EU|REACH規則を改正し、発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR)物質を制限するための規則の公布
2025-09-08

発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR)物質の制限について

2025年08月11日、化学物質規制に関するREACH規則(EC)1907/2006の附属書XVIIを改正する規則(EU)2025/1731がEU官報にて公布されました。本改正では新たに発がん性、生殖細胞変異原性または生殖毒性(CMR)に分類された物質を規制対象に追加するとともに、航空燃料に含まれるクメンに関して一部の適用除外を認めています。

背景

■ REACH規則は、EUにおける化学物質の登録、評価、認可および制限を定めた包括的な制度であり、消費者や環境を有害化学物質から保護するための中核的な法枠組みです。その中で附属書XVIIは「制限」に関する規定を置いており、とくに28~30条目では、CMRカテゴリー1Aまたは1Bに分類される物質を一般市民への供給目的で市場に出すことや使用することを禁止しています。この「CMR分類」は、別の規則であるCLP規則(EC)1272/2008に基づき決定され、定期的に更新されます。

■ 今回の改正は、CLP規則を改正した委任規則(EU)2024/197により新たにCMRカテゴリー1Bと分類された物質をREACH規則附属書XVIIの対象に反映させることを目的としています。これにより、特定の農薬成分、添加剤、樹脂原料、難燃剤などが新たに制限対象となり、消費者向け製品への流通や使用が制限されます。

■ また、2023年の規則(EU)2023/1132によりクメンが既に附属書XVIIに追加されていましたが、クメンは小型飛行機用の航空燃料にも含まれており、非職業的な操縦者(アマチュアパイロット)も利用するため、一般消費者向け供給の禁止対象となっていました。一方で、ガソリンやディーゼル燃料といった自動車用燃料には同様の規制が適用されていないことから、航空燃料との取り扱いに不整合が生じていました。この状況を是正し、航空燃料に含まれるクメンを一定条件下で制限の適用除外とする措置が盛り込まれる必要性が指摘されていました。

概要

■ 規則(EU)2025/1731は、REACH規則附属書XVIIの複数の附属書を改正するものです。

■ まず、附属書XVIIにおいて、新たにCMRカテゴリー1Bに分類された物質が追加されました。具体的には、農薬成分のジウロン(diuron)、難燃剤のテトラブロモビスフェノールA、硬化剤や添加剤として使用されるN,N-ジメチル-p-トルイジン、食品加工や化学反応で副生成される4-メチルイミダゾールなどが含まれています。さらに、光重合開始剤や有機スズ化合物、エポキシ樹脂関連物質、ビスフェノールAFなど、消費者製品に混入し得る多様な物質が制限対象に組み込まれました。これらはいずれも発がん性、生殖毒性などの深刻な健康リスクが確認されている物質です。

■ また、適用除外規定が追加されました。具体的には、クメン(CAS No 98-82-8, EC No 202-704-5)について、一定の規格(英国国防規格、ASTM規格など)に準拠した航空用ケロシン(Jet-A、Jet-A1など)や航空用ガソリンに含まれる場合には、制限の対象外とする旨が明記されました。これにより、非職業的パイロットが使用する小型航空機燃料についても供給が継続可能となり、従来の自動車燃料との規制バランスが調整されました。

■ 施行時期については、新たに追加されたCMRカテゴリー1B物質に関する制限は、CLP規則改正の発効日である2025年9月1日から適用されます。ただし、事業者が自主的に早期適用することは妨げられていません。クメンに関する適用除外は規則の発効と同時に効力を持ちます。

参考情報

規則(EU)2025/1731


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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