中国における化粧品の安全性評価報告書の本格運用に伴い、防腐チャレンジテスト、安定性試験、包装材料適合性試験は、製品届出を進める企業にとって大きな課題となっています。実務では、企業から次のような質問が多く寄せられています。
「どのような方法で試験すればよいのか」
「開発のどの段階で開始すべきか」
「どのような結果であれば基準を満たすのか」
こうした疑問に対応するため、中国食品薬品検定研究院(NIFDC)は、以下の3つの技術ガイドラインを公表しました。
「化粧品防腐チャレンジテスト評価技術ガイドライン」
「化粧品の安定性試験及び評価術ガイドライン」
「化粧品及び包装材料の適合性試験及び評価技術ガイドライン」
これらのガイドラインでは、試料の準備、試験条件の設定、評価方法、結果判定などについて、具体的な技術的考え方が示されています。
本稿では、3つのガイドラインにおける主要な実務ポイントを整理し、試験計画から結果評価までの重要事項を解説します。
化粧品の安定性試験
安定性試験は、化粧品が設定された有効期間内に、油水分離、変色、異臭、pHの急激な変化、カビの発生などを起こさず、品質を維持できることを確認するために実施します。
安定性試験の計画は、原料の性質、製品形態、処方、製造工程、包装材料などを総合的に考慮して、合理的に設計する必要があります。
1.試験試料の準備
ロットに関する要件
影響因子試験、加速試験および長期試験では、それぞれ少なくとも1ロットの試料を使用します。
市販製品との同一性
影響因子試験および加速試験に使用する試料は、原則として上市予定製品と同一である必要があります。長期試験に使用する試料については、処方、製造工程および化粧品に直接接触する包装材料を含め、上市製品と完全に同一でなければなりません。
2.試験項目の設定
基本試験項目
物理化学的・官能的項目(外観、色、におい、pH)、微生物学的項目(一般生菌数、カビ・酵母数)
製品特性に応じて追加する項目
遠心分離試験、粘度測定、気密性験、落下試験など
3.段階的な試験の実施
影響因子試験(苛酷条件における影響の確認)
高温、高湿度、光照射、凍結融解などの苛酷条件下で試験を行い、製品品質に影響する主要因を把握します。試験を実施する際には、設定した試験条件および評価期間について、科学的根拠を示す必要があります。
加速試験
一般的な試験条件は、以下のとおりです。
温度:40℃±2℃
相対湿度:75%RH±5%RH
1か月、3か月、6か月など複数の評価時点を設定し、製品品質の変化を確認します。
加速試験の結果は、製品の品質保持傾向を初期段階で予測するために使用します。
長期試験
一般的な試験条件は、以下のとおりです。
温度:25℃±2℃
相対湿度:60%RH±10%RH
長期試験は、製品の保管条件および有効期間を最終的に確定するための主要な根拠となります。
4.結果の評価と報告書の作成
試験結果について体系的な分析を行い、以下の要素を総合的に評価します。
物理化学的特性
製造工程
包装材料
保管条件
輸送・流通過程で想定される状況
これらの評価を踏まえて、化粧品安定性評価報告書を作成します。
5.参考にできるその他の試験方法
PCPC/US, Guideline for Industry: The Stability Testing of Cosmetic Products, 2011.
ANVISA/BR, Cosmetic Products Stability Guide, 2005.
CTFA & Colipa, Guidelines on Stability Testing of Cosmetic Products, 2004.
ISO, ISO/TR 18811, Cosmetics — Guidelines on the Stability Testing of Cosmetic Products, 2018.
