EU|欧州委員会、Fガス等に関する諸規則の手続き簡素化を提案
2025-07-22

Fガス等の新たな規則案について

2025年05月21日、欧州委員会は、Fガス規則を含む複数のEU法に基づく手続き等の簡素化を目的として、新たな規則案について提案しました。

背景

■ 欧州委員会は「簡素化オムニバス・パッケージ」としてさまざまな規制の簡素化を段階的に進めており、これまでに合計で80億ユーロ相当の行政コスト削減を目標として掲げてきました。特に中小企業や中堅企業が直面する過剰な規制や手続きの負担を軽減し、単一市場全体での成長・投資を促進する必要が指摘されていました。

■ 新たな企業区分「スモール・ミッドキャップ(SMC)」の導入を通じて、従業員数が250人を超えたことで急激に義務が増す「段差効果」の緩和が重視されていました。

■ また、環境、個人情報保護、デジタル移行といった分野における現行規則の見直しも含まれており、企業の現実的な運営実態に即した柔軟な対応が追求されています。

概要

■ 本提案は、「簡素化オムニバス・パッケージ」の第四回目に当たります。

■ まず新たな企業区分「スモール・ミッドキャップ(SMC)」の導入が注目されます。SMCは、従業員数750人未満で、売上高が最大1億5,000万ユーロ、または総資産1億2,900万ユーロ以下の企業と定義され、EU域内には約3万8,000社が該当します。これらの企業は、これまで中小企業(SME)のみに適用されていた簡素な規則や例外措置(GDPRにおける記録義務の除外、株式公開時の目論見書の簡略化など)の一部を初めて利用できるようになります。

■ Fガス規則に関しては、現在すべての輸出入業者がEUのFガス・ポータルへの登録を義務付けられており、毎月約2,000社(主に小規模な中古車ディーラー)が新たに登録されています。今回の見直し案では、一定の取引量を下回る小規模事業者は2026年から登録義務を免除される予定で、これにより約1万社が恩恵を受けると見込まれます。これらの変更は、気候政策目標に影響を与えずに行政手続きを簡素化することを目指しています。

■ 個人情報保護においては、個人データ処理・移動に関する自然人保護規則(一般データ保護規則GDPR)(EU)2016/679に基づく記録保持義務が見直され、SME・SMC・従業員750人未満の団体については、高リスクなデータ処理を行う場合に限り記録が義務化されるようになります。これにより、企業は重要度の高い分野にリソースを集中できるようになります。

■ また、製品関連規制において、現在も残る紙ベースの適合宣言書や使用説明書などの提出義務を廃止し、デジタル化を促進する提案も含まれています。これにより、企業は情報の提出・配布がより容易となり、各国当局も効率的に規制順守状況を把握できるようになります。

■ さらに、EU全域の調和規格が未整備な場合でも、企業が自社製品の適合性を証明できるように共通仕様を提供する方針が示されており、これにより法的確実性が向上し、競争力のある製品展開がしやすくなります。

■ バッテリーに関するデューデリジェンス義務については、企業の準備期間を確保するために、履行期限を2025年から2027年へと2年間延期すると同時に、ガイドラインの発行時期も義務発効の1年前に前倒しすることで、円滑な制度導入を支援する方針が示されています。


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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