米国|EPA、リスク評価のための優先順位付けを行う5物質を公表
2024-02-27

優先順位付けを行う5物質

2023年12月14日、米国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)のもと、優先的にリスク評価を実施する予定の対象物質を明らかにしました。リスク評価の結果、化学物質が健康や環境に対して不合理なリスクをもたらすと判断された場合、リスク管理措置を定める個別の規制が設けられることになります。厳密にはこれらの物質は「優先順位付け」の対象であり、12ヶ月に及ぶ法定手続きにおいて、これら5つの化学物質を高優先度物質に指定した場合、これらの化学物質のリスク評価が開始されることとなります。
 
【対象物質】
■ Acetaldehyde (CASRN 75-07-0)
■ Acrylonitrile (CASRN 107-13-1)
■ Benzenamine (CASRN 62-53-3)
■ 4,4’-Methylene bis(2-chloroaniline) (MBOCA) (CASRN 101-14-4)
■ Vinyl Chloride (CASRN 75-01-4)

概要

■ 5つの化学物質はすべて、2014年TSCA作業計画から選択されたもの。
■ EPAは、優先順位決定過程においてこれらの化学物質がリスク評価の優先順位が高いものとして指定されることを予期しているが、EPAは、最終的な指定を行うために、合理的に入手可能な情報や提出された情報の検討と選別を継続予定。
■ アセトアルデヒドは、主に接着剤、石油化学製品、その他の化学製品の製造や加工、包装材や建材などの製品の中間体として使用されている。ヒトに対する発がん性物質である可能性が高い。
■ アクリロニトリルは、主にプラスチック材料、塗料、石油化学製品、その他の化学製品の製造・加工に使用される。アクリロニトリルはヒトに対する発がん性物質である可能性が高い。
■ ベンゼンアミンは、染料・顔料、石油化学製品、プラスチック、樹脂、その他の化学製品の製造・加工に使用される。ベンゼンアミンはヒトに対する発がん性の可能性がある。
■ MBOCAは、ゴム、プラスチック、樹脂、その他の化学物質の製造および加工に使用される。これはヒト発がん性物質の可能性が高い。また、MBOCAへの暴露が細胞の遺伝物質を損傷する可能性を示す広範なデータが確認されている。
■ 塩化ビニルは、主にポリ塩化ビニル(PVC)やプラスチック樹脂などの化学物質の製造・加工に使用され、その多くはパイプや断熱材、消費財に使用されている。肝臓毒性などさまざまな健康被害が生じる可能性がある。また、ヒトに対する発がん性物質としても知られている。

参考情報

■ Chemical Substances Undergoing Prioritization
■ EPA-HQ-OPPT-2023-0601

有害物質規制法(TSCA)とは?

米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。

目次

SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準

注目される制度

TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。

新規化学物質の製造前届出制度

■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要

化学物質の試験制度

■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。

重要新規利用規則(SNUR)

■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。

化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制

■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。

既存化学物質の管理制度

■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。

輸出入規制

■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。

複合木材製品規制

■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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