EU化粧品規制を改正:複数の化粧品原料について禁止物質・制限物質・使用可能物質

EU化粧品規制を改正:複数の化粧品原料について禁止物質・制限物質・使用可能物質

2026-05-22

2026年4月28日、欧州委員会は規制 (EU) 2026/909を公布し、EU化粧品規制(EC) No 1223/2009の附属書II(禁止物質リスト)、附属書III(制限物質リスト)、附属書V(使用可能な防腐剤リスト)および附属書VI(使用可能な紫外線吸収剤リスト)を大幅に改正しました。

規制EU2026 909.png

今回の改正は、欧州消費者安全科学委員会(SCCS)による最新の安全性評価結果に基づくものです。遺伝毒性リスクが懸念されるリン酸トリフェニル(Triphenyl Phosphate)禁止物質リストに追加されたほか、サリチル酸ベンジル、アルミニウム化合物、シトラールなど11成分についても、使用制限が更新されました。


また、本規制では明確な経過措置が設けられています。2027年1月1日以降、関連する制限要件に適合しない化粧品はEU市場へ上市できません。さらに、2028年7月1日以降、関連要件に適合しない化粧品はEU市場での販売を停止する必要があります。なお、シトラールの特定異性体については、販売停止期限が2028年8月1日まで延長されています。

EU化粧品規制改正の主なポイント


1. 禁止物質の追加および調整


a. リン酸トリフェニルを禁止物質に追加


リン酸トリフェニル(Triphenyl Phosphate)は、これまでEU化粧品規制(EC) No 1223/2009の下で直接規制されていませんでした。欧州委員会の化粧品成分データベースでは、同成分の機能は「可塑剤(Plasticiser)」とされています。主にネイルポリッシュ、ネイルエナメル、ネイル製品などに使用され、ポリマーの硬さを弱め、伸展性を高める目的で配合されます。


SCCSが2024年7月25日に公表した科学的意見(SCCS/1664/24)によると、業界から提出された既存情報だけでは、リン酸トリフェニルの潜在的な遺伝毒性リスクを排除できないとされました。そのため、化粧品中で当該物質を使用した場合、人の健康に潜在的リスクをもたらす可能性があります。


これを受け、欧州委員会は今回の改正において、リン酸トリフェニルを附属書IIの禁止物質リストに追加しました。


1.1752Triphenyl Phosphate.png



b. 硅酸アルミニウム亜鉛銀アンモニウムを禁止物質リストから使用可能防腐剤リストへ移行


硅酸アルミニウム亜鉛銀アンモニウム(Ammonium Silver Zinc Aluminium Silicate)は、銀・亜鉛ゼオライトとも呼ばれます。同成分は、以前、CMRカテゴリー2の生殖毒性物質に分類されたことから、EU化粧品規制 (EC) No 1223/2009の附属書IIにおいて禁止物質として収載されていました。


一方で、化粧品に使用可能な防腐剤の選択肢が限られてきていることを背景に、業界から安全性ドシエが提出されました。その後、SCCSは、特定濃度で防腐剤として使用する場合、安全であると結論づけています(SCCS/1650/23)。


このため、欧州委員会は銀・亜鉛ゼオライトを附属書Vの使用可能な防腐剤リストに追加しました。これにより、最大使用濃度1%で、デオドラントスプレーおよび粉末ファンデーションに使用することが認められます。ただし、硅酸アルミニウム亜鉛銀アンモニウム中の銀含有量は2.5%を超えてはなりません。


同時に、欧州委員会は附属書II第1597項の「Silver zinc zeolite」を、「Silver zinc zeolite with the exception of silver zinc zeolite under the conditions set out in entry 61 in Annex V」へ修正しました。つまり、亜鉛銀ゼオライト(附属書V第61項に定める条件を満たす亜鉛銀ゼオライトを除く)


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2. 制限物質の改正および追加


a. 既存制限物質の使用条件を改正


規制 (EU) 2026/909は、EU化粧品規制 (EC) No 1223/2009の附属書IIIにおける第24項(水溶性亜鉛塩)、第70項(シトラール)および第75項(サリチル酸ベンジル)の制限要件を改正しました。


