中国は、いわゆる『新汚染物』への対応を強化するため、化学物質の環境リスクをスクリーニング、評価、管理するための包括的な標準体系を構築しています。
新汚染物には、国際条約で管理される残留性有機汚染物質、内分泌撹乱物質、抗生物質などが含まれています。これらのほとんどは、有害・危険な化学物質の生産および使用に起因しています。中国国務院が2022年に公表した「新汚染物管理行動方案」では、化学物質がもたらす環境リスクを正確に把握し、優先管理対象となる高リスクの新汚染物質を特定するため、スクリーニング・評価・管理に関する標準体系の構築が求められています。
この要件に対応するため、中国生態環境部(MEE)は、2024年7月に意見募集を実施した上で、2024年10月16日に「化学物質環境リスク評価および管理制御技術標準体系(2024年版)」を正式に発表しました。この体系は、以下の3つのサブ体系で構成されています。
1. 化学物質環境リスクスクリーニング技術標準サブ体系
化学物質の優先評価のためのスクリーニングでは、環境および健康への危害、ならびに潜在的な環境曝露が総合的に考慮されます。このサブ体系に含まれる技術標準は、評価対象化学物質のスクリーニングに関する原則、手順、技術要件を明確化し、科学的な手法により対象化学物質を特定するプロセスを標準化することを目的としています。既に策定・発行された技術標準として、以下のものがあります:
HJ 1229-2021:優先評価化学物質スクリーニング技術ガイドライン
HJ/T 420-2008:新化学物質申請類似名生成ガイドライン
HJ 1357-2024:化学物質環境管理命名規範
また、化学物質の環境情報に関する統計報告の技術仕様も現在策定中です。技術仕様は関係者による環境情報調査の実施を支援することが目的で、報告プロセスと要件の標準化を通じて、環境情報調査の定常化・標準化を目指しています。
2. 化学物質環境リスク評価技術標準サブ体系
「化学物質の環境リスク評価技術方法に関する枠組みガイドライン(試行)」に基づき、環境および健康の危害評価、曝露評価、リスク特性評価を含む一連の技術指針が策定・具体化されています。既存の技術標準には以下が含まれます:
化学物質の環境と健康危害評価に関する技術ガイドライン(試行)
HJ 1257-2022:化学物質環境管理 - 化学物質試験の用語
化学物質環境・健康曝露評価の技術ガイドライン(試行)
新汚染物の生態環境モニタリング標準体系表(2024年版)
化学物質環境・健康リスク特性評価の技術ガイドライン(試行)
特に、生態毒性試験や環境リスク曝露評価に関する技術基準の開発・改訂が優先課題となっています。危害試験分野では、例えば水生生物毒性や魚類急性毒性など、産業界での試験が難しい危害エンドポイントがあります。この問題に対処するため、MEEは他の省庁と協力して関連する試験基準を策定します。加えて、同省は現行の試験基準を強化し、その精度と有効性を向上させる予定です。
3. 新汚染物環境リスク管理制御技術標準サブ体系
新汚染物の環境リスク管理措置に関する技術標準は、現時点で最も整備が遅れている分野です。このサブ体系においては、以下の3つのカテゴリーに分けて技術標準を開発する予定です:
源での禁止と制限:有害化学物質の製品での使用制限
過程での排出削減:排出抑制のための最良の産業慣行の指針策定
末端での処理:排出限度基準や分析試験方法の整備
このサブ体系の中に、製品中の有害化学物質の使用制限に関する基準が策定される予定です。また、使用制限に加えて、代替技術の革新アプローチも奨励、支援されています。例えば、2024年8月に華南環境科学研究院(SCIES)が策定した「T/CSES 151-2024 グリーン代替案の評価に関する技術指南」もその一例です。
新汚染物の環境影響評価に関する標準的技術ガイダンス
汚染物質の排出削減に関する業界ベストプラクティスの技術ガイダンス
新汚染物の環境排出制御に関する標準
排出制限基準と支援的な分析試験方法