EU森林破壊防止規則(EUDR)解説シリーズ3:規制主体
2025-08-06

EU市場に関わる企業にとって、EU森林破壊防止規則(EUDR)の規制対象と自社の役割を的確に把握することは、コンプライアンス体制を構築、サプライチェーンを円滑に保つための基本となります。

本稿では、規則の条文と業界のシナリオを組み合わせ、規制主体の分類と責任の範囲を体系的に整理し、企業に明確な指針を提供します。

EUDRの直接的な規制対象:EU域内の企業

EUDRは、EU域内で規制対象商品(およびその派生品)の製造、輸入、輸出、販売を行う事業者を直接的に規制します。これには主に2つの役割があり、それぞれが明確なコンプライアンス義務が課せられます。

生産者・輸入者・輸出者:市場参入の「第一の防衛線」


この主体は、規制対象となる商品をEU域内で初めて市場に投入する事業者(例えば、EU域内の生産者、第三国から商品を輸入する輸入者)、またはEUから、商品を初めて他の地域へ輸出する企業を指し、規則では「オペレーター(Operator)」と定義されています。例えば、以下のような事業者が含まれます。


  • インドネシアからパーム油を輸入し、ステアリン酸の加工に使用するEUの輸入者;

  • ベルギーの工場でパーム油をステアリン酸に加工する生産者;

  • EUで生産されたゴムタイヤを南米市場に輸出するEUの輸出;


それらの主要な責任は以下の通りです。


  • EU市場に輸出入する商品が「森林破壊防止」および合法的な生産要件を満たしていることを確認する;

  • 製品のサプライチェーン全体にわたるデューデリジェンスを主導し、デューデリジェンス声明(DDS)を作成・提出する;

  • サプライチェーンの入り口としての責任主体として、商品のコンプライアンスに関する主要な検証義務を負う;


流通業者・販売業者:サプライチェーン流通の「コンプライアンスの守護者」


EUDRは、生産者・輸入者が商品をEU市場に投入した後、EU域内のサプライチェーンで二次以降の販売取引を行う企業も直接的に管理します。規則では「トレーダー(Trader)」と定義されています。例えば、以下のような事業者が該当します。


  • フランスの輸入業者からコーヒー豆を仕入れ、EU各国のチェーンカフェに販売する商社;

  • ドイツ産のゴム原料を大量に仕入れ、イタリアのタイヤ工場に供給する地域流通業者;

  • ステアリン酸(パーム油由来)をスペインの化粧品工場に転売する化学品販売業者;


それらの主要な責任は以下の点に集約されます。


  • 川上の商品がデューデリジェンスを実施しているか確認し、流通する商品のコンプライアンスを検証する;

  • サプライチェーンの追跡情報を適切に保管し、EU域内での商品のトレーサビリティを確保する;

  • 川下のサプライチェーンにコンプライアンス情報(DDS番号や関連証明など)を伝達し、サプライチェーン全体のコンプライアンスを維持する;

EUDRの間接的な規制対象:非EUの供給業者

EUDRの直接的な規制対象はEU域内の企業に限定されますが、サプライチェーン追跡の必然的な要件に基づき、非EUの供給業者(例えば、中国からEUに規制対象となる商品を輸出する化学品、食品などの企業)は「間接的な規制対象」となります。彼らは、必要な協力責任を負う必要があります。EU域内の生産者や輸入者は、自らのコンプライアンス義務を果たすために、デューデリジェンスの立証責任を川上に拡大し、非EUの供給業者に情報の提供を求めます。

例えば:


(1)中国のある化学品企業がステアリン酸(原料はパーム油)をEUに輸出する際、EUの輸入業者はパーム油の原産地が「森林破壊防止」および「合法的に生産」されたものであることの証明(生産過程の環境承認文書などを含む)が要求されます


(2)中国のコーヒー生豆輸出業者は、EUの顧客に対し、コーヒー豆のプランテーションが「森林破壊防止」および「合法的に生産」されたものであることの証明(現地の労働関連のコンプライアンス記録などを含む)を提出する必要があります;


非EUの供給業者が上記の要求を満たせない場合、EU域内の企業はコンプライアンス検証を完了できず、協力を停止せざるを得なくなります。その結果、商品はEU市場への参入資格を失うことになってしまいます。

認定代理人:コンプライアンス手続きの「サポーター」

EU域内の生産者・輸入者・流通業者は、EU域内の自然人または法人を認定代理人として書面で指名し、コンプライアンス業務の支援を委託できます。規則によると、認定代理人の主要な職務は技術的な補助であり、主に公式システムでのデューデリジェンス 声明(DDS)の代理提出などに含まれます。

明確にしておくべきのは、認定代理人はEUDRの規制対象ではなく、商品のコンプライアンスに対する最終的な責任を負いません。関連する責任は、委託したEU域内の企業が引き続き負います。


REACH24Hのアイルランド子会社は、専門的な資格と現地でのサービス能力を有しており、EU域内の企業がコンプライアンス手続きの運用リスクを効果的に低減し、コンプライアンスプロセスを急速に推進することを支援してまいります。

まとめ

EUDRは、「直接規制+間接的影響+補助執行」の主体体系を明確にすることで、化学品や食品などの業界のサプライチェーン全体を網羅するコンプライアンスネットワークを構築しました。

EU域内の企業は、その役割に応じてそれぞれの主要な責任を果たす必要があります。非EUの供給業者は、コンプライアンスへの協力意識を強化する必要があり、認定代理人は専門的な補助力として効率を向上させることができます。これら3つの主体が協働して初めて、EU市場でのコンプライアンス運営が確保され、サプライチェーンの安定に強固な保証が提供できるのです。


次回は「デューデリジェンスの具体的な要件と実務のポイント」について深く掘り下げて解説しますので、ご期待ください。


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