ブラジルREACH補足規則が正式発表――企業のコンプライアンス対応申告および費用改定ガイド
2025-05-15

2025年5月13日、ブラジルは法令第15.022号(通称:ブラジルREACH)の補足規則案を正式に公布し、1か月間のパブリックコンサルテーション(意見公募)を開始しました。

本補足法令は、ブラジルREACH規則の管理枠組みをさらに強化し、体系だった届出、リスク評価および規制措置の実施を通じて、化学物質の製造・輸入および使用の包括的な管理を図ることを目的としています。

本補足規則は、法令第15.022号に続くブラジルの2件目の総合的な規制文書であり、化学品管理体制が実施段階へ着実に移行しはじめたことを示しています。なお、主要な内容は以下の通りです。

  • 物質届出

  • CBI保護(営業秘密)

  • 物質評価

  • 物質の申告・評価・機密保持費用

  • 代替動物試験および国際協力

物質届出

ブラジルREACH規則では、ブラジル国内で製造または輸入される化学物質について、年間製造量または輸入量が1トン以上(過去3年間の平均値)の場合、国家化学品届出システムに義務的な届出が求められます。届出主体には、国内の製造業者、輸入業者、ならびに外国製造業者の唯一代表者(OR)が含まれます。

今回の補足規則では物質届出情報の詳細要件が規定されており、届出主体は以下の情報を提出する必要があります。

  • 届出主体情報(企業名、税番号、製造地または輸入原産国)

  • 物質情報(IUPAC名、CAS番号、GHS危険分類、メルコスール命名(NCM))

  • 年間製造/輸入トン数(1–10トン、10–100トン、100–1000トン、1000トン超)

  • 用途(工業、専門、家庭など)

施行時期

関係企業は、届出プラットフォーム開設日から3年間の届出受付期間内に既存物質の届出を完了し、所定の費用を納付しなければなりません。
また、登録事項の変更があった場合には、毎年3月31日までに登録情報を更新する必要があります。

CBI保護(営業秘密)

届出主体は、物質情報に対する最長5年間のCBI(営業秘密)保護を申請でき、そのための機密保持費用を納付する必要があります。
補足規則では、CBI保護申請時に提出する資料が規定されており、技術委員会は90日以内に機密資料を審査し、保護申請を承認または不承認とします。
なお、化学品リスク評価や新規物質申告のための新規試験データについては、機密保持期間を最大10年まで延長可能です。

優先評価

技術委員会は、国家化学品リスト掲載物質について、その危険性およびばく露ポテンシャル(曝露可能性)に基づき優先順位を設定し、以下の評価指標をもとに評価を行います。

  • 環境有害性――ブラジル現行GHS分類に基づく

  • 健康有害性――同上

  • ばく露リスク――年間製造/輸入量および用途(工業用、消費財用等)に基づく

技術委員会は、上記評価指標にもとづき優先評価物質を選定し、審議委員会に提出します。
製造者および輸入者は、安全情報および研究データを技術委員会に提供し、物質リスクの総合評価へ供する必要があります。最終的なリスク管理措置(使用制限、ラベル要件等)はこれにより決定されます。

申告・評価・機密保持費用

本補足規則により、物質届出、評価、ならびに物質情報の機密保持申請にかかる費用(通貨単位:ブラジルレアル)が規定されました。

※機密保持申請を撤回した場合や不承認となった場合、費用は返還されません。

代替動物試験および国際協力

補足規則では、化学品試験に際し代替法(QSAR等)の優先使用が義務付けられ、すべての代替方法が適用不可能な場合に限り動物試験が容認されます。具体的な制限事項は以下の通りです。

  • 重複試験の禁止――すでに存在する動物試験データは、直接評価に利用可能

  • 方法の認証――経済協力開発機構(OECD)またはブラジル動物実験規制委員会(CONCEA)に承認された方法のみ受理

また、ブラジルは規制協力並びに国際機関(OECD等)とのデータ共有や標準の調整を通じて、同等国の評価結果を承認し、貿易障壁の削減を図ります。

企業向け重要なお知らせ

今回発表の本補足規則は、ブラジルにおける2件目の化学品総合管理規則であり、届出や費用体系、今後のリスク評価方針の詳細がさらに明確化されています。しかし、ポリマーの標準化届出など物質届出時の重要技術課題、リスク評価SOP(標準作業手順書)の策定、機密保持手続きなどについては依然として未確定であり、これら情報の不足はブラジルのリスク管理能力を弱める可能性があります。

今後、ブラジル技術委員会より新たな実施細則や関連決議が順次公表される予定です。弊社では、ブラジル市場を重視する企業に対し、現時点から届出準備を開始し、コンプライアンス対応が必要な物質の選定を行うことを推奨します。当社は今後もブラジル化学品規制の動向に注視し、随時最新情報をお届けいたします。

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