EU化粧品コンプライアンスに関する注意点:2025年Safety Gate違反事例の分析と企業の対策解説

EU化粧品コンプライアンスに関する注意点:2025年Safety Gate違反事例の分析と企業の対策解説

2026-01-19

EU Safety Gate(危険な非食品製品に関する迅速警報システム)は、欧州市場に流通する消費者向け製品の安全性を継続的に監視しています。2025年以降、同システムでは複数の化粧品に関する警報通知が公表されており、その多くは化学的リスク(Chemical Risk)に起因するもので、世界各国から欧州市場に投入された製品が対象となっています。

これらの通知は、市場に流通する製品でコンプライアンス上の顕在的な課題を浮き彫りにするとともに、欧州市場への参入を目指す企業にとって重要な示唆を提供しています。

本稿では、Safety Gate による通報事例を基に、EU化粧品規則における主要な要求事項を整理し、企業の実務対応の中で不適合事例を詳細に分析します。あわせて、企業が特に留意すべき5つの重要ポイントを提示し、リスク防止および持続的なコンプライアンスの確保に役立つ情報を提供させていただきます。ご参考になれば幸いです。

Safety Gate 通報にみる不適合リスクのポイン

直近の通報事例を見ると、化粧品の不適合要因は、主に化学的リスク(Chemical Risk)に集中していることが分かります。 具体的には、使用禁止・制限成分の不適切な使用や表示情報の不備・誤記が挙げられ、人体や環境への潜在的影響が問題となっています。これに次いで、微生物リスク(Microbiological Risk)に起因する不適合事例も一定数確認されています。

1. 使用禁止成分の検出:使用禁止成分の検出は、製品が通報対象となる最も主要な要因であり、製品安全性に関する法規の基本要件に直接違反するものです。

1.1. ブチルフェニルメチルプロピオナール(BMHCA)とヒドロキシイソヘキシル3-シクロヘキセンカルボキサアルデヒド(HICC)は、検出頻度が最も高い使用禁止成分です。両成分は、当初は感作性物質として規制されていましたが、BMHCA は2021年、HICC は2017年に使用禁止成分として指定されました。BMHCAとHICCの検出事例は、全通報件数の約9割を占めており、香料サプライチェーンにおける規制改正への対応の遅れを反映していると考えられます。

1.2. 一部の成分については、最近使用禁止に追加されたにもかかわらず、市場流通製品からの検出が確認されています。具体的には、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO:2025年9月より使用禁止)、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane Triacrylate:2023年12月より使用禁止)などが挙げられます。

1.3. このほか、通報事例で常に検出される使用禁止成分として、グルココルチコイド(Glucocorticoids)、ホルムアルデヒド(Formaldehyde)、イソブチルパラベン(Isobutylparaben)、シクロテトラシロキサン(D4)、フタル酸ジブチル(Dibutyl Phthalate)などが確認されています。

1.4. また、一部の重金属(例:鉛、水銀、ヒ素、カドミウム、アンチモン、ニッケル、セレン、コバルトなど)およびその化合物も、EU において使用禁止成分として規定されており、技術的に不可避なレベルでの非意図的存在のみが例外的に認められています。それ以外に検出された場合、原則として不適合と判断されます。

EU化粧品事例1.png

事例1:ブチルフェニルメチルプロピオナール(BMHCA)含有による製品の差し押さえおよびリコール要請

EU化粧品事例2.png

事例2:重金属の基準値超過による製品のリコール要請

2. 規制要件を超える配合制限成分の含有:化粧品に配合可能成分や配合制限成分を、製品種別、使用部位、濃度などの規定を超えて使用する場合、製品の安全性が確認できません。

2.1. 歯のホワイトニング製品に過酸化水素(Hydrogen Peroxide)を使用する場合、使用対象が一般消費者か歯科医師かによって、適用される最大配合濃度を適切に区分する必要があります。当該濃度上限を遵守していない場合、または処方管理の不備により濃度が基準値を超過した場合には、規制当局による措置の対象となる可能性があります。

2.2. メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)およびp-ヒドロキシアニソール(p-Hydroxyanisole)をネイル製品に使用する場合、専門家による使用に限定されており、一般消費者向けに提供することは認められていません。

2.3. メチルイソチアゾリノン(MIT)およびメチルクロロイソチアゾリノン(MCI)は、リーブオン製品に使用することはできません。

2.4. チオグリコール酸(Thioglycolic Acid)をパーマ剤や脱毛剤等に使用する場合、配合濃度の上限、最終製品の pH 値および警告表示要件を遵守しなければなりません。

2.5. ハイドロキノン(Hydroquinone)は、専門的なネイル用途以外の製品に使用することはできません。

EU化粧品事例3.png

事例3:過酸化水素の基準値超過による歯のホワイトニング製品の輸入拒否

EU化粧品事例4.png

事例4:使用禁止成分の含有によるネイルポリッシュの販売停止

3. その他のリスク物質の検出:一部の成分は現時点で規制附属書への収載には至っていないが、リスクへの懸念が広く指摘されているものがあります。このような成分については、特定の加盟国が先行して通報を行う可能性もあります。

3.1. イソプロピルクロプロステネート(Isopropyl Cloprostenate)およびビマトプロスト(Bimatoprost)はいずれもプロスタグランジン類似体に該当し、眼部への接触により障害を引き起こすおそれがあるほか、生殖発生毒性に関するリスクも指摘されています。現在、ドイツでは当該成分を含有する目元用製品に関して4件の通報が公表されています。

