米国|バイデン-ハリス政権のPFAS戦略ロードマップのマイルストーンである飲料水中のPFAS量削減へ向けて6つの化学物質に関する飲料水中の基準を提案すると発表
2023-05-30

EPAが飲料水中のPFAS量を国家基準により制限する規則案を発表

2023年3月14日、バイデン・ハリス政権のPFAS戦略ロードマップの下で米国環境保護庁(EPA)は、パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)に属する6つの化学物質に対して、飲料水中の基準を提案すると発表しました。この取り組みにおいて、EPAは1種以上のPFASの混合物も総和として考えて制限するとしています。ここでは、「PFAS制限の取り組みの背景」「今回発表された内容」について記事になっています。

背景:

PFAS(パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質、有機フッ素化合物種)は、人々が長期間にわたってそれらにさらされると、癌を含む深刻な健康問題を引き起こす可能性がある化学物質のカテゴリーです。PFASのうち「PFOS」と「PFOA」は水や油をはじき、熱に対し安定的な特性があることから、消火剤やフライパンのコーティング剤などに使われてきました。米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency、EPA)管理者であるマイケルS.リーガンが2021年10月にPFAS戦略ロードマップを発表して以来、EPAはPFAS排出を削減させるために、排出者に責任を負わせるための法律を策定しています。2022年11月には、EPAは「EPAのPFAS戦略ロードマップの下での進歩の年」を発表し、PFAS戦略ロードマップの実施開始年にEPAが取った主要な行動を強調して発表しています。

包括的環境対策・補償・責任法(Comprehensive Environmental Responce,Compensation and Liability Act 、CERLA)とは、一般にスーパーファンドとして知られ、1980年12月11日に議会によって制定されました。CERLA によって有害物質として指定された場合、指定化学物質は国家緊急時対応計画(National Contingency Plan、NCP)が提供した排出に関するガイドラインと手順を守る必要があります。PFAS戦略ロードマップでは、EPAがCERCLA有害化学物質として指定する29種類のPFASの削減を目標としてマイルストーンを設定し、連邦、州、準州、部族の政府および飲料水の公共システムと協力して、飲料水中のPFAS削減を行うとなっています。そのために、近々EPAは次のような幅広い行動を取ることを約束しています。

  • 2023年より、全国の何千もの飲料水システムにおいて数十種類のPFAS量を監視します。

  • PFAS排出者の責任を問うために2種類のPFASを「有害化学物質」として指定する提案を最終決定します。

  • 水質浄化法の基準を強化することにより、生活水路へのPFAS排出を制限します。

  • PFASに関する科学的な知識を増やし、より迅速かつ戦略的に行動し、化学データと安全規則を最終決定します。

  • 全国的なPFAS飲料水基準に関する最終措置を取るための規則案を発表し、パブリックコメントを検討します。

今回発表された内容:

今回、EPAのPFAS試験戦略の下で、公共飲料水システムにおける10種のPFASの全国的なサンプリング検査を行い、PFASに関するデータを増やすことを提案しています。EPAのクリーンウォーター法の許可および規制プログラムを使用し、環境中のPFAS汚染を削減する方針です。超党派によるインフラ法(Bipartisan Infrastructure Law, Infrastructure Investment and Jobs Act、BIL)に基づき、100億ドル(1兆3千億円)の投資の下で行われる予定です。具体的には、この提案には以下の2つの特徴があります。

  • EPAは、PFOAとPFOSをそれぞれ4ppt(ng/Lと同じ)の濃度レベルで規制することを提案しています。

  • EPAはPFNA、PFHxS、PFBS、およびGenX化学物質のうち、1つ以上を含む混合物を制限する規制を提案しています。このとき、これらの4つのPFASを混合物として測定し、公共水道システムにおけるこれら化学物質の量を監視します。また、レベルが提案された規制基準を超えた場合、一般に通知を行います。

この提案はすでに、ニューハンプシャー州上院議員で超党派によるインフラ法の水供給の主任交渉者のジャンヌ・シャヒーン、超党派の議会PFASタスクフォースの共同議長であるブライアンフィッツパトリック下院議員、活動家で俳優のマーク・ラファロなどによって、賛成されています。

今回の取り組みを、EPAは重要なマイルストーンの1つであると考えています。2023年2月、EPAはバイデン大統領の超党派によるインフラ法から、全米の飲料水中のPFASを含む有害化学物質に対処するために20億ドルを利用できると発表しました。今後も、EPAによるPFAS制限の規則案の作成が続く予定です。

この提案に関する公聴会が5月4日に開催され、コメントは5月30日まで受け付けられます。

参考

■ EPAが飲料水中のPFAS量を国家基準により制限する規則案を発表


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