今回の改正では、SCCSの安全性評価結果に基づき、各成分について、製品タイプごとの使用限度値がより詳細に設定されています。


附属書III第24項:水溶性亜鉛塩(Water-soluble zinc salts)


水溶性亜鉛塩については、従来、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、グルタミン酸亜鉛について、すべての化粧品における最大使用濃度が亜鉛換算で1%とされていました。


今回の改正では、対象となる塩類の範囲が拡大され、クエン酸亜鉛および硫酸亜鉛も含まれることになりました。


SCCSが2023年10月に公表した科学的意見(SCCS/1657/23)によると、亜鉛塩は、1歳以上の人を対象とした歯磨き剤では1%まで安全とされています。一方、6か月以上1歳未満の乳幼児向け歯磨き剤では、濃度を0.72%まで引き下げる必要があります。また、6歳以上の人を対象とした洗口液では、安全限度は0.1%とされています。


欧州委員会は、上記水準を超える場合、潜在的な健康リスクがあると判断しました。そのため、SCCSの勧告に基づき、製品カテゴリーおよび年齢層ごとに、より細分化された限度値が設定されました。


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附属書III第70項・第75項:シトラール(Citral)およびサリチル酸ベンジル(Benzyl Salicylate)


シトラール(Citral)およびサリチル酸ベンジル(Benzyl Salicylate)は、これまで香料アレルゲンとして、EU化粧品規制 (EC) No 1223/2009に基づくラベル表示要件の対象となっていました。具体的には、洗い流さない製品で濃度が0.001%を超える場合、または洗い流す製品で濃度が0.01%を超える場合に、ラベル表示が必要とされていました。


しかし、シトラールについては感作性の可能性が、サリチル酸ベンジルについては潜在的な内分泌かく乱作用が懸念されています。そのため、SCCSは業界から提出されたデータに基づき、シトラールについては2024年に科学的意見(SCCS/1666/24)を、サリチル酸ベンジルについては2023年に科学的意見(SCCS/1656/23)を公表しました。


SCCSの結論を踏まえ、欧州委員会は、人の健康への潜在的リスクを回避するため、各製品カテゴリーに対して具体的な濃度制限を設定する必要があると判断しました。これにより、シトラールおよびサリチル酸ベンジルは、ラベル表示対象にとどまらず、正式に濃度制限の対象として管理されることになります。


4.70、75Citral、Benzyl Salicylate.png


b. 新たな制限物質を追加


規制 (EU) 2026/909は、EU化粧品規制 (EC) No 1223/2009の附属書IIIにおける既存条項を改正するだけでなく、6項目の制限物質を新たに追加しました。これらは附属書III第379項から第384項に収載されるもので、アルミニウムを含む成分、アセチル化ベチバーオイル、4種類の染毛成分が含まれます。


これらの追加は、SCCSの科学的評価意見に基づくものです。目的は、アルミニウムを含む成分による全身曝露リスク、アセチル化ベチバーオイルの感作性リスク、および4種類の染毛成分に関する安全性上の課題に対応することです。


附属書III第379項:アルミニウムを含む成分(Aluminium-containing ingredients)


アルミニウムおよびその化合物は、化粧品において多様な機能を有します。従来、これらはEU化粧品規制 (EC) No 1223/2009の附属書III、IVおよびVIにおける複数の項目に分散して管理されていました。


化粧品の使用により、人のアルミニウム全身曝露量が大幅に増加する可能性が懸念されたことから、欧州委員会はSCCSに包括的な評価を求めました。SCCSは2024年3月に公表した意見(SCCS/1662/23)において、特定の使用条件下であれば、アルミニウムおよびアルミニウムを含む成分をスプレー型および非スプレー型化粧品に使用することは安全であると判断しました。


