EPA、鉛蓄電池などの製造者の申し立てを考慮し、TCE使用の禁止を含む最終規則の発効を延期する
2025年04月02日、環境保護局は、「トリクロエチレン(TCE);有害物質規制法(TSCA)に基づく規制」と題する最終規則の規制条項の発効を、司法審査中であることを理由に90日間延期しました。EPAは、2024年12月17日(89 FR 102568)にて公表された最終規則の、「適用除外」項に記された各条件の発効を2025年06月20日まで延期することを決定しました。
有害物質規制法(TSCA)とは?
有害物質規制法(Toxic Substances Control Act、TSCA)は、有害な化学物質による人の健康又は環境への不当な悪影響を防止することを目的で、1977年01月01日に発効した法律です。TSCAの対象は、農薬、食品、医薬品、化粧品及び医療機器を対象外として「特定の分子的特性を有する有機又は無機の物質」で、これら物質は米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)が作成・保管する製造、輸入又は加工される化学物質の最新リストである「TSCAインベントリー」によって管理されています。そして、リストに含まれる物質を製造、加工、流通、利用又は処分する個人及び企業に対して適用されます。EPAは、このリストに登録される予定の新規物質の届出に対応してリスク評価を審査し、またリストに登録されている既存物質の内容・数量報告についても審査しています。
トリクロロエチレンとは?
トリクロロエチレン(trichloroethylene、TCE、CASRN 79-01-6)は有機塩素化合物の一種で、1900年代後半まで、半導体産業での洗浄用やクリーニング用剤として広く用いられていました。しかし、発がん性があることが報告され、2024年12月、EPAは規則を改正することを決定しました。改正された最終規則では、TCEの輸入、輸出用製造を含む製造や加工、商業や消費者用途とその流通、工業用処理または廃棄を、2025年03月より段階的に禁止し、2074年に全面的に禁止とする内容となっています。
この延期の背景
2024年12月17日、EPAはTSCAセクション(§)6(a)に基づき、暫定ECEL(既存化学物質の暫定暴露限界値、Interim existing chemical exposure limit、interim ECEL)を0.2 ppmとし、それ以上のトリクロロエチレン(trichloroethylene、TCE)の使用を禁止する最終リスク管理規則を発布(89 FR 102568)しました。
具体的には、製品の製造などでTCEを使用する条件の大部分を1年以内に禁止することを最終規則としました。ただし、この最終規則では、ある程度継続して使用が許可されTCEを必要とする業界が大きな影響を受けないように、TSCAセクション§6(g)「適用除外」の内容が含まれていました。最終規則は当初、2025年01月16日に発効する予定でしたが、この「適用除外」内容の再検討を求めたMicroporous, LLCやAlliance for a Strong U.S. Battery Sector社など複数の会社の申し立てがあり、EPAはそれを受理しました。この申し立てでは、最終規則において鉛蓄電池セパレータ製造および特殊高分子微多孔シート材料のための「適用除外」に記された職場条件の妥当性について疑問を呈しています。
申し立て人らは、適用除外とされた職場条件は、個人保護具の使用の観点から実行不可能であり、除外項目は意味をなさずにほぼ全面的な禁止に値すると主張しています。現在この内容は司法審査が行われるかの判断が行われています。
この延期の内容
行政手続法においては、司法審査が行われるまでの間、行政機関が規則の発効日を延期することを認めています。EPAはこれに基づき、発効を2025年06月20日まで延期することを決定しました。
参考情報
有害物質規制法(TSCA)に基づく、改正されたトリクロロエチレン(TCE)規制の発効が延期される
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