GRAS物質であっても、なぜ改めてGRAS認証を申請しなければ?| 米国GRAS制度の徹底解説

GRAS物質であっても、なぜ改めてGRAS認証を申請しなければ?| 米国GRAS制度の徹底解説

2026-01-09

米国FDA‐GRAS認証とは

GRAS(Generally Recognized As Safe,一般に安全とみなされている)とは、米国食品医薬品局(FDA)が食品添加物の安全性を判断するための制度の一つです。

定義上、物質がGRASに該当することは、有資格の専門家の間で「想定される使用条件のもとで安全である」と一般に認められていることを意味します。

しかし、実際の食品工業や規制実務の現場では、一見すると矛盾しているように見える現象があります。すなわち、すでに広く認められている物質、あるいは過去にGRAS認証を受けた物質であっても、新たな用途や技術的背景のもとでは、改めてGRAS申請が求められる場合があるという点です。

このような「繰り返しのように見える」手続きは、ただ監督官庁による煩雑な要求ではありません。むしろ、公衆の食品安全を確保し、科学的知見の進展や市場環境の変化に適切に対応するために設けられている仕組みと考えられます。その理由は、①想定される使用目的の変化、②科学的根拠の更新、③規制対応の透明性という三点が挙げられます。

 想定される使用目的の変化はキーポイント

GRAS認証は、物質そのものに対する無条件な安全許可を意味するものではなく、あくまで特定の使用水準、特定の想定用途、そして特定の対象とする暴露集団において安全であると判断されることを指します。そのため、以下のような変更がある場合には、当該物質についてGRASの再認証が求められます。

使用量が高くなる場合

過去にGRAS認証を受けた物質であっても、現在では新しい食品に使用され、かつ使用量が従来の想定範囲を大きく上回る場合があります。そのような場合には、総暴露量、体内での代謝経路、潜在的な毒性学的影響が、従来と根本的に異なるものとなる可能性があります。

用途が変わる場合

ある物質が、これまでとは異なる食品カテゴリーで使用されたり、新しい機能的な役割を担うようになった場合がこれに該当します。

たとえば、従来は調味目的で使用されていた物質が、防腐目的や甘味付けのために用いられるようになるケースがあります。また、これまで香料や加工助剤としてのみ扱われていた物質を、食物繊維、甘味料、保水剤などの機能性を持つ成分として使用したいと企業が考える場合もあります。

このような場合には、新たな用途に応じたGRAS評価を改めて行う必要があります。なぜなら、用途が変われば必要とされる使用量も変わり、そして消費者の摂取状況や総摂取量に影響を及ぼす可能性があるためです。

対象とする暴露集団が変わる場合

ある物質が、これまで想定されていなかった感受性の高い人の集団に暴露される可能性があります。たとえば、乳幼児向け食品に使用される場合がこれに該当します。

科学的根拠の更新:毒性学と製造技術を例に

科学技術の進歩、とりわけ毒性学、分子生物学、分析化学といった分野の発展により、物質の安全性に対する理解は継続的に深まっています。

毒性学の進歩

過去にGRAS認証を受けた物質の多くは、20世紀中頃、あるいはそれ以前に蓄積された「一般的な使用経験」や、限られた動物試験データに基づいて安全性が判断されてきました。しかし現在では、現代の毒性学の進展により、遺伝毒性、内分泌かく乱作用、慢性的な低用量暴露などによるリスクをより精密に評価することが可能となっています。

そのため、新たな体外試験や疫学データから安全性に関する懸念が示された場合には、従来からGRASとされてきた物質であっても、追加的な検討や研究が求められることがあります。こうした懸念を解消し、安全性が引き続き確保されていることを示すために、新たなGRAS資料を提出する必要があります。

製造技術の変化

GRAS物質の製造由来、抽出方法、または精製工程に大きな変更が生じた場合には、注意が必要です。たとえば、従来は天然由来として抽出されていた物質が、バイオエンジニアリングによる発酵生産へと切り替えられるケースが挙げられます。このような変更がある場合、新たな不純物、残留物、あるいは異性体が製品中に含まれる可能性があります。

その結果、従来の製造方法を前提としたGRAS認証は、新しい製造技術で得られた製品には必ずしも適用できなくなります。新製品の安全性および純度を示すために、改めてGRAS認証を取得する必要があります。

規制対応の透明性と市場コンプライアンス

米国GRAS制度には、主に自己認証GRASFDA  GRASという二つのルートがあります。具体的には、企業は有資格の専門家グループによるGRAS評価資料を自ら作成する方法と、GRAS評価資料を作成してFDAに通知し、FDAから「該当成分はGRASである」という正式な返答を得る方法のいずれかを選択しています。

このようなGRAS対応は、企業が国際市場へ円滑に参入するための後押しとなると同時に、各国当局による規制審査に対応するうえでの重要な資料となります。そして、製品の市場における信頼性を大きく高めることにつながり、取引先や消費者からの信頼を得やすくなるという点も、重要なメリットの一つです。

まとめ

要するに、米国GRAS認証は一度取得すれば永久に有効となる「フリーパス」ではありません。GRAS認証は、科学的根拠や想定される使用条件に基づいて判断されるものであり、状況に応じて見直される必要があります。そのため企業は、新たな用途、高くなる用量での使用、あるいは過去の認定条件と異なるといった状況がある場合には、注意を払う必要があります。

新たなGRAS申請の一つ一つは、食品イノベーションと消費者安全との間でバランスを取り直すプロセスであり、変化し続ける食品工業の環境の中で、公衆の健康と安全が確実に守られるようにするための重要な取り組みと言えます。


規制に関する詳細については、お問い合わせください。
お問い合わせフォーム