米国FDA、食品・飼料のSelf-GRAS廃止を提案|GRAS制度改革と企業への影響

米国FDA、食品・飼料のSelf-GRAS廃止を提案|GRAS制度改革と企業への影響

2026-07-23
2025年以降、米国におけるGRAS(Generally Recognized As Safe、一般に安全と認められる)制度の見直しをめぐる動きは、米国内外の食品・飼料業界から大きな注目を集めています。

2026年7月3日、米ホワイトハウス情報・規制問題室(OIRA)は、『2026 年春規制アジェンダ(Regulatory Agenda)』を公表しました。同アジェンダには、各連邦機関が予定する規制措置とそのスケジュールが示されており、米国食品医薬品局(FDA)が検討しているGRAS規則案(Proposed Rule)の公表予定時期も明記されています。

『2026 年春規制アジェンダ(Regulatory Agenda)』.png


本最終規則が施行された時点で、長年企業が活用してきた Self-affirmed GRAS(自己認証型GRAS、以下「Self-GRAS」)のルートは廃止となり、FDA への GRAS 届出が全物質に義務付けられる予定です。米国の食品・飼料原料市場に大きな変化をもたらす可能性があることから、REACH24Hは規則案の主要ポイントと一連の立法スケジュールを整理しました。

米国GRAS規則案の概要

所管機関:米国保健福祉省(HHS)傘下の食品医薬品局(FDA)

規制識別番号(RIN):0910-AJ02

規則名:Substances Generally Recognized as Safe(一般に安全と認められる物質)

規則制定段階:規則案段階。「経済的に重大な影響を有する(Economically Significant)」規制案件に位置付けられています。

主な予定:規則案制定告示(NPRM)は、2026年12月に公表され、パブリックコメントに付される予定です。

規則案で想定される主な変更点

今回の制度改正は、規制上の情報不足を解消し、市場の透明性を高めることを主な目的としています。中心となる変更点は、次の2点です。

1.GRAS通知の義務化

規則案では、連邦規則集第21編(21 CFR)のPart 170(ヒト用食品)およびPart 570(動物用食品)を改正することが予定されています。現行制度では、企業が専門家による評価を通じてGRAS結論を得た場合、FDAへ通知するかどうかを任意に選択でき、通知を行わずに製品を市場投入するSelf-GRASルートも利用できます。

今後は、特定の意図された使用条件の下でGRASと位置付けるヒト用食品または動物用食品の物質について、FDAへのGRAS通知が義務付けられる見込みです。通知義務の対象であるにもかかわらず所定の通知を行わなかった場合、FDAは当該用途をGRASではないものと推定する方針を示しています。その結果、輸入差止めや製品リコールなどの執行措置のリスクに直面する恐れがあります。

2.一般公開されるGRAS通知インベントリーの整備

FDAは、義務的なGRAS通知の対象となる物質について、一般向けのGRAS通知インベントリーを維持・更新する方針です。将来的には、公開インベントリーに登録された内容と、実際の物質・用途・使用条件が一致していることが、米国市場における適法な流通を判断する上で重要になります。

既存のSelf-GRAS原料に対する簡易提出ルート

企業が特に留意すべき点として、FDA は移行期間限定の簡易届出制度を導入する方針を示しています。対象は、最終規則施行前に Self-GRAS 判定のもと米国で流通済みの原料となります。

この提出期間が最終的に設定された場合、対象企業は当該期間内に簡略化された資料をFDAへ提出できる可能性があります。この簡易手続を利用することで、既存原料を比較的低いコンプライアンスコストと短い期間でFDAの公開インベントリーに反映し、新制度へ円滑に移行できることが期待されます。

今後想定される規則制定スケジュール

米国の連邦規則制定手続と過去の類似案件の進行状況を踏まえると、規則案の公表から最終的な義務化までには、一定の期間を要すると考えられます。REACH24Hは、現時点で次のようなスケジュールを想定しています。

  • パブリックコメント期間(2027年上半期):FDAが2026年12月末に規則案を公表した後、60日程度の意見募集期間が設けられる可能性があります。

  • 意見の評価・規則案の修正(2027年半ば~2029年半ば):本規則は経済的重大影響規制に区分されるため、FDA は膨大なパブリックコメントを一つずつ検証し、規則文案の修正を実施します。文案確定後は行政管理予算局(OMB)の審査手続きに移行し、過去類似事例では本工程だけで約 24 か月を要するケースが多いです。ただし、米国議会による法改正が進めば、制度変更が早まる可能性もあります。

  • 最終規則の公表と移行期間(2030年前後):上記の進行を前提とすると、最終規則は2029年末から2030年頃に公表される可能性があります。公表後には、既存のSelf-GRAS原料に関する簡易提出を受け付けるための移行期間など、一定の準備期間が設けられることが見込まれます。

米国市場を目指す企業へのコンプライアンス提言

最終規則の公表・施行は2029年から2030年頃になると予想されるものの、今後の規則制定過程には不確定要素があります。長期的な対米ビジネスの安定性を確保するため、REACH24Hは、「既存製品は簡易提出に備え、主力製品は先行して正式通知を行う」という方針で、早期に準備を進めることを推奨します。

1.既存製品のコンプライアンス状況を点検する

Self-GRASルートを利用して米国市場へ展開している企業は、既存の製造工程および安全性データをFDAの要求に沿って体系的に整理しておくことが重要です。移行期間が開始された際に速やかに簡易提出を行い、FDAの公開インベントリーへの反映を目指せるよう、あらかじめ資料を整備しておく必要があります。

2.主力製品はFDA GRAS認証を早期に開始する

企業の主力製品、または今後米国市場へ投入する予定の高付加価値原料については、規則の最終化を待たず、FDA GRAS Notificationを正式に開始することを推奨します。

近年、FDAによるGRASの審査、無疑義通知(通称 No Questions Letter)発行までの所要期間は年々長期化する傾向にあります。制度変更前に正式な通知を開始し、可能な限り完了させておくことで、今後数年間の規制変更に伴う不確実性を抑え、長期的な対米取引の安定性を高めることができます。

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