登録件数は高水準を維持、通常農薬が成長をけん引
2026年7月31日時点で、EPAが登録を承認した農薬製品は481件です。なかでも通常農薬は、わずか7か月で367件の登録を取得し、2025年通年の登録件数(465件)の約8割(78.9%)に達しました。2026 年上半期の登録件数増加を強くけん引しており、抗菌農薬(消毒剤)と生物農薬は、それぞれ62件、52件でした。
2022~2025年の登録内訳を見ると、通常農薬は全登録の約6割で推移していましたが、2026年1~7月は76.3%まで上昇し、近年で最も高い水準となっています。一方、生物農薬の比率は10.8%とおおむね安定しているのに対し、抗菌農薬(消毒剤)は12.9%まで低下しました。全体として、EPAの農薬登録は引き続き高水準で推移しており、通常農薬の比重が高まる構成変化がより鮮明になっています。

有効成分の動向:除草剤が中心、生物農薬は多様化
2026年1~7月に新たに承認されたEPA登録は、200種類を超える有効成分に及びました。登録件数ではスルフェントラゾンが19件で最多となり、ピロキサスルホン(18件)、クロラントラニリプロール(15件)が続きました。S-メトラクロール、ビフェントリン、メトリブジンなどの既存成分についても、登録が引き続き活発です。
用途別では除草剤が多数を占めています。これは、北米の大規模農業における雑草防除の安定した需要を反映しているだけでなく、スルフェントラゾン、メトリブジン、クロルスルフロンなどの残効性を有する成分を軸に、複数の作用機構を組み合わせた配合製剤により抵抗性雑草を抑え込む製品戦略が加速している点もうかがえます。また、殺虫剤ではクロラントラニリプロールやビフェントリン、殺菌剤ではメタラキシルMなどが安定した需要を維持しており、主流の市場構成を維持しつつ、製品ポートフォリオの入れ替え・高度化が進んでいます。
2026年1~7月 EPA登録有効成分 TOP 10

生物農薬では、インドール酪酸、Priestia megaterium SYM36613株、デカン酸、オクタン酸、塩化コリン、サイトカイニンなどの登録が活発でした。植物成長調節、微生物防除、先端バイオ技術の各分野が、製品タイプの多様化を後押ししています。
新規有効成分:通常農薬とバイオ技術が並行して進展
2026年1~7月には、EPAで9つの新規有効成分が承認されました。従来のように単一の技術分野に偏るのではなく、今回は通常農薬、微生物農薬、生化学農薬、ゲノム編集PIP(植物導入保護剤)まで幅広くカバーしており、化学農薬のイノベーションとバイオ技術が並行して進展する傾向が見られます。
通常農薬の新規有効成分
フルオキサピプロリン(Fluoxapiprolin)、エピリフェナシル(Epyrifenacil)、ジフルフェニカン(Diflufenican)が承認され、病害防除および雑草防除の新たな選択肢が加わりました。
微生物農薬・生化学農薬の新規有効成分
Priestia megaterium SYM36613株、Wolbachia(wAlbB系統)を保有するCulex quinquefasciatus雄蚊(DQB系統)、PDHP 68949が市場に加わり、植物の健全性維持や媒介蚊の防除など、幅広い用途をカバーしています。
先端バイオ技術
CRISPR/Cas9による精密ゲノム編集を活用した初のカンキツ台木向け農薬CarriCea T1が登録承認されました。本製品には3つのPIP新規有効成分が含まれ、カンキツの感受性遺伝子ACD2、Lls1、PLCPの機能をそれぞれノックアウトすることで病害抵抗性を獲得させています。この承認は、カンキツグリーニング病(黄龍病)の防除に新たな道を開くだけでなく、ゲノム編集農薬の規制順守・登録手続きにおける新たなベンチマークとなりました。

市場競争の構図:大手企業がリード
2026年1~7月に新たなEPA登録を取得した企業は183社でした。Chemagco、Atticus、Rainbow Agrosciencesが、それぞれ32件、31件、27件で上位3社となっています。登録件数上位10社の合計は175件で、承認された登録全体の3割を超えました。大手企業は、多種の有効成分、剤型、使用場面をカバーした事業展開を進め、製品ラインアップを拡充し続けています。

成長とイノベーションの機会
2026年7月までの米国EPA農薬登録市場は、通常農薬の力強い伸び、生物農薬の安定した発展、そして革新的技術の実用化加速という特徴を示しています。北米市場への進出を検討する企業にとっては、登録件数の増加だけに注目するのではなく、製品ポートフォリオ、最終市場への展開、上市タイミングを総合的に設計することがより重要です。
REACH24Hでは、農薬・農業資材企業が北米市場で事業基盤とブランドプレゼンスをさらに強化するためには、次の3点を並行して検討することが重要だと考えています。
最終使用製品(製剤)の登録を並行して進める:製造用原体または製造用製品を展開する段階から、最終製剤の登録も早めに計画することで、ブランドに対するコントロール力を強め、米国市場のニーズに直接応えられるようになります。
州登録まで一体で計画する:EPA連邦登録の取得後は、販売地域と上市時期に合わせて州登録を進め、製品を実際に市場投入するための最後の要件を確実に整える必要があります。
差別化された製品ポートフォリオを構築する:成熟成分が市場の中心である一方、微生物農薬、生化学農薬、ゲノム編集PIPは新たな機会を生み出しています。自社の技術力とサプライチェーンの強みを踏まえ、特徴ある有効成分、剤型、用途・使用場面を早期に検討することが重要です。