T/SHFCA 002-2021「化粧品安定性試験指導原則」
T/GDCQMA 002-2023「化粧品安定性試験規範」
T/GDICST 001-2023「化粧品安定性試験ガイドライン」
T/SHRH 058-2024「化粧品安定性試験ガイドライン」
化粧品防腐チャレンジテスト(保存効力試験)
防腐チャレンジテスト(Preservative Efficacy Test:PET)は、製品に組み込まれた防腐システムが、微生物汚染を有効に抑制できるかを確認する試験です。
1. 標準試験菌株と菌懸濁液の調製
5種類の標準菌株
細菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌)、真菌(クロコウジカビ、カンジダ・アルビカンス)。
化粧品の製品特性や使用環境に応じて、その他の細菌または真菌を追加の試験菌株として使用することもできます。
菌懸濁液の濃度
細菌:10⁷ CFU/mL~10⁸ CFU/mL
真菌:10⁶ CFU/mL~10⁷ CFU/mL
試験菌株の培養に関する注意事項:
①試験室が追加する菌株については、上記の細菌または真菌と同様の培養温度および培養時間を参考にできます。使用する作業用菌株の培養物は、継代数が5代を超えてはなりません。
➁クロコウジカビの胞子懸濁液は、使用前に顕微鏡で観察する必要があります。胞子発芽が確認された場合は、その懸濁液全体を廃棄し、試験に使用してはなりません。
2.中和剤の有効性確認
防腐チャレンジテストを行う前に、中和剤が製品中の防腐成分を適切に中和できることを検証しなければなりません。
試験群
試験群(Nvf)、中和剤対照群(Nvn)、菌液対照群:(Nv)
判定式
以下の2つの条件を満たす場合、中和剤が有効であると判断します。
0.5 ≤ Nvn / Nv ≤ 2
(Nvf - Nf)/ Nvn ≥ 0.5
ここで、Nfは試料から最初に検出された微生物量です。
検証不合格の際
中和剤の有効性が確認できない場合は、SCDLP、Eugon LT 100、D/E中和ブロス、改良Letheenブロスなどを検討できます。また、中和剤の使用量を増やす方法も検討できます。
正式なチャレンジ試験において試料を希釈する際は、中和剤の配合比率を、有効性確認試験で使用した比率と完全に一致させなければなりません。
3. 正式な防腐チャレンジテスト
菌の接種
原則として、1種類の菌株ごとに個別に接種します。
菌液の接種量は、試験試料の体積の1%以下とします。
接種後の菌濃度
細菌:10⁵ CFU/g(mL)~10⁶ CFU/g(mL)
真菌:10⁴ CFU/g(mL)~10⁵ CFU/g(mL)
培養条件
菌を接種した試料は、25℃±1℃で培養します。
4. 菌数測定と結果判定
測定時点
菌接種後、以下の時点で試料を採取し、生存菌数(Nx)を測定します。
7日目
14日目
28日目
対数減少値
対数減少値Rxは、以下の式で算出します。
Rx=lgN₀ - lgNₓ
N₀:試験試料への初期接種菌数
Nₓ:各測定時点における試料中の生存菌数
判定基準
製品特性に応じて、判定基準Aまたは判定基準Bを選択します。
判定基準A(一般的な化粧品):一般製品を対象とする比較的厳格な基準です。細菌およびカンジダ・アルビカンスについては、7日目の時点で所定の減少要件を満たし、その後に菌数が再増加してはなりません。NI、すなわち「増加なし」とは、菌数の増加が0.5 log以下であることを意味します。クロコウジカビについては、14日目以降に菌数が増加してはならず、28日目の対数減少値が1以上であることが求められます。
判定基準B(特殊包装またはリスク管理措置を採用した製品):
判定基準Aよりも緩和された基準です。例えば、細菌およびカンジダ・アルビカンスについては、7日目の対数減少値に必須要件を設定せず、14日目および28日目に所定の基準を満たすことを求めます。真空ポンプ付き容器、逆止弁付き容器など外部微生物汚染を遮断する特殊包装を採用した製品に適用できます。
5. 参考にできるその他の試験方法
ISO 11930, Evaluation of the Antimicrobial Protection of a Cosmetic Product, 2019.
PCPC M-3, A Method for Preservation Testing of Water-Miscible Personal Care Products, 2007.
PCPC M-4, Method for Preservation Testing of Eye Area Cosmetics, 2007.
PCPC M-5, Methods for Preservation Testing of Nonwoven Substrate Personal Care Products, 2007.
PCPC M-6, A Method for Preservation Testing of Atypical Personal Care Products, 2007.
PCPC M-7, A Rapid Method for Preservation Testing of Water-Miscible Personal Care Products, 2007.
Ph. Eur. 10, 5.1.3 “Efficacy of Antimicrobial Preservation”, 10th, 2020.
USP–NF Chapter 51 “Antimicrobial Effectiveness Testing”, 2020.
化粧品と包装材料の適合性試験
包装材料適合性試験の基本的な考え方は、化粧品に直接接触する包装材料が安全でなければならないということです。
具体的には、次の3点を確認します。
包装材料から化粧品内容物へ有害物質が溶出しないこと
包装材料が化粧品中の有効成分や防腐剤を吸着しないこと
包装材料と化粧品内容物の間に、好ましくない物理的・化学的相互作用が生じないこと
1. 主な研究内容
物理的適合性
高温、低温又は常温の環境で化粧品原液と包装材料を保管し、ひび割れ、吸着、析出、浸透、液漏れ、変形、その他物理的異常の有無を確認します。
化学的適合性
高温、低温又は常温の環境に化粧品内容物及び包装材料を保管した場合の化学反応の有無を確認するとともに、化粧品内容物における変色、異臭、pH 変動、分離並びにその他の化学的変化を重点的に検査します。
生物学的適合性
生物学的適合性では、包装材料に含まれる可能性があるリスク物質が、化粧品内容物へ移行する可能性を評価します。これは、包装材料と内容物の適合性評価における中核的かつ難易度の高い項目であり、必要な試験によって安全性を確認する必要があります。
2. 第1段階:抽出試験
目的
空の包装材料から、添加剤、モノマー、分解生成物などの「抽出物」を取得し、その後の移行試験で確認すべき対象物質を特定します。
抽出溶媒の選定
pH、極性、イオン強度が化粧品内容物と類似した抽出溶媒を選定します。
強化条件
加熱温度を高くする、または加熱時間を延長することにより、包装材料中の成分を可能な限り多く抽出します。
3. 第2段階:相互作用試験
相互作用試験では、移行と吸着の両面を評価します。
移行試験
実際の化粧品を上市予定の包装材料に充填し、加速試験および長期安定性試験の条件と組み合わせて、包装材料からの溶出物の濃度を測定します。
試料の保管にあたっては、倒立、横置き、側面置きのいずれかの姿勢で設置し、化粧品内容物が容器本体、ポンプヘッド、ゴム製ガスケットなどの各部品と十分接触するよう調整します。また、使用する分析手法について、感度及び正確性の検証を実施しなければなりません。
吸着試験
必要に応じて、包装材料が化粧品中の有効成分を吸着するかどうかを確認します。
4. 包装材料別の主な確認項目
5. 結果の評価
検出された溶出物の種類と含有量を整理します。
「化粧品安全技術規範」に当該物質の限度値が規定されている場合は、規定値を満たさなければなりません。
限度値が規定されていない物質については、安全性リスク評価を実施し、想定される使用条件下で人体に有害な影響を及ぼさないことを確認する必要があります。
6. 参考にできるその他の試験方法
T/GDCA 039—2024「化粧品包装適合性評価方法」
T/FDCA 010—2023「化粧品内容物と化粧品一次包装材料の適合性試験指導原則」
T/JSQGXH 004—2025「化粧品と包装材料の適合性に関する技術要求」
T/GDCQMA 002—2024「化粧品包装材料適合性試験評価ガイドライン」
United States Pharmacopeia(USP).(2021). USP
中国国家薬典委員会(2020)「中華人民共和国薬典」2020年版第4部・通則「医薬品包装材料共通要求ガイドライン」