これを受け、欧州委員会は附属書III第379項において、製品カテゴリーごとに具体的な制限を設定しました。なお、規制の重複を避けるため、第379項は、既存条項により管理されている成分を除くすべてのアルミニウムを含む成分に適用されます。除外される既存条項には、附属書III第34、50、189、190、192項、附属書IV第117、118、119、121、131、150項、附属書V第61項、附属書VI第27a項が含まれます。


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附属書III第380項:アセチル化ベチバーオイル(Acetylated Vetiver Oil)


アセチル化ベチバーオイル(Acetylated Vetiver Oil, AVO)は、主に香料として使用される成分であり、これまでEU化粧品規制 (EC) No 1223/2009の下で直接規制されていませんでした。


香料として使用される際の感作性リスクを考慮し、欧州委員会はSCCSに安全性評価を依頼しました。


SCCSは2019年に科学的意見(SCCS/1599/18)を、さらに2024年に科学的意見(SCCS/1663/24)を公表し、特定濃度で、かつ1%のα-トコフェロールを安定剤として併用する場合、アセチル化ベチバーオイルは洗い流さない製品、洗い流す製品およびスプレー製品で安全に使用できると判断しました。


これを踏まえ、欧州委員会はアセチル化ベチバーオイルを附属書IIIの制限物質として追加しました。


6.380Acetylated Vetiver Oil.png



附属書III第381〜384項:染毛成分


今回、新たに附属書IIIに追加された4種類の染毛成分は以下の通りです。

  • HC Blue No. 18

  • Hydroxypropyl-p-phenylenediamineおよびHydroxypropyl-p-phenylenediamine 2HCl

  • HC Yellow No. 16

  • HC Red No. 18


これら4種類の染毛成分は、これまで規制 (EC) No 1223/2009において直接規制されていませんでした。

SCCSは、複数の科学的意見(SCCS/1653/23、SCCS/1659/23、SCCS/1670/24、SCCS/1673/24)において、これら4種類の染毛成分の安全な使用条件を明確にしています。


SCCSの評価結論に基づき、欧州委員会は、これらの物質が染毛製品中で所定の濃度を超えて使用される場合、人の健康に潜在的リスクをもたらす可能性があると判断しました。そのため、これら4種類の染毛成分は附属書IIIの制限物質リストに追加されました。


7.381〜384染毛成分.png



3. 紫外線吸収剤に関する制限要件の改正


DHHBに含まれる不純物の限度値を追加


ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Diethylamino hydroxybenzoyl hexyl benzoate,DHHB)は、EU化粧品規制 (EC) No 1223/2009の附属書VIにおける使用可能な紫外線吸収剤リストに収載されています(参照番号28)。同成分は、紫外線吸収剤として化粧品に使用することが認められています。


今回の改正では、DHHB中に混入する可能性のある不純物であるフタル酸ジ-n-ヘキシル(DnHexP)について、残留限度値が新たに追加されました。


SCCSは2025年2月の科学的助言(SCCS/1678/25)において、不可避的な微量不純物として、260 ppmのDnHexPは安全と考えられる一方、理想的な目標値として1 ppmを提案しました。


欧州委員会は、技術的に1 ppmまで低減する場合、中小企業のコストが大幅に増加し、日焼け止め製品の価格上昇につながる可能性があることも考慮しました。そのため、健康リスクと経済的影響のバランスを踏まえ、最終的にDnHexPの限度値を10 ppmに設定しました。


本改正により、当該不純物の残留限度値がDHHBの制限要件に追加されました。


8.DHHB.png


REACH24Hからの注意喚起


規制 (EU) 2026/909による改正に対応するため、REACH24Hは、化粧品企業に対し、速やかに処方コンプライアンスレビューを開始することを推奨します。


特に、禁止物質に追加されたリン酸トリフェニル、ならびにアルミニウムを含む成分、シトラール、水溶性亜鉛塩、サリチル酸ベンジルなどの制限物質について、最新の限度値および適用条件を確認する必要があります。


また、経過措置期間が終了する前に、対象製品の処方変更、代替原料の検討、製品ラベルの更新を完了させることが必要です。

規制に関する詳細については、お問い合わせください。
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