米国では、ヒト用の食品原料も動物用の飼料原料も、その安全性は連邦食品医薬品化粧品法のGRAS(Generally Recognized As Safe,一般に安全とみなされている)規定により評価されます。
米国GRASとは、「食品添加物」に対する定義上の例外にあたり、当該成分が想定される使用条件下で安全であることについて、適格な専門家の間で一般的な合意が得られている場合、長期間にわたるFDAの事前承認を経ることなく、市場投入を可能とする制度です。
両者はいずれもGRASの基本原則に基づいて審査されますが、摂取する対象や摂取後の影響経路が異なるため、飼料原料は食品原料より複雑な評価が求められます。
REACH24Hは、米国GRAS認証における食品原料と飼育原料のそれぞれの評価要件を比較し、共通点と異なる点を、この記事では整理させていただきます。
食品原料GRASと飼料原料GRASの共通点
法的根拠および定義の一致
適用法規:いずれも連邦食品医薬品化粧品法の201条及び409条の規定に準拠。
安全性評価の基準:いずれも所期の条件下で使用する限り、安全であることが十分示されることが必要。
食品添加物の定義から除外:いずれもFDAによる食品添加物の定義外のGRAS物質であり、FDAによる事前審査を受けることなく市場に投入することが可能。
類似の科学的証拠:米国GRAS認証に必要な量的・質的科学的確証の水準は、食品添加物承認申請に求められるのと同等です。そのため、用いられる証拠はいずれも公表され、かつ科学界で広く受け入れられている必要があります。
米国GRAS認証の申請方法が同じ
自己認証GRAS(Self-affirmed GRAS):企業自体から資格を持つ専門家グループを集め、自らGRAS評価資料を作成します。
FDA‐GRAS(FDA notified GRAS):GRAS評価資料を作成した上でFDAに通知します。ヒト用の食品原料も動物用の飼料原料も、FDAの専門家による評価を受け、「該当成分はGRASである」という正式な返答を得る必要があります。
食品原料GRASと飼料原料GRASの相違点

摂取する対象や摂取後の影響経路
ヒト用食品GRAS:当該成分をヒトが直接的に摂取した場合の安全性評価が必要。
動物用飼料GRAS:
非食用動物の場合:ペット(犬や猫など)を含む非食用動物に対する安全性を確保することが必要。
食用動物の場合(飼料原料GRASにおける最も特徴的なところ):当該成分を直接的に摂取した動物自身の安全性を確保するだけでなく、その動物に由来する食品(肉、乳、卵など)をヒトが摂取した際の安全性、すなわちヒト用食品の安全性についても評価することも必要。
栄養と有効性に対する要件
米国GRASは主として安全性に焦点を当てた制度ですが、飼料原料GRASは栄養と有効性がより重視される傾向があります。
栄養:GRAS栄養成分と認められる成分において、栄養と効果効能を証明できるデータの提出が求められます。すなわち、該当成分が対象となる動物の栄養要求を効果的に満たす上に、成長遅延やその他の生理的異常を引き起こさないことを示す証拠の提出を要求されます。
有効性:当該成分が特定の機能(例えば、乳化剤や安定剤としての機能)を目的として使用される場合には、その機能が有効であることを示す根拠も米国GRASの結論に必要とされます。
毒理学と残留量評価
飼料原料は、動物を介してヒトの食物連鎖に取り込まれる可能性があります。そのため、食用動物用飼料GRASでは、毒理学試験と残留量に関する要件がより複雑です。
食用動物へ外挿する際の種差問題:試験動物が標的動物でない場合(例えばラットなどをを用いる)、その毒性試験データから食用動物へ外挿できるかどうかについて、十分な科学的根拠をもって説明する必要があります。
残留量に関する評価:食用動物用飼料の場合、飼料成分とその代謝物が肉・乳・卵における残留量の安全性を評価するため、ヒトに対する安全基準を設定するデータが必要とされます。
まとめ
要するに、米国における食品原料GRASと飼料原料GRASでは、法的枠組みや申請方法が共通しています。一方、飼料原料GRASでは、動物からヒトに至るまで複数な標的動物や複雑な影響経路(食物連鎖)があるため、暴露評価や有効性要件、残留物分析、種間の毒性学的外挿といった点において、ヒト用食品原料GRASに比べてより複雑で専門的なデータが必要されます。
このような背景から、飼料原料に関するGRAS手続きでは、獣医学や動物栄養学に関するより深い専門的知見が不可欠となります。
