
現在、同規則案はパブリックコメントの募集期間中であり、意見提出期限は2026年8月9日です。現在のところ、正式採択日・施行日は未定となっています。
背景および概要
世界的に化学品貿易が拡大する現在、統一された基準で危険有害性情報を表示することは、人の健康・環境を守り、技術的貿易障壁を緩和する国際的な共通の考え方となっています。パナマは、本技術規則を通じて国連GHSを導入し、標準化された化学品の分類および危険有害性情報伝達制度を構築することを目指しています。
国連GHSを参照
規則案では、国連の「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」第7改訂版を採用することが明記されています。
適用範囲
本規則案はパナマ国内で化学品(単体・混合物及びその溶液)の製造、輸入、保管、輸送、販売、使用、消費を行うすべての官民の個人・法人に適用されます。
適用除外
輸送関連適用除外:海上輸送、航空輸送および鉄道輸送における危険物には適用されません。これらの輸送段階については、国連危険物輸送勧告および関連する国際輸送規則が適用されます。
最終消費製品適用除外:成形品、医薬品および医薬製品(人用・動物用)、食品添加物、化粧品ならびに食品中の農薬残留物は対象外です。
特定の物質に関する適用除外:生物材料、放射性物質および有害廃棄物は対象外です。
主なコンプライアンス要件
規則案によると、パナマ市場で化学品に関連する事業を行う企業は、GHS分類、ラベル、安全データシート(SDS)およびサプライチェーン上の責任に関する要件を遵守する必要があります。
1.GHSに関する主要な技術要件
GHS分類
適用する版:国連GHS第7改訂版の基準および技術仕様に従い、化学品の物理化学的危険性、健康有害性および環境有害性を正確に分類する必要があります。
技術資料の保存:企業は、分類結果の根拠となる技術資料を保存し、管轄当局の照会に提示できるようにしなければなりません。
GHSラベル
言語要件:ラベルに記載するすべての情報は、スペイン語で表示する必要があります。
ラベル要素:ラベルには、GHSで規定される標準的な要素を記載しなければなりません。化学品を別の容器に移し替える場合、新しい容器にも、少なくとも製品特定名・絵表示・注意喚起語・危険有害性情報・予防措置を表示する必要があります。
表示制度の移行:化学品のラベルについては、従来使用されてきたNFPA規格の色付き菱形の表示を、段階的にGHSの危険有害性分類・表示制度へ移行することが求められます。ただし、固定施設について、パナマの他の法令によりNFPA 704の補助表示が要求されている場合、GHSラベルをNFPA 704表示の代わりに使用することはできません。
安全データシート(SDS)
言語要件:スペイン語のSDSを提供する必要があります。
構成:SDSは、国連GHS第7改訂版の第1.5章および附属書4に従い、16項目で構成しなければなりません。
更新および伝達:供給者は、顧客に最新版のSDSを提供する必要があります。また、雇用主は、職場において最新版のSDSを紙媒体または電子媒体で常時閲覧できるようにしなければなりません。
2.サプライチェーン関係者の責任と義務
規則案では、サプライチェーンの各段階に関与する事業者および労働者について、次の義務が定められています。
製造者および輸入者
製造者および輸入者は、化学品の危険有害性分類を実施する責任を負います。また、GHS要件に適合した最新のスペイン語ラベルおよびSDSを作成・提供するとともに、分類を裏付ける技術情報を適切に保存し、所管当局による確認に備える必要があります。
販売業者・流通事業者
販売業者は、供給者に対し、GHS要件に適合したスペイン語のラベルおよびSDSの提供を求める必要があります。さらに、川下の顧客に最新版のSDSを提供しなければなりません。製造者または輸入者から提供された危険有害性情報を、勝手に改変することは禁止されています。
雇用主
雇用主は、職場で使用されるすべての化学品にGHSラベルが貼付され、SDSが備えられていることを確認しなければなりません。
また、次の対応が求められます。
従業員に対し、GHSラベルおよびSDSの読み方に関する教育・訓練を実施すること
小分け容器に適切なラベルを表示すること
SDSの情報に基づき、従業員に適切な個人用防護具(PPE)を提供すること
労働者
労働者は、雇用主が実施する化学品安全教育に参加しなければなりません。
ラベルまたはSDSがない場合は、速やかに報告し、必要な情報が確認できるまで当該化学品を取り扱わないことが求められます。また、SDSの指示に従い、個人用防護具を適切に使用する必要があります。
3.パナマの所管当局と監督機能
規則案では、複数の行政機関が分野ごとにGHSの実施状況を確認し、市場監視を行う体制が示されています。
農業分野
パナマ農牧開発省(MIDA)が、農業用化学品のラベルおよびSDSを検査します。
輸送分野
パナマ共和国消防隊(BCBRP)、陸運交通局(ATTT)および国家税関庁(ANA)が、物流チェーンにおける危険有害性情報の表示・伝達が適切に行われているかを監督します。
職場
労働開発省(MITRADEL)、保健省(MINSA)、環境省(MiAMBIENTE)および社会保障基金(CSS)が、化学品の分類結果ならびに個人用防護具がSDSの記載内容と一致しているかを確認します。
消費者向け製品
消費者保護・競争防衛庁(ACODECO)、保健省(MINSA)および農牧開発省(MIDA)が、一般消費者向け化学品のラベルが明確に表示され、GHS基準に適合しているかを確認します。
企業への影響
本規則が施行された場合、パナマの化学品規制制度は大きく見直されることになります。パナマ向けに化学品を輸出する海外企業にとっては、旧版のGHSに基づく分類や、スペイン語要件を満たしていないラベル・SDSが、全面的なコンプライアンス審査の対象となる可能性があります。
規則案では、企業に対して次の対応を義務付ける内容が示されています。
スペイン語によるラベルおよびSDSの作成
製品ラベルにおける従来のNFPA菱形表示からGHS表示への段階的な移行
そのため、企業は既存の包装表示、ラベル原稿および文書管理体制を全面的に見直す必要があります。
また、コンプライアンス審査が税関、労働者安全および消費者保護など複数の分野に及ぶことから、違反に伴う事業リスクも高まると考えられます。新たな要件を満たしていない場合、通関時に貨物が差し止められるほか、パナマ国内輸入業者や川下の顧客に受け入れ拒否・返品されるリスクが生じます。
REACH24Hからの対応策
パナマにおけるGHS規則の導入に備え、REACH24Hは、化学品の製造企業および輸出関連企業に対し、次の対応を推奨します。
製品情報の確認とスペイン語対応:現在パナマ向けに輸出している製品の危険有害性分類の根拠を確認し、国連GHS第7改訂版に適合しているかを評価する必要があります。また、ラベルおよびSDSのスペイン語翻訳を早期に開始し、ローカライズおよび内容確認を行うことが重要です。
サプライチェーンとの連携および技術資料の整備:パナマ国内の輸入者および販売業者と緊密に連携し、最新版のSDSがサプライチェーンの川下まで確実に提供される体制を整える必要があります。同時に、GHS分類の根拠となる毒性学、生態毒性学その他の基礎技術データを整理・保存し、当局による検査に対応できるようにします。
不適合表示の廃止:製品の流通包装については、NFPA 704表示が現地の固定施設に関する法令で別途要求される場合を除き、従来のNFPA表示を段階的に廃止する計画を策定する必要があります。
パナマが国連GHS第7改訂版を全面的に導入することは、同国の化学品安全管理の高度化と国際基準への整合に向けた重要な節目となります。
規則案の移行措置によると、政府機関には制度および執行体制を整備するための2年間の移行期間が設けられます。一方、製造者、輸入者および販売業者などの企業には、規則の正式な施行日から3年間の移行期間が与えられる予定です。
ただし、3年間の移行期間が設けられているとしても、化学品の再分類、スペイン語による適合文書の作成、ラベル・包装デザインの変更および印刷版の更新には、相応の準備期間が必要です。そのため、REACH24Hは、パナマとの取引に関係する企業に対し、早い段階から対応策を進めることを推奨します。
また、企業はパナマGHSへの対応を前倒しで進め、年度安全管理・サプライチェーン管理計画に組み込む必要があります。事前にリソースを調整・手配することで、今後のパナマ市場への円滑な進出を実現できます。
