化学物質の規制強化について
2025年07月14日、欧州委員会は特定の化学物質の使用、市場流通、輸出入に関して規制強化するための規則案の意見募集を開始しました。期限は08月11日までとなっています。
背景
■ 有害化学物質輸出入規則(PIC規則)(EU)649/2012は、特定の危険化学品および農薬の事前同意手続きについて定めたロッテルダム条約をEUにおいて実施するものです。
■ 本規則の背景には、有害化学物質に関するEU法の進展および国際条約、特にロッテルダム条約およびストックホルム条約の決定があります。有害化学物質輸出入規則(PIC規則)(EU)649/2012の第23条第1項では、欧州委員会が少なくとも年に一度、EU法およびロッテルダム条約の進展に基づき、同規則の附属書を見直すことが義務付けられています。
■ 前回の見直し(2024年10月)以降、植物保護製品規則(PPPR)(EC)1107/2009、殺生物性製品規則(BPR)(EU)528/2012、およびREACH規則(EC)1907/2006に基づき、いくつかの物質に対する最終的な規制措置が導入されました。
■ また、2025年04月28日から05月09日にかけて開催されたロッテルダム条約第12回締約国会議において、追加の化学物質が附属書に収載されることが決定されました。さらに、2023年05月に行われたストックホルム条約第11回締約国会議では、新たにいくつかの物質が附属書に追加され、難分解性有機化合物規則(POPs規則)(EU)2019/1021にも反映されました。
■ その結果として、今上記の動きを踏まえ、多数の農薬・産業用化学物質について、附属書への追加・修正が行われることとなりました。
概要
■ 本委任規則案は、主に下記のような変更が行うものです。
- 附属書I(化学物質の輸出入に関するリスト)の改正
● 使用禁止または非承認の化学物質(例:スルフリルフルオリド、カルベンダジム、メトリブジンなど)が附属書Iのパート1およびパート2に追加されます。
● 特定の殺菌剤・除草剤(ドデモルフ、フェンピラザミン、フルメトラリンなど)も、承認プロセスからの撤退や分類(がん原性、生殖毒性等)によりリストに追加されました。
● PHMBという殺生物性物質も使用が大幅に制限されたことから、附属書Iに追加されました。
- 高度なリスクを持つ産業化学物質の規制強化
● DEHP、DBP、三酸化二ヒ素、トリクロロエチレン、クロム酸塩類など、人の健康や環境に重大なリスクをもたらす物質がリストに追加されました。これらは、REACH規則の附属書XVIIで上市および一般向け供給が禁止されているため、実質的に産業用化学物質としても使用が制限されています。
- 高懸念物質(SVHC)の取り扱い
● UV-328など、REACH附属書XIVに基づく認可対象物質で、現在認可が付与されていない物質も、附属書Iのパート1およびパート2に追加されました。
- ロッテルダムおよびストックホルム条約による追加物質の反映
● カルボスルファンおよびフェンチオン’特定製剤)がロッテルダム条約に追加されたことから、附属書Iのパート3に記載されました。
● すでに附属書Iのパート2に記載されていたカルボスルファンは削除され、整理されました。
● ストックホルム条約で指定されたDechlorane Plus、メトキシクロル、UV-328も、附属書Vに追加されました。
- 誤記訂正
● 附属書Iパート3における物質「テルブホス」のHSコードが誤っていたため、「ex 3808.59」から「ex 3808.91」に修正されました。
- 適用時期
● 本規則は2026年01月01日より適用される予定です。
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