EU EFSA、NMNの新規食品原料としての安全性を確認

EU EFSA、NMNの新規食品原料としての安全性を確認

2026-05-29

2026年5月11日、欧州食品安全機関(EFSA)は、β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(β-NMN)を新規食品原料(Novel Food)として使用することに関する安全性評価結果を正式に公表しました。今回の公表は、β-NMNのEU市場参入に向けた重要なマイルストーンであり、β-NMNがEUの新規食品原料として承認されるまで、いよいよ最終段階に近づいたことを意味します。


本申請は、中国のある医薬会社(上海)により2023年に提出されました。その後、EFSAによる安全性評価は2年以上にわたり行われ、最終的にEFSAは、特定の使用範囲および対象者において、β-NMNはニコチンアミドの生物学的に利用可能な供給源として安全性を確認できると結論付けました。


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NMNとは


NMN(Nicotinamide Mononucleotide)、正式名称ニコチンアミドモノヌクレオチドは、人体に自然に存在する物質です。ビタミンB3(ニコチンアミド)の誘導体であり、NAD+を合成するための重要な前駆体でもあります。


NAD+は、酸化型補酵素Ⅰとも呼ばれ、人体の細胞内に存在する重要な補酵素です。細胞のエネルギー代謝、DNA修復、遺伝子発現の調節、ミトコンドリア機能などにおいて重要な役割を果たしています。一方で、加齢に伴い、体内のNAD+レベルは大きく低下するとされており、老化、疲労、代謝機能の低下などとの関連が注目されています。


NAD+は分子量が大きいため、経口摂取によって直接吸収されにくいとされています。これに対し、NMNはNAD+の重要な前駆体であり、体内でNAD+を合成するための原料として利用されます。そのため、体内のNAD+を補うための有望なアプローチとして注目されています。抗老化や健康寿命延伸に関する潜在的価値が期待されていることから、NMNは世界のライフサイエンス分野で高い関心を集める原料となっています。


多くの科学研究では、動物試験において、NMNの補給が高齢マウスの生理指標を改善する可能性が示されています。例えば、運動持久力の向上、インスリン感受性の改善、健康寿命の延伸などが報告されています。現在、ヒト臨床試験も段階的に進められており、初期結果では安全性が比較的高く、NAD+レベルを高める可能性が示されています。ただし、長期的な抗老化効果については、今後さらに大規模な研究による検証が必要です。

世界各国におけるNMNの食品安全規制


現在、NMNに対する安全性評価および規制方針は国・地域によって大きく異なり、世界的に統一された規制基準はまだ形成されていません。一部の国では、NMNをサプリメントまたは機能性食品成分として使用する道が徐々に開かれています。一方で、慎重な姿勢を維持し、厳格な審査または制限の下に置いている地域もあります。


1. 米国


米国では、NMNはこれまで医薬品調査との関係をめぐり、サプリメント成分としての扱いについて複数回の扱いの変更が行われてきました。その後、2025年末に正式に新規栄養成分(New Dietary Ingredient, NDI)として再承認され、サプリメント成分として販売できることが明確に認められました。


  • 2022年末から2023年にかけて、米国FDAは、NMNがある製薬企業により臨床試験用医薬品として調査申請されていることを確認しました。米国の「栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act, DSHEA)」におけるサプリメントの定義では、ある成分が新薬としての調査承認を受け、かつ多数の臨床研究が公表されている場合、サプリメントの範囲から除外される可能性があります。この方針の影響を受け、FDAはNMNをサプリメントカテゴリーから外し、米国Amazonなどの主要ECプラットフォームでは関連製品が一斉に販売停止となりました。これにより、NMN業界は一時的に大きな停滞期を迎えました。

  • 2023年3月、米国の業界団体はFDAに対して市民請願を提出し、NMNのサプリメントとしての地位を再検討するよう求めました。その中で、NMNは2017年にはすでに米国市場でサプリメントとして販売されており、医薬品の臨床調査承認よりも早い時期に市場で使用されていたことを示す証拠が提出されました。

  • 2025年9月、FDAは市民請願に対して正式に回答し、NMNはサプリメントの範囲から除外されないと明確にしました。これにより、NMNは新規栄養成分としてNDIN届出を行うことが可能となりました。申請企業が関連届出を適法に完了し、75日間の審査待機期間を経た後、米国市場で合法的に流通させることができます。


2. 中国


中国では、NMNは、過去に新規食品添加物として申請されましたが、国家衛生健康委員会により行政許可を与えない旨の決定が下されました。


現時点では、NMNを中国国内で食品分野に使用することはできません。中国国内の消費者は、越境EC小売輸入ルートを通じて関連製品を購入することが可能です。


3. EU


EUでは現在、6社がNovel FoodルートによりNMNの申請を行っており、そのうち有効に進行している申請は3件です。


中国のある医薬会社(上海)が申請した化学合成NMNは、初めてEFSAの安全性評価を完了し、Novel Foodの行政承認プロセスに入りました。これにより、EUで初めて承認されるNMN新規食品原料となる可能性があります。


また、中国のある生物医薬会社が申請した酵素合成NMNも、すでにパブリックコメント段階を完了しています。ただし、EFSAによる安全性評価の最終結論はまだ公表されていません。


さらに、オランダの製薬企業が申請した化学合成NMNについても、現在EFSAの安全性評価段階に入っています。


4. 日本


日本は、比較的早い段階でNMNを非医薬品リストに収載した国の一つです。2020年3月、厚生労働省はβ-NMNを食薬区分の非医リストに収載しました。


これにより、β-NMNは一般食品原料または機能性表示食品原料として使用することが可能となりました。ただし、医薬品的な治療効果を標ぼうすることは認められていません。


5. オーストラリア


オーストラリアでは、NMNは公的に認められた治療用製品/ヘルスケア製品(Therapeutic Goods)の成分リストに収載されています。特定の用量、対象者制限および許可条件を満たす場合、有効成分として使用することが認められています。


なお、この使用権限は2027年12月10日まで、中国のある生物医薬会社おびその関連許諾先に限定されています。


オーストラリアでは、健康食品やサプリメントカテゴリーはTherapeutic Goodsに含まれます。

NMNの応用と業界動向


各国・地域におけるNMN規制の整備スピードには差があるものの、NMNの食品としての安全性は、米国、日本、オーストラリアなど複数の国で公的に認められつつあります。一方で、NAD+前駆体としての抗老化サポート分野における科学的メカニズムおよび応用価値については、今後さらに詳細な研究と検証が必要です。


今回、EFSAが化学合成β-NMNについて安全性に関する肯定的な評価結論を正式に公表したことは、β-NMNのグローバル市場におけるコンプライアンス上の大きな突破口となります。


同時に、より現代的で効率的、かつ環境負荷の低い酵素合成β-NMNも、業界の主流技術になりつつあります。すでに複数の主要企業が大規模に採用しており、関連製品は複数国で安全性が認められ、市場販売の承認を取得しています。


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