3.2. テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol)はカンナビノイドの一種であり、神経毒性のリスクを有するとされています。これに関連する製品について、リトアニアにより1件の通報が行われています。

3.3. ツボクサ、またはフルクトス・プソラレアの抽出物については、皮膚刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性が指摘されています。関連する製品について、フランスにより1件の通報が確認されています。

EU化粧品事例5.png

事例5:プロスタグランジン類似体の含有によるまつ毛美容液の販売停止

EU化粧品事例6.png

事例6:テトラヒドロカンナビノール含有によるスキンケア製品のリコール要請

4. 微生物汚染ISO 17516:2014 に基づき、製品の種類に応じて、好気性中温微生物および4種の特定病原微生物の含有量を厳格に管理する必要があります。

4.1. 一部の製品での微生物指標の基準超過は、主に製造管理および品質管理の基準(GMP)の不十分さを反映します。具体的には、製造環境や原料中の微生物リスクを十分に管理できていないことが要因となり、製品使用時の安全性を脅かす結果につながっています。

EU化粧品事例7.png

事例7:微生物汚染による製品のリコール要請

5. 表示情報の不備:表示は、規制当局および消費者に直接提示される最初の情報であり、その正確性および完全性の確保は、コンプライアンス要件のみならず、消費者の安全性にも直結します。

5.1. 製品中のアレルゲン含有量が一定の基準を超える場合には、当該アレルゲン情報を包装の成分表示に明記する必要があります。表示漏れ、不十分な表示、または誤った表示は、アレルギー体質の消費者における健康被害を引き起こすおそれがあります。

5.2. 欧州委員会の勧告文書 2006/647/ECによると、日焼け止め製品の SPF の最低基準値は6とされています。これを下回る製品は十分な紫外線防御効果を提供できず、消費者が日焼けなどの健康被害を受ける可能性や、その他の望ましくない影響を招く可能性があります。

5.3. 化粧品は、形状、色、大きさ等の外観設計に十分配慮し、食品と誤認されて摂取されることのないようにする必要があります。による誤嚥性肺炎や嘔吐などの健康被害を引き起こすおそれがあります。

EU化粧品事例8.png

事例8:アレルゲン情報の表示漏れによる製品の販売禁止

EU化粧品事例9.png

事例9:実際の紫外線防御効果の不足による日焼け止め製品のリコール要請

EU化粧品事例10.png

事例10:誤嚥リスクによるボディソープ製品のリコール要請

EU化粧品コンプライアンス  5つの対応策

EU 市場への円滑な製品投入および流通を確保するためには、EU化粧品規則の中核的要件を日常の事業運営に組み込むことが重要です。REACH24Hは、特に優先して取り組むべき5つの重要なアクションを以下のように整理します。

1. EU責任者(RP)の明確化:EU 市場へ参入する前に、EU 域内に所在する法人または自然人をRPとして指定することが不可欠です。RP は、製品のコンプライアンスに関する最終的な責任を負う主体となります。

2. 安全性評価(CPSR)を含む製品情報ファイル(PIF)の整備:各製品を市場に投入する前に、製品情報ファイル(PIF)を適切に整備する必要があります。PIF には、有資格的な評価者が作成した化粧品安全性報告書(CPSR)を含めることが求められます。規制当局による審査に対応するため、PIF は RP が保管し、その内容が十分かつ正確であることを確保するとともに、必要に応じて適時更新することが求められます。

3. サプライチェーン管理の厳格化:成分の安全性は製品コンプライアンスで最も重要なポイントです。原料中に使用禁止成分や基準超過の不純物が含まれていないことを確認するため、原料の理化学データおよび毒性データの提出を含むサプライヤー管理の強化が推奨されます。あわせて、製造工程が ISO 22716 など国際的に認められた GMP 要件に適合していることを確保し、微生物汚染リスクを製造段階から管理することが重要です。

4. 規制動向の継続的な把握:EU の法規制は継続的に更新されており、近年は内分泌かく乱性や発がん性・変異原性・生殖毒性リスクに対する関心が高まっています。企業は、規制附属書の改正動向を継続的に確認し、処方の定期的な見直しを通じて最新要件に適切に対応することが求められます。

5. 表示管理の適正化:表示は、製品に関する重要情報を正確に伝達するための重要な要素です。一方では、責任者、成分表示、内容量、使用期限などの法定表示事項を明確かつ正確に表示する必要があります。他方で、必要な警告表示の付与、包装および効能表示が消費者を誤認させないよう管理することにより、消費者保護の実効性を確保することが重要です。

まとめ

2025年のSafety Gate による通報状況からは、EU における化粧品安全規制が厳格かつ継続的に運用されていることがわかりました。使用禁止成分に対する事実上のゼロトレランスに加え、輸入業者、流通業者、小売業者を含むサプライチェーン全体への連帯的な責任追及が行われる中、企業には先を見据えた体系的なコンプライアンス管理体制の構築が求められています。

REACH24H は、欧州市場における規制対応を検討されている企業の皆様とともに、実効性の高いコンプライアンス体制の構築や、ブランドの持続的な成長と安定した市場展開に支援してまいります。ご関心がございましたら、ぜひ当社の専門チームまでお気軽にお問い合わせください。


規制に関する詳細については、お問い合わせください。
お問い合わせフォーム