欧州委員会の保健衛生・食の安全総局(DG SANTE)は、食品接触材料(FCM)の持続可能性に関する調査研究を公表しました。本研究は、改正が検討されているFCM規則の科学的根拠を示すことを目的としています。「持続可能なFCM」を初めて体系的に定義するとともに、現行制度における7つの課題を特定し、今後の法改正に向けた4つの政策上の提案を示しています。
背景:持続可能性への着目
EUにおけるFCMの枠組み法令は、Regulation (EC) No 1935/2004です。同規則は、一般的な安全要件に加え、物質の安全性評価および認可に関する基本的な手続きを定めています。
同規則の施行から20年以上が経過し、FCMの市場での用途や技術は変化してきました。また、持続可能な発展への関心も世界的に高まっています。一方、複合材料のリサイクルの難しさや使い捨て製品の増加など、持続可能性に関する課題への対応には現行規則上の不足がみられます。今回の研究は、FCMの持続可能性の観点から、規則改正に向けた技術的根拠を提供するものです。研究の概要と資料は、欧州委員会のFCM規則改正ページで確認できます。
研究報告の主な内容
「持続可能なFCM」の定義
複数回のステークホルダー協議を経て、報告書は「持続可能なFCM」の定義を初めて明確にしました。すなわち、現在の食品供給の安全を確保しながら、将来世代が自らのニーズを満たす能力を損なわず、地球の限界の範囲内で、ライフサイクル全体を通じて機能性、最大限の循環性、健康および環境への負の影響の最小化を実現するものです。
具体的には、不要なFCM製品の使用を減らし、廃棄を防ぐこと、原材料の選択から製造、設計、使用、処分に至る各段階で循環利用を最大化すること、環境および公衆衛生への悪影響を最小限に抑えることが重視されています。また、FCMを単独で捉えるのではなく、食品システムや関連産業の全体像の中で位置づけ、より持続可能な食品システムおよび循環経済への移行に貢献させる必要があるとしています。
現行制度における7つの重大な持続可能性課題
プラスチック汚染および合成化学物質への人のばく露
多層複合材料のリサイクルが困難であること
大半のFCMがリサイクルを前提として設計されていないこと
再生原料ではなく、バージン原料に大きく依存していること
再使用に比べて使い捨てが大幅に多いこと
PFASやフタル酸エステル類など、広範に使用される化学物質が公衆衛生に長期的な懸念をもたらしていること
持続可能な食品システムへの移行を促進するFCMの可能性が十分に活用されていないこと
FCMの生産量、使用量および廃棄量は増加を続けています。特に、FCM市場の大部分を占める包装材が環境に与える負荷は拡大しており、早急な対応が必要な課題となっています。
規則改正に向けた4つの政策提案
報告書は、包装・包装廃棄物規則(PPWR)やエコデザイン指令など、既存のEU政策が課題の緩和に一定の役割を果たす一方、FCM分野には依然として大きな規制上の空白があると指摘しています。そのうえで、FCM規則の改正に盛り込む可能性のある施策として、次の4点を挙げています。
再使用可能なFCMに関する共通基準・ガイダンスの策定:再使用製品が厳格な安全性および耐久性要件を満たすことを確保する。
FCMのエコデザイン・ガイダンスの導入:製品設計段階から循環性、資源効率および化学物質の安全性を組み込む。
製品の必要性評価の導入:使用する材料および化学物質が真に必要か、持続可能性の目標に合致するかを評価する。
業界全体の科学的な持続可能性目標の設定:汚染防止、資源利用、化学物質の安全性および循環性について、定量可能な指標体系を構築する。
これらの提案が採用された場合、FCMのバリューチェーン全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。企業は、材料選択、製品設計およびサプライチェーン管理の方針を改めて検討する必要があります。特に、多層構造に依存する製品、高懸念化学物質を含む製品、使い捨て製品を主力とする製造事業者では、移行に伴う負担が大きくなる可能性があります。
企業に向けた示唆
本研究の主な目的は、EUのFCM規則改正に科学的根拠を提供することですが、立法改革の方向性も示しています。EUの包装関連法令の施行に伴い、FCM固有の規則改正がさらに進む可能性があります。企業は、今後の規制動向を見据え、環境負荷が小さく、安全で、循環利用しやすいFCMソリューションの検討を進めることが重要です。
