EU|欧州委員会、エチレン等の工業用化学物質の輸入を監視するための税関監視システムの使用開始を公表
2025-05-19

税関監視システムの導入開始について

2025年03月25日、欧州委員会は、肥料や工業用途に使用される特定のエチレンおよびアンモニア関連製品の輸入急増に対応するため、EU税関監視システムによる輸入状況の監視を開始したことを公表しました。これにより、市場動向を適切に把握し、必要に応じて迅速な対応を取れる体制が整いました。

背景

■ 近年、エチレン、アンモニウム関連製品といった工業化学製品のEU市場への輸入が著しく増加していると指摘されています。これらの工業化学製品は主に肥料製造や工業用途に使用されており、現在の輸入急増は中国における過剰なまでの生産能力や、他国が実施している貿易救済措置(アンチダンピング措置など)の影響を受けているものと考えられています。

■ このような状況のもと、これらの輸入がEU域内の産業界にとっての脅威と幅広く認識されつつあるだけでなく、既に実際の損害につながりつつある現状を踏まえ、欧州委員会はこの輸入増加への対応に乗り出しました。

概要

■ 欧州委員会は、特定のエチレンおよびアンモニア関連製品の輸入動向を常時把握するため、EU税関監視システムに基づく輸入監視体制を整備しました。このシステムは、EU域内に持ち込まれる特定製品の輸入量および輸入額をリアルタイムで把握できる仕組みであり、加盟国の税関申告情報をもとに輸出入データが収集され、毎日更新されます。

■ 今回の監視対象となるのは、以下の3製品です。

 - エチレン系共重合体

 - 尿素(窒素含有率45%以上)

 - 硫酸アンモニウム

■ 監視措置はすべての国からの輸入を対象としており、3年間継続される予定となっています。なお、監視制度自体は輸入を制限するものではなく、市場の透明性を高めるための措置であり、事実に基づいた輸入動向の可視化を目的としています。

■ 税関監視システムを通じて収集した情報は欧州委員会のウェブサイトで一般公開され、EUの産業界は動向を分析し、貿易に関する調査の要請など、何らかの行動を起こすか検討する際の判断材料とすることができます。

■ 欧州委員会はこの監視によって得られたデータをもとに市場の状況をより的確に理解し、必要に応じて貿易救済措置(アンチダンピング調査など)の発動を検討することが可能になります。とくに域内企業が競争環境の歪みによって不利益を被っていると判断された場合には、迅速かつ的確な対応が取りやすくなるよう制度化できます。

■ また、欧州委員会はこの監視制度のインターフェースを今後さらに改良し、より使いやすく効果的な情報収集・分析が行える体制を整えていく方針を示しています。

■ 欧州委員会は、税関監視システムを活用して輸入に関する統計情報を収集し、市場状況に関する理解を深めることで、産業界からの潜在的な苦情や要望をより適切に評価できるシステムづくりを目指ししています。

参考情報

工業化学品の輸入を監視するための税関監視システムの利用

欧州委員会、EU市場を急速に埋め尽くしている工業化学製品の輸入の追跡を開始


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