2024年7月1日以降、中国の台湾地区では長年運用されてきた「特定用途化粧品の検査登録制度」が廃止され、「製品登録及び製品情報ファイル(PIF)」を軸とする新たな管理制度へ移行しました。
本制度改正の核心は、規制の重心が「事前審査」から「事業者による自主管理および上市後のトレーサビリティ管理」へ全面的に移行した点にあります。新制度において、台湾地区の製造業者・ブランド事業者・輸入業者はコンプライアンス上の第一次責任者となります。
2026年7月1日が近づく中、台湾地区化粧品PIF制度における最後の経過措置期間も終了します。これにより、台湾地区の化粧品市場は全面的なPIF管理の段階へ入ることになります。
台湾地区のPIF全面実施までの3段階
台湾地区のPIF制度は一斉に導入されたものではなく、製品のリスクや用途に応じて3段階で実施されています。
第1段階(2024年7月1日施行済み):日焼け止め剤、染毛剤、パーマ剤など、従来の特定用途化粧品が対象です。
第2段階(2025年7月1日施行済み):ベビー用、リップ用、アイメイク用、非医薬品の歯磨き粉、マウスウォッシュなど、より慎重な管理が求められる製品が対象です。
第3段階(2026年7月1日施行予定):工場登録の適用除外となる固形手作り石鹸を除き、すべての普通化粧品についてPIFの作成・保管が求められます。
つまり、現在台湾地区で化粧品を販売する多くの企業は PIF コンプライアンスの最終準備段階に差し掛かっています。製造業者、輸入業者、ブランド事業者を問わず、間もなく経過措置期間が終了し、全面的な法令順守対応が義務付けられます。
台湾地区のPIF対応の義務主体
台湾地区の規定に基づき、PIFの作成および保管に責任を負う主な事業者は以下のとおりです。
台湾地区の製造業者:台湾地区で化粧品を製造する事業者。
ブランド事業者/委託製造業者:台湾地区の工場に製造を委託しているブランド会社。
輸入業者:化粧品を台湾地区へ輸入する事業者。
なお、受託製造業者は製品登録義務の主体には該当しませんが、ブランド事業者による PIF 整備に必要な技術資料を提供する協力義務を負います。
台湾地区のPIF対応に必要な資料
適法なPIFには16大項目の資料が含まれます。これらは、製品基本情報、製造情報、技術試験、安全性評価などを幅広くカバーするものです。

実務でよく見られる台湾地区のPIF対応上の誤解
実務上、多くの企業は制度の理解不足や資料準備の遅れにより、製品の販売停止や当局への通報リスクに直面することがあります。代表的な誤解は以下のとおりです。
技術試験資料が不十分
物理化学特性試験、微生物試験、安定性試験、保存効力試験といった資料の整備に苦慮する企業が多数存在します。例えば、安定性試験に加速試験または長期試験が含まれていない、試験に使用した包装材料が実際の上市製品と一致していない、といったケースが見られます。
ラベル表示の細部が規定に適合していない
表示違反は、現在最もよく見られるリスクの一つです。台湾地区の化粧品表示規定では、文字サイズにも具体的な要件があります。例えば、内容量が300mL/g以下の場合、表示文字の高さは1.2mm以上でなければなりません。また、ラベルには繁体字中国語による製品名、全成分、製造年月日、有効期間など、法定表示事項を漏れなく記載する必要があります。なお、成分名に限り英語表記が認められています。
「製品登録」と「PIF」を混同している
システム上で製品登録を完了し、登録番号を取得すればコンプライアンス対応が完了したと考える企業もあります。しかし、製品登録は市場参入の前提的手続きに過ぎません。PIFは上市後管理の中核資料であり、求められる情報の範囲や深度は製品登録資料を大きく上回ります。
シリーズ製品で1つのPIFを共用できる
同じシリーズの製品であっても、処方比率、色番、香料などに違いがある場合は、原則として製品ごとに個別のPIFを作成する必要があります。シリーズ製品では一部の基礎資料を共用できる場合がありますが、安全性評価などは各製品の特性に応じて個別に作成する必要があります。
資料の保管方法が不適切
PIFは通常、当局へ事前提出する必要はありません。しかし、包装表示に記載された製造業者または輸入業者の住所で保管し、当局から求められた場合に速やかに提示できる状態にしておく必要があります。
安全性評価担当者の資格不備
PIFに含まれる安全性資料は、所定の専門背景、実務経験、研修時間などの要件を満たす安全性資料署名者が署名する必要があります。資格要件を満たさない者が署名した場合、PIFの有効性や信頼性に問題が生じる可能性があります。
台湾地区のPIF対応に向けた実務上の提案
PIFの作成には、ブランド事業者、受託製造業者、原材料サプライヤー、専門の安全性評価担当者の連携が不可欠です。全面的なPIF対応を目前に控え、REACH24Hは企業に対し、以下の対応を推奨します。
自社点検とPIF作成を早急に進める
企業は直ちに製品ラインを棚卸しし、台湾地区で販売されるすべての対象製品についてPIFが作成・保管されているかを確認する必要があります。衛生福利部の食品薬物管理署(TFDA)による随時確認に備えることが重要です。
地域横断的な資料共有体制を構築する
台湾地区のPIF制度は、EUのPIF制度や中国大陸の安全性評価制度と多くの共通点があります。既存の毒性データや安全性関連資料を適切に再利用できれば、重複試験の削減やコスト低減につながります。
サプライチェーンとの連携を強化する
原材料サプライヤーからSDS、COA、TDSなどの重要な毒性・品質関連資料を早期に取得する必要があります。また、ブランド事業者と受託製造業者の間で、資料提供や責任分担を明確にしておくことが重要です。
十分な試験期間を確保する
安定性試験や保存効力試験には数か月を要する場合があります。そのため、製品上市前の段階で試験計画を立て、十分な準備期間を確保する必要があります。
適切な安全性資料署名者を確保する
安全性資料署名者の専門性と経験は、安全性評価報告書の品質を大きく左右します。企業はまず、社内に資格要件を満たす人材がいるかを確認し、該当者がいない場合は、専門性を有する第三者機関への依頼を検討することが望まれます。
PIFの保管を適切に管理する
PIFは電子形式で保存することも可能ですが、包装表示に記載された住所で管理されている必要があります。また、製品の最終販売日の翌日から少なくとも5年間保存しなければなりません。
変更管理と版管理を徹底する
処方、製造工程、ラベル表示に変更が生じた場合、PIFも同時に更新し、変更内容を詳細に記録する必要があります。これにより、製品情報の追跡可能性を確保することができます。
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