規制動向
台湾当局はPFASの管理案を見直し、関注化学物質として管理を検討する対象を269物質から182物質へ調整する方向を示しました。別途14物質については、国際条約の動向を踏まえ、有害化学物質としての管理が検討されています。
近年、ストックホルム条約から欧州連合(EU)におけるPFAS制限提案に至るまで、PFASに対する国際的な規制は継続的に進展しています。台湾でも、既存のPFAS管理を基礎として、管理対象の拡大に向けた検討が進められています。
2025年8月、台湾の「環境部」は、「列管全氟及多氟烷基物质与其运作管理事项」(全フッ素・ポリフルオロアルキル物質およびその取扱管理に関する事項)草案を予告し、269物質のPFASを関注化学物質として追加する方針を示しました。しかし、この草案は当初の計画どおりには施行されていません。当時の草案の概要は、REACH24Hの台湾PFAS 269物質の規制草案に関する解説もご覧ください。
2026年、台湾の「環境部化学物質管理署」は改めて草案に関する協議会を開催し、従来案の調整方針を示しました。関注化学物質として管理を検討するPFASは182物質に変更され、別途14物質のPFASについては、国際条約の進展を踏まえて有害化学物質として管理することが検討されています。73物質については、引き続き評価が行われます。
協議会で示された計画によれば、182物質を関注化学物質として管理するための関連草案は、2027年1月1日の施行が予定されており、既存の取扱事業者には経過措置が設けられる見込みです。ただし、最終的な対象リスト、管理濃度、事業者の義務および施行時期は、所管当局による正式な公告に従う必要があります。
台湾ではPFAS規制がすでに始まっている
PFASは、台湾において新たに規制対象となった物質ではありません。
今回のPFAS特別草案に先立ち、PFOS、PFOA、PFHxSなど一部のPFASは、すでに有害化学物質の管理体系に段階的に組み込まれています。台湾の有害化学物質リスト改正については、関連する規制動向の記事もあわせてご確認ください。
2010年および2018年、当時の「環境保護署」(現・環境部)は、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタンスルホン酸リチウム塩(PFOS-Li)、ペルフルオロオクタンスルホニルフルオリド(PFOSF)およびペルフルオロオクタン酸(PFOA)を有害化学物質として公告し、法令に基づく管理を行いました。
2024年には、環境部が147種のPFHxSおよびその塩類・関連化合物を第一類有害化学物質に指定しました。さらに2025年5月13日、環境部は「列管毒性化學物質及其運作管理事項」を改正し、PFOS、PFOAおよびそれらの塩類・関連化合物を含む計357種のPFASを有害化学物質の管理対象に追加しました。
なぜ「269物質のPFAS」が登場したのか
国際的に知られているPFASは、数百物質にとどまりません。現在のOECD定義に基づくと、既知のPFASは12,000物質を超えるとされています。PFASは、構造、用途、環境中での挙動および潜在的なリスクがそれぞれ異なるため、すでに高いリスクが確認されているPFOS、PFOA、PFHxSなどだけを管理しても、実際の使用場面をすべてカバーすることはできません。
台湾におけるPFASの用途を把握し、予防的な管理を進める観点から、台湾当局は現行のPFAS取扱状況を調査しました。そのうえで、2025年8月5日に同草案を予告し、269物質のPFASを関注化学物質として追加し、物質の形態や取扱リスクに応じた管理措置を設定する方針を示しました。
なぜ269物質から182物質へ調整されたのか
2025年の草案公表後、所管当局は産業界などの関係者との協議を継続しました。
2026年の草案協議会では、関注化学物質として管理を検討するPFASを182物質に調整し、14物質のPFASについてはストックホルム条約の関連動向を参照して有害化学物質として管理する方針が示されました。
また、一部のフッ素ポリマー、PFASガスおよびOECD定義に該当しない物質など、計73物質については、冷媒の代替、産業への影響、物質定義などを考慮し、引き続き評価される予定です。
今回の調整のポイント
今回の調整は単純な削減ではなく、国際条約、物質特性、産業用途および管理の実行可能性を踏まえ、物質を異なる管理区分へ再整理する動きと理解するのが適切です。
草案ではどのような管理が検討されているのか
現在公開されている協議資料によれば、調整案は引き続き段階的な管理の考え方を採用していますが、対象範囲と具体的な条件が変更されています。附表一の物質については、管理濃度が従来案の0.1%から1%へ調整される予定です。ポリマーについては、管理濃度および30%を基準として区分管理する案が示されています。PFASガスなど一部の物質は、引き続き評価対象となります。
現在、関注化学物質としての管理が検討されているPFASは、主に次の2区分に分けられます。
第一類:附表一に記載される物質
ペルフルオロアルキル酸、その前駆体およびその他のペルフルオロ・ポリフルオロアルキル化合物。
管理濃度は1%に調整される予定です。製造、輸入、販売、使用または保管において、関連物質の濃度が1%以上となる場合、許可書類の手続き、月次記録、四半期報告、容器・包装への表示および安全データシート(SDS)の備付けなどが求められる見込みです。
第二類:附表二に記載される物質
PFASポリマー。管理濃度も1%に調整される予定で、濃度と取扱行為に応じて段階的に管理されます。
・1%以上30%未満の場合、製造または輸入時に、容器または外装の見やすい場所へ「全氟及多氟烷基物质」(ペルフルオロおよびポリフルオロアルキル物質、PFAS)と表示することが求められます。
・30%以上の場合、許可書類、取扱記録および報告、表示、SDSなどに関する要件が適用される見込みです。
2025年の予告草案では、30物質のPFASガスが第三類として個別に記載されていました。しかし今回の協議では、現時点で確定的な第三類の管理対象として指定することは適切でないとの方向性が示されています。14物質のPFASは有害化学物質として管理することが検討され、上記2区分には含まれません。
適用要件は一律ではありません
つまり、PFASを1%超含有していれば、すべての企業に同じ義務が課されるという単純な制度ではありません。
物質区分、濃度および取扱行為によって、適用される管理要件は異なる可能性があります。上記は協議段階の草案内容であり、最終要件は正式な公告に従う必要があります。
協議版では、新たな制度は2027年1月1日に施行される予定です。既存の取扱事業者については同日から取扱記録を作成し、規定に基づき報告することが検討されています。許可書類、表示およびSDSなどについては、2029年1月1日までに対応を完了する計画が示されています。ただし、これらの期限も正式な公告によって確定します。
特に確認が必要な企業
今回の変更は、電子・電気、半導体、化学、材料、フッ素化学および関連サプライチェーンに関わる企業にとって、継続的に確認すべき動向です。まずは、自社が取り扱う物質と取扱状況を棚卸しすることが重要です。影響の有無を判断する際は、「製品にPFASが含まれているか」だけでなく、次の点も確認する必要があります。
・対象となるPFASはどの物質か。正式な公告リストに含まれているか。
・原料、混合物、ポリマー、成形品または商品に該当するか。
・企業が行うのは製造、輸入、販売、使用または保管のいずれか。
・関連製品が他の所管法令による管理も受けているか。
これらの要素によって、最終的に適用される義務は変わる可能性があります。台湾でPFASを含む原料、製品または中間体を取り扱う企業は、正式公告の内容を確認するとともに、対象物質、濃度、取扱行為および既存の許認可・報告対応を整理しておくことが望まれます。台湾の化学物質登録制度については、REACH24Hの台湾化学物質登録サービスの案内もご参照ください。
