米国FDA食品接触通知(FCN)申請
2025-06-20

食品接触物質(フードコンタクトサブスタンス、FCS)とは

食品接触物質(Food Contact Substance, FCS)の米国での定義は、主に連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug & Cosmetic Act、以下FD&C法)に準拠します。本法は1938年に制定され、米国食品医薬品局(FDA)に食品、医薬品、化粧品の規制権限を付与しています。

FD&C法第409条(h)第6項において、食品接触物質は次のように明確に定義されています。

“food contact substance” means any substance intended for use as a component of materials used in manufacturing, packing, packaging, transporting, or holding food if such use is not intended to have any technical effect in such food.”

(訳:「食品接触物質」とは、製造、包装、再包装、輸送、または保存に用いられる材料の構成要素として使用され、その使用が当該食品にいかなる技術的影響も及ぼすことを意図していない物質をいう。)

本定義は、製造、包装、輸送、保管などで食品に接触する材料の成分であり、その使用が接触食品に技術的な影響を及ぼさない場合、当該物質を食品接触物質とします。

さらに、上記の定義を満たしているほか、以下の条件に該当する物質も、所定の使用制限を遵守することにより食品接触物質として使用できます:

  • 一般的に安全と認識されている(GRAS)物質:科学的合意に基づき安全性が広く認められている物質(Generally Recognized as Safe, GRAS)。

  • 1958年以前に承認された物質:1958年「食品添加物修正法」制定前に、FDAにより食品接触用途で承認された物質。

食品接触通知(FCN)の申請が必要な場合

米国連邦規則集(Code of Federal Regulations(CFR))は、米国連邦政府の法規を編纂したものであり、第21章が食品接触材料のコンプライアンスに関する主たる法的根拠です。第21章の第174条から第186条には、法規の制限条件下で使用が認められる食品接触物質及び、それぞれの食品接触材料カテゴリーに適用される要件が規定されています。

21 CFR 第174条から第178条は、市販されている大多数の食品接触物質(接着剤、コーティング、紙及び紙板、ポリマー、食品接触製品製造助剤、添加剤など)が陽性リストとして掲載されており、各物質の化学的記載、使用説明および製品中の上限値が明示されています。製品がこれらの規定事項を全て満たした場合のみコンプライアンスが成立します。使用物質がリストに含まれていない場合や、法規に定める要件を満たしていない場合は、食品接触通知(FCN)の申請が必要となります。

米国食品接触通知(FCN)の専属性

FD&C法第409条(h)第1項(c)では、FCNは通知書で特定された製造業者及び物質にだけ有効であり、FCNに明記された製造業者または供給者のみが、規定に従い当該物質を使用または販売することが可能と定められています。そのため、同じ製品であっても、既に他の製造業者がFDA承認を取得している場合であっても、別の事業者が同様の製品を製造する際には新たにFCN申請が必要となります。

米国食品接触通知(FCN)申請の手続きフロー

  • 技術ドシエの提出:申請者は、必要な全データ及び情報を含む技術ドシエをFDAの食品添加物安全オフィス(Office of Food Additive Safety(OFAS))へ提出します。

  • FCN番号の割当と一次審査:FDAがFCN番号を付与し、ドシエを評価チームに回付。評価チームが第1段階審査として提出情報の完全性を確認します。

  • 第2段階審査への移行:提出情報が完全であれば、申請者にFDA確認書が発行され、その日付をもって120日間のFCN審査期間が開始され、第2段階審査へ進みます。

  • 自動発効または追加情報要請:第2段階審査中に問題がなければ、FCNは120日以内に自動的に発効し、FDA審査官より発効日確定通知が発出されます。問題があった場合は、FDAが追加情報の提出や修正を申請者に求めます。


米国食品接触通知(FCN)申請に必要な資料

申請物質の安全性をFDAに証明するため、FCN申請には詳細なデータパッケージ及び関連情報の提出が求められます。これには理化学データ、移行評価、毒性学評価、環境影響評価などを含みます。必要データは、FDAが公表するForm 3480に明示されており、主に以下の9項目です。

Sec A - 食品接触物質身元識別情報:物質名、化学構造等
Sec B - 製造工程情報:食品接触物質の具体的な製造工程
Sec C - 不純物情報:食品接触物質中の残留不純物に関する定性・定量分析
Sec D - 想定される使用情報:食品接触物質の想定使用シナリオ
Sec E - 安定性情報:使用条件下で食品接触物質が分解等するかどうか
Sec F - 移行レベル:使用条件下における化学物質の移行量
Sec G - 推定1日摂取量 (EDI):移行レベルに基づく推定摂取量
Sec H - 毒性学評価:推定1日摂取量に基づく毒性資料
Sec I - 環境影響評価:当該食品接触材料を米国市場へ投入する際の環境への影響評価

米国食品接触通知(FCN)申請に関するよくある質問(FAQ)

Q:に他社がFCNを取得済みですが、そのFCNを自社製品の安全性証明として利用できますか?
利用できません。その理由は、FCNは一般的な材料承認の代替とはならず、特定企業・特定用途の個別認証であり、各申請は必ず申請主体のみに適用されるためです。ただし、一部の場合にはFDAへデータ引用を申請することで、申請に必要な業務負担を軽減できる場合があります。

Q:自社製品が21 CFRで規定されているのに、なぜFCNを別途申請しなければならないのですか?
材料の用途、使用条件、最大使用量または純度が、法規所定の内容(例:より高い使用温度、異なる配合比、新規ポリマーの使用など)と異なる場合は、新たなFCN申請が必要となります。

Q:製造工程を変更した場合、再度FCN申請が必要ですか?
必ずしも必要とは限りません。工程変更により最終製品の理化学的性質または純度に実質的な変更がなく、最終用途も変わらない場合は再申請は不要です。ただし、いずれかに実質的な変更が生じた場合、「代替申請」として新たにドシエ提出が必要です。

Q:申請時に毒性データの提出が求められていますが、添加剤濃度が極めて低い場合にも全ての毒性試験を実施する必要がありますか?
必須とは限りません。毒性データ要件は、特定使用条件下での化学物質移行量に基づいて決まります。移行量が大きい場合は提出資料が増えますが、極めて低い場合は全ての毒性学データが免除される可能性があります。申請時には、追加の毒性試験を可能な限り回避し、既存の公開毒性学データ等を最大限活用します。

提供サービス一覧

米国食品接触通知(FCN)申請支援
FDA要件に従ったFCN技術ドシエの作成・整理。物質・製造情報、化学情報、毒理概要、環境評価を網羅し、資料内容の完全性・形式適合・審査適合性を確保します。

試験計画設計
材料の特性と使用条件を踏まえ、FCN申請に必要なデータを満たす試験計画を設計します。

試験委託及び試験監理
資格を有する試験機関の選定・試験項目の実施支援、全過程にわたり監理を行い、データの正確性及び信頼性を担保します。

米国FDA公式照会対応
FCN申請過程におけるFDAとの技術的コミュニケーション・問合対応(データ補正、問題説明等)を実施し、審査プロセスの円滑進行を支援します。




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