7月14日、英国環境・食糧・農村地域省(Defra)はパブリックコンサルテーションを開始しました(締切:2025年9月8日)。その中核的な内容は、UK REACH規則の移行登録締切日の延期についてです。当初2026年10月に予定されていた最初の締切は、今のところ、延期されることが確実視されています。
この記事では、REACH24Hがこの延期の背景にある理由、新しい締切日、そして最も重要なこと、皆様にどのような影響があるのかを分かりやすく解説します。
なぜ延期されるのか? 英国の「コスト削減・効率化」新モデル(ATRm)を解明
今回の延期の根本的な理由は、英国当局が全く新しい、よりコストの低い登録システム「 UK REACH の代替移行登録モデル 」が構築されているからです。
ご存知の通り、ブレグジット後のUK REACHは、EU REACHの枠組みをほぼそのまま踏襲しており、企業に完全かつ高価なデータ一式の提出が求められています。これは関連化学企業にとって大きな財政的負担となり、多くの企業が英国市場からの撤退を検討するほどでした。英国政府はこの問題を認識し、「代替移行登録モデル」の開発に着手しました。その核心的な目標は、高いレベルの健康および環境基準を維持しつつ、企業のコンプライアンスコストを大幅に削減することにあります。
しかし、真新しい規制体系をゼロから構築し立法することは、予想をはるかに超える複雑さでした。英国政府は、2026年10月(現在の最初の締切日)までに「代替移行登録モデル」の立法を完了し、業界に十分な準備期間を与えることはできないと率直に認めています。したがって、今回の延期は、法的な締切日を現実の状況に合わせるための必然的な措置です。
新しい締切日はいつか? 政府が推奨する「プラン1」
今回のコンサルテーションで、英国政府は3つの新しい締切日提案を提示しました。そのうち、プラン1は政府が明確に推奨する選択肢です。
3つのプランは以下の通りです:
なぜ政府はプラン1を推奨するのか?
このプランは、最初の、そして最も高いデータ要件を持つ登録レベルに対し、最大3年間の猶予期間を与えます。これにより、政府と企業は最も十分な準備期間を持つことができます。同時に、後続の2つの締切日までの間隔が2年から1年に短縮されます。政府は新しいATRmモデルが企業のデータ負担を大幅に軽減するため、1年間の準備期間で十分であると考えています。これにより、企業の負担を軽減しつつ、UK REACH規制当局が必要なデータを迅速に取得できるようになり、あらゆる関係者のニーズのバランスを取る現実的な選択肢となっています。
皆様の企業にとっての意味は?
最も直接的なメリット:データ(Letter of Access)購入の一時停止
最も即効性のあるメリットは、皆様の企業が今後1~2年以内に計画していたUK REACH登録に必要なデータ(Letter of Access)の購入費用や、完全な書類一式を準備する費用を、一時的に停止・延期できることです。
サプライチェーンの安定化、顧客関係との強化
高額な登録コストは、多くの企業を躊躇させ、特定の製品を英国市場から撤退させることを検討させるほどでした。締切日の延期は、このリスクを大幅に軽減し、英国における重要な化学品の継続的な供給を保障するのに役立ちます。
核心的な課題:延期の「不確実性」への対応
延期は良いことですが、同時に規制の決定がより遅れることを意味します。英国政府も、現段階では最終的にどのような情報を提出する必要があるのかを100%確定できないことを認めています。したがって、企業が直面する課題は、「コストをどう負担するか」から「不確実性をどう管理するか」へと転換しています。
REACH24Hは、UK REACH関連政策を引き続き追跡し、中国企業に英国市場における化学品コンプライアンスの最新情報を提供しています。
既存のコンプライアンス義務を維持する
延期は「免責」を意味しません。UK REACHにおける既存の義務(DUIN届出、「ゼロデータ」登録、英国の顧客への最新のコンプライアンス適合安全データシート(SDS)の提供など)は、引き続き遵守する必要があります。
まとめ
今回のUK REACH移行登録締切日の延長は、英国がブレグジット後に、独立した現実的な規制の道を模索している明確なシグナルです。将来の英国化学品市場は、EUモデルの単純なコピーではなく、規制負担はより軽くなるかつ法執行は引き続き厳格な新しい体系となっています。
企業にとって、この期間を利用して、英国の新規則を深く理解し、柔軟に戦略を調整し、パートナーと効率的にコミュニケーションを取ることで、将来の英国市場においてより有利な地位を占めることができるでしょう。