDs)の評価要件を新たに追加する;
特定の状況(例:評価決定期間中の企業の生産停止)に対する明確なプロセスを策定する。
4. 認可および制限プロセスの簡素化、規制ツールとイノベーションの最適化
「規制管理オプション分析」(RMOA)を導入し、最適な規制ツールを評価する;
認可は、高生産量物質、少量使用/用途物質、附属書XIVに記載された代替物質を優先する;
認可申請が拒否された場合、企業は規定された移行期間内にその物質の使用を停止する必要がある;
特定の危険有害性分類(例:CMR)の化学物質に統一リスク管理を適用する;
制限提案を提出する前に、企業は物質用途、暴露データ、および代替品情報を提供する必要がある。
5. サプライチェーンのデジタル化転換、デジタル製品パスポート(DPP)および電子SDSの推進
デジタル製品パスポート(DPP)を推進する;
サプライチェーン全体のデジタル交換をサポートするため、統一されたSDS電子フォーマットを導入する。
6. 国境を越えた規制協調を強化し、税関コンプライアンス審査および検証能力を向上させる。
輸入業者は通関時に安全データシート(SDS)を提供し、登録番号/認可番号を自動的に検証する必要がある;
REACHシステムとEU税関単一窓口の連携を推進し、4年以内に技術的な接続を完了する;
国家執行システムの基準を確立し、加盟国間でシステムおよび特別監査を実施する。
今後の展開
欧州環境総局(DG Environment)は、今回の改訂がグローバル化サプライチェーンの課題に対応し、企業のコンプライアンスコストと公衆の健康と環境の権益をバランスさせることを目的としており、欧州化学品規制がよりスマートで協調的な方向に進むことを示していると述べています。 次の段階として、改訂提案は加盟国の協議および公衆からの意見募集段階に入り、関連する公衆意見募集は4月25日に締め切られ、最終的な立法は2025年末に発表される予定です。
欧州の規制機関がREACH改訂構想を「簡素化」と「近代化」の象徴と高らかに宣言する一方で、欧州化学産業界は鋭い警告を発しています。この「グリーン転換」として包装された政策の祭典は、実際には産業の実情から乖離した文書上の規則に過ぎないというのが実情です。 デジタル製品パスポート(DPP)、税関自動化の技術基準に関する議論、登録番号の10年有効期間、ポリマー全体のコンプライアンスに伴うコスト上昇、輸入管理による貿易摩擦など、これらはすべて現行のREACH改訂構想が非現実的であることを示しています。
したがって、文書上の規則から実際の実施に至るまで、EU REACH法規の改訂実施にはまだ長い道のりが予想されます。
REACH24H は、関連企業が今後の改訂内容の進展に注目し、公衆討議に積極的に参加することを提案します。また、私たちはREACH法規改訂に関する欧州の最新動向を引き続きお伝えしていきます。