PV29のTSCAリスク管理規則案
2025年01月14日、米国連邦官報にて、有害物質規制法(TSCA)に基づくC.I. ピグメントバイオレット29(PV29)を対象とするリスク管理規則の案が公表され、意見募集が開始されました。意見募集の期限は02月28日までとなっております。
概要・背景
■ PV29は赤紫色をしたペリレン顔料で、現在粉末、スラリー、ペーストとして製造されている。
■ 主な用途としては、プラスチックや塗料などの製品の染色に使用され、自動車用塗料やコーティング剤 などが知られている。
■ 2021年や2022年のリスク評価では、作業場でのPV29の慢性的な吸入暴露による肺胞過形成(酸素の移動が起こる肺の細胞数の増加)、炎症、肺の形態変化などを理由に、不合理なリスクがあると結論づけられていた。
改正箇所
■ 40 CFR Part 751
§ 751.901 全般
§ 751.903 定義
§ 751.905 作業場要件
§ 751.907 ラベル表示および川下通知
§ 751.909 記録保持要件R
注目内容
作業場要件
■ 製造、輸入、加工、使用、廃棄などが行われる作業場が対象
■ 要件としては、規制エリアの設定と立入規制措置、要件に適合する呼吸器の提供、清掃などが含まれる。
ラベル表示・川下通知
■ 官報公布180日後以降、PV29の製造者、輸入者、加工業者、流通業者は、出荷前に(あるいは出荷時に)、指定の文言を含むSDSを提供すること。
■ また、製品(容器)のラベルには以下の文言を表示すること。
Color Index Pigment Violet 29 (PV29) is stored within this container. Regulated PV29 is subject to additional respiratory protection and cleaning requirements under 40 CFR part 751, subpart J. Please review the requirements before opening this container and using this product.
記録要件
■ 官報公布60日後以降、製造、輸入、加工、使用を行う者は、規則の遵守に関係する川下通知、請求書、BOLなど、通常の業務記録を保持すること。
■ また、呼吸器保護や清掃に関連する記録要件もあり。記録の保持は作成日より5年間必要。
参考情報
有害物質規制法(TSCA)とは?
米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。
目次
SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準
注目される制度
TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。
新規化学物質の製造前届出制度
■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要
化学物質の試験制度
■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。
重要新規利用規則(SNUR)
■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。
化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制
■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。
既存化学物質の管理制度
■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。
輸出入規制
■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。
複合木材製品規制
■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。
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