再生プラスチック産業は、環境意識の向上と規制による圧力によって大きな変革を遂げつつあります。このテーマは、2025年9月11日に開催された第17回グローバル化学品規制年度サミット(CRAC2025)において重要な議題となり、中国資源再生協会プラスチックリサイクル分会(CRRA)の事務局長である王永剛氏が、業界の現状と将来の動向について基調講演を行いました。
プラスチック廃棄物削減の世界的状況
プラスチック汚染は、持続可能な発展に深刻な影響を及ぼす主要な地球環境問題として浮上しています。これを受けて、国際連合は2022年に、プラスチックのライフサイクル全体を対象とする法的拘束力のある「グローバル・プラスチック条約(国際プラスチック管理条約)」の交渉を開始しました。交渉の進展は遅れているものの、各国・地域では独自の政策が進められ、プラスチック廃棄物の削減に取り組んでいます。例として、EU包装・包装廃棄物規則 2025/40(PPWR)、EUにおける新たな使用済み車両規則(ELV規則)の提案、さらに英国のプラスチック包装税が挙げられます。これらの政策は、プラスチック包装に一定割合の再生材を含めることを義務づけることで、再生プラスチックの利用拡大を促しています。
中国産業の課題と機会
王氏によると、中国のプラスチック生産量は数年間にわたり世界一を維持しており、新規プラスチック能力も拡大を続けています。同時に、中国の廃プラスチックリサイクルおよび再処理出力も世界をリードしています。しかし、低付加価値再生プラスチックの供給過剰と高付加価値再生プラスチックの不足という大きな不均衡が存在しています。さらに、分散化された廃プラスチック供給源が、大規模かつ単一カテゴリのリサイクルを複雑化させています。また、標準化リサイクルシステムや効果的な材料追跡メカニズムの欠如により、品質管理体制が一貫しないという問題もあります。
標準化と追跡可能性の促進への取り組み
これらの課題に対処するため、中国はより標準化され体系的な産業の構築に積極的に取り組んでいます。2024年2月9日、国務院は「廃棄物リサイクルシステム構築加速に関する指導意見」を発表し、再生材料の標準システムを改善し、再生材料の認証システムの確立を研究し、国際協力と相互承認を促進する必要性を強調しました。また、再生材料の応用を拡大するための行動を実施し、自動車や電子機器分野の製造業者に再生材料の使用を増やすよう指導することも求めています。
さらに、2024年3月13日、国務院は「大型設備更新および消費財交換促進のための行動計画」を発表し、”再生プラスチックや金属などの再生材料に関する国際基準を満たす情報追跡システムの構築を模索する”意向を明確に示しました。2025年の政府業務報告でも、”再生材料の使用を積極的に推進する”重要性が強調されました。
王氏は、中国の国家発展改革委員会(NDRC)が再生材料の使用拡大に向けた政策を研究しており、年末までに計画が発表される予定であると述べました。
また、CRRAが行っている取り組みについても紹介しました。2022年以降、廃プラスチック選別・流通センターのリストを発表しており、これまでに4回にわたり62のセンターが指定され、より構造化され組織的な収集システムの構築を目指しています。
CRRAは再生プラスチックの標準化にも注力しており、廃PET、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)の品質等級評価と受け入れに関する団体標準を含む、いくつかの団体標準を発表しています。「団体標準:廃プラスチック取引に関する仕様書」は、廃プラスチックのコードシステムを確立し、標準化された商品としての取引を容易にしています。
リサイクル容易性設計に関しては、王氏は「団体標準:プラスチック製品の収集・再生容易性設計評価指針」を紹介しました。この標準は3年以上前に発表され、現在、推奨国家標準としての策定が進行中です。この標準に基づき、30以上の有名ブランドから80以上の製品が「二重容易性」設計認証(収集と再生が容易な設計)を取得しています。
世界最大の再生資源供給国である中国は、信頼性の高い独立した追跡・検証システムの必要性を強く認識しています。これは、業界の信頼性と国際競争力を高めるうえでの重要な課題となっています。現在、追跡可能性に関する国家標準の策定が進められており、「再生プラスチックの生産・販売管理システムに関する要件」や「再生材料の信頼性追跡システム―データ収集および利用に関する仕様」などが含まれます。さらに、CRRAは、再生プラスチックの情報追跡性と検証を目的とした客観的かつ中立的なプラットフォームを開発し、リサイクル産業における「信用評価システム」の構築を進めています。このシステムは国際的な追跡可能性システムとの整合を図り、相互承認の獲得を目指して設計されています。これらの取り組みにより、中国は最終的に再生資源分野における国際競争力の強化を目指しています。