EU|欧州委員会、発がん性物質・変異原性物質・生殖毒性物質指令(CMRD)の第6次改訂提案を公表
2025-09-09

発がん性物質・変異原性物質・生殖毒性物質指令(CMRD)の第6次改訂について

2025年07月18日、欧州委員会は、発がん性物質、変異原性物質および生殖毒性物質指令(CMRD)の第6次改正案を提案しました。コバルト化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)、1,4-ジオキサンに新たなばく露限界値を設定するとともに、溶接ヒュームが適用範囲に追加されています。

背景

■ 今回の改正は、労働者の健康被害を防止するためのEU法整備の一環として行われるもので、最新の科学的知見と労働安全衛生諮問委員会の意見を反映しています。

■ CMRDはこれまで5回改正され、40以上の有害化学物質が規制対象となり、50年間で10万人以上の労働者の命を救うことが期待されてきました。

■ 今回の第6次改正は、EUの2021-2027年労働安全衛生戦略枠組みや欧州社会における権利の柱、さらに「欧州がん対策計画」や「欧州保健連合」の目標達成にも資するものです。

■ 提案は欧州議会と理事会で審議され、採択後は加盟国が2年以内に国内法へ反映する必要があります。

概要

■ コバルトおよび無機コバルト化合物について、吸入粒子の限界値を0.01mg/m³、肺の奥まで届く微細粒子は0.0025 mg/m³とし、6年間の移行期間はそれぞれ0.02 mg/m³と0.0042 mg/m³の暫定値を適用します。これらは主に電気自動車用バッテリーや磁石、超硬金属の製造工程で使用される物質です。

■ PAHsは鉄鋼・アルミ生産や溶接ヒュームに含まれ、限界値は0.00007mg/m³、移行期間はその2倍が許容されます。さらに1,4-ジオキサンは化学製造や繊維、洗剤製造で使われ、一般限界値7.3 mg/m³、短期限界値73 mg/m³に加え生物学的限界も設定されます。これらの物質には皮膚吸収などの経路も考慮した「注記」が付され、追加的防護措置が必要な場合を明示します。

■ 新たに溶接ヒュームをCMRD対象に加えることで、クロム、ニッケル、カドミウム化合物などの有害物質へのばく露防止を法的に明確化し、防護義務を強化します。これらの措置は労働者と家族の生活の質を向上させ、職場環境をより安全で健康的なものにすることを狙っています。

■ これにより、今後40年間で1,700件の肺がんや19,000件のその他の疾病を予防し、最大11億6,000万ユーロの医療費削減が見込まれます。

■ 欧州委員会の提案は、欧州議会および理事会で審議されます。採択されると、加盟国は2年間で本指令を国内法に組み込む必要があります。

■ この提案は、「2021-2027年労働安全衛生戦略枠組み」に依拠する公約の履行であり、欧州社会の権利に基づく職業上の健康安全目標の達成を支援します。さらに、「欧州がん対策計画」および「欧州保健連合」にも貢献します。

参考情報

欧州委員会、新たな化学物質暴露基準を導入することで、労働者の保護を強化


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