化粧品におけるホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出体の規制比較(中国・EU・英国・米国・ASEAN)

化粧品におけるホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出体の規制比較(中国・EU・英国・米国・ASEAN)

2026-01-16

ホルムアルデヒド(Formaldehyde、CAS番号:50-00-0)は、国際がん研究機関(IARC)によりグループ1(ヒトに対して発がん性あり)に分類されており、さらに強い皮膚感作性を有することが知られています。そのため、現在ではホルムアルデヒドは、多くの国・地域の化粧品関連法規において使用禁止、または厳格な使用制限が課されている成分として位置づけられています。

こうした直接添加による高いリスクを回避する目的から、化学工業分野ではホルムアルデヒド放出体(Formaldehyde Releasers、略称FRs)が開発されてきました。ホルムアルデヒド放出体は、製品の中で徐々に分解することにより微量の遊離ホルムアルデヒドを持続的に放出する特性を有しており、現在では化粧品およびパーソナルケア製品において防腐剤として広く使用されています。

REACH24Hは、EU、英国、米国、ASEANおよび中国の化粧品規制におけるホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド放出体に関する要件を整理し、企業の参考情報として提供させていただきます。

中国・EU・英国・ASEANにおける規制動向

ホルムアルデヒドに関する規制

現在、EU、英国および中国では、ホルムアルデヒドは化粧品に使用できない成分として規制されています。また、ラオスを除くASEAN各国においても、ホルムアルデヒドは化粧品中の使用禁止成分として位置づけられています。

一方、ASEAN化粧品指令(ASEAN Cosmetic Directive、ACD)の最新規定によると、ラオスでは例外的に、ネイルハードナーに限り、ホルムアルデヒドの使用が認められており、最大配合濃度は2.2%とされています。ただし、使用にあたっては、製品表示に以下の注意表示を行うことが求められています。

  • ホルムアルデヒドを含有する

  • 油脂またはオイルにより甘皮を保護する(Protects cuticles with grease or oil)

ホルムアルデヒド放出体に関する規制

現在、EU、英国、ASEANおよび中国では、ホルムアルデヒド放出体に対する規制の基本的な考え方は概ね共通しています。

各国・地域では、一部のホルムアルデヒド放出体が使用可能な防腐剤として認められています。ただし、最終製品中に放出されるホルムアルデヒドの総濃度が一定の基準値を超える場合、包装には所定の警告表示を行うことが求められています。

当該警告表示に関する濃度基準および表示要件は、以下のとおりです。

ホルムアルデヒド-1.png

米国における規制動向

米国の化粧品規制は、前述の国・地域とは異なり、連邦法と州法が並立する「二重構造」を採用しています。

2022年に化粧品規制現代化法(以下「MoCRA」)が成立しました。通常、MoCRA は連邦法として一定の優先性を有しますが、各州が連邦法よりも厳格な化学物質の使用禁止や表示義務を定めることを妨げるものではありません。そのため、米国におけるホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド放出体の規制は、州ごとに差異が存在する状況となっています。

米国連邦の規制

「米国連邦規則集」第16編第1500部においては、「連邦有害物質法」に基づく関連規定が定められており、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドを1%超含有する製品は、「強い感作性物質」として分類されています。そのため、該当する製品については、警告表示の貼付が義務付けられています。

ワシントン州の規制

2025年8月28日、ワシントン州は「ワシントン州行政規則第173-339章:化粧品に関する制限規定(化粧品中のホルムアルデヒド)」(G/TBT/N/USA/2187/Add.2)を制定し、2025年9月28日より施行されました。

本規則では、意図的に添加されたホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出物質を含有する化粧品の製造・販売・流通を、ワシントン州内において禁止することが明確に規定されています。あわせて、州環境局が指定する25種類のホルムアルデヒド放出体のリストが示されており、クオタニウム-15(Quaternium-15)、DMDMヒダントイン(DMDM Hydantoin)、イミダゾリジニルウレア(Imidazolidinyl Urea)、ジアゾリジニルウレア(Diazolidinyl Urea)など、主要なFRPs(防腐目的で使用されるホルムアルデヒド放出体)が含まれています。

2027年1月1日以降、これら25種のホルムアルデヒド放出体を含有する化粧品については、製造および販売が正式に禁止されます。

カリフォルニア州の規制

2020年に制定された「カリフォルニア無毒性化粧品法(AB 2762)」では、化粧品中に使用される24種類の有害化学物質が明確に禁止されています。

この中には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、多重合ホルムアルデヒド、メチレングリコール(Methylene Glycol)およびクオタニウム-15(Quaternium-15)が含まれています。

同法に基づく当該使用禁止措置は、2025年1月1日より施行されています。

ポイント

各国におけるホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド放出体に関する最新の規制動向を踏まえると、化粧品分野における当該成分の管理は、年々厳格化の傾向を強めており、「リスク最小化」を重視する方向へと移行しつつあります。

現時点では、ラオスなどの一部例外を除き、多くの国・地域においてホルムアルデヒドは使用禁止物質として位置づけられています。一方で、ホルムアルデヒド放出体については、中国を含む複数の国・地域において、防腐剤リスト(ポジティブリスト)に引き続き収載されている成分が存在し、最終製品中のホルムアルデヒド含有量が一定の基準値を超える場合には、消費者への注意喚起を目的とした警告表示が求められています。

しかし近年、EUおよび英国では表示義務の適用となる濃度基準が引き下げられているほか、米国の一部州では、化粧品中におけるホルムアルデヒド放出体の使用を禁止する動きも見られます。

このように、各国・地域の規制は、化粧品中に存在する遊離ホルムアルデヒドのリスクをできる限り低減し、消費者の安全性を確保する方向へと収斂しつつあります。 こうした規制環境の変化は、企業における防腐システムの選択や見直しにも、間接的な影響を与えるかもしれません。

REACH24Hは、現在のところ、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド放出体に関する規制要件は国・地域によって必ずしも完全に一致していないことを踏まえ、関連市場への参入を検討する企業に対し、各国の法規制要件を総合的に確認するとともに、今後の規制動向を継続的に注視し、製品の適合性を確保することを推奨します。


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