WTOがEU化粧品規則の改正提案を通知、立法の簡素化と規制負担の軽減へ
2025-07-29

2025年7月16日、欧州委員会はWTOにG/TBT/N/EU/1148号通報が提出されました。これは、2025年7月8日に欧州委員会が発表した提案COM(2025)531との内容が同一であり、EUの3つの規則:CLP規則((EC) No 1272/2008)、化粧品規則((EC) No 1223/2009)および肥料管理規則((EU) 2019/1009)の既存条項について、簡素化の要求が提示されるものです。


特にEU化粧品規則((EC) No 1223/2009)に関しては、化粧品への使用が許可される物質の収載手続きの改訂、ナノマテリアルやCMR物質(発がん性、変異原性、生殖毒性物質)などの規制要件の最適化が提案されています。


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G/TBT/N/EU/1148号通報


改正の背景


化学産業はEUの経済構造にとって極めて重要です。しかし、企業は過度な規制が投資に対する大きな障害になっていると感じています。これを受けて、EUは立法の簡素化、規制負担の軽減を図り、ビジネスプロセスの簡素化と単一市場のさらなる統合を進めようとしています。


今回の提案は、EUのCLP規則((EC) No 1272/2008)、化粧品規則((EC) No 1223/2009)および肥料管理規則((EU) 2019/1009)が簡素化・最適化され、化学産業および関連産業全体の競争力を高め、発展のグリーン化を促進しつつ、人間の健康と環境保護の水準を維持することを目指しています。


業界の課題


EU化粧品規則が2013年に発効して以来、原料規制に移行期間が設けられてこなかったことが多くの企業に深刻な課題をもたらしてきました。


例えば、欧州委員会は、ジンクピリチオン(Zinc Pyrithione)やブチルフェニルメチルプロパナール(Butylphenyl Methylpropional、通称リリアール)など、化粧品で一般的に使用される成分の適用除外申請を拒否し、これらの物質を禁止物質に追加された後、わずか3ヶ月の移行期間が設定されました。企業は、適用除外基準を実際に適用する際に障害に直面する一方で、製品の処方を調整するための移行期間が足りないと感じていました。


さらに、2023年以降、ティーツリーオイル、ヒドロキシシトロネラール、L-カルボン、スペアミント油など、さまざまな天然油や天然の複雑な成分をCMR物質に分類する提案が相次いで提出されています。


EU市場に出回る化粧品の70%以上が香料を添加しており、そのうち85%以上の製品がこれらの物質を含む可能性が高いことを考えると、これらの分類は業界に大きな影響を与えることになります。現在の規則には天然の複雑な成分に関する具体的な規定が欠けており、香料業界の懸念がさらに激化されています。


解決策


化粧品業界の競争力と革新能力を確保するため、欧州委員会は各加盟国や業界と複数回にわたる意見交換を行い、以下の初期的な解決策案を策定しました:


1. 使用が許可される着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤を規則の付属書に追加する手続きを明確化し、欧州委員会の役割と原料の安全性を評価する上でSCCS(消費者安全科学委員会)が負う責任を詳細に説明します。


2. CMR物質の禁止および適用除外の申請手順について、以下の5つのポイントに分かれています:

a. 適用除外申請を提出する固定期限を新設する。

b. 禁止・制限条項の移行期間を新設する。

c. 適用除外基準を簡素化する。

d. CMRカテゴリー1または2の物質を含む天然の複雑な成分の規制方法を明確化する。

e. CMR特性が皮膚曝露に基づいている場合にのみ禁止が適用されることを明確化する。


3. ナノマテリアルに関する市場参入6ヶ月前までの事前通知要件が廃止され、必要な情報はCPSR(EU 化粧品安全性評価報告書)に移管されます。


4. 「化粧品の成分表示名称リスト」(Glossary of Common Ingredient Names)の作成義務を廃止し、企業および規制当局は、国際的に承認された名称や委員会電子データベース(CosIng)の関連情報を参考できるようにします。


5.加盟国による市場監視状況の定期的な通知要件を廃止し、統一された市場監視・通信プラットフォームICSMS(Information and Communication System for Market Surveillance)を利用して、迅速かつ効率的に情報が共有されることとなります。


今回の提案は、EUの立法簡素化を目的とし、EU単一市場が統合されると同時に、国内企業が海外へ進出するための新たな機会となります。REACH24Hは引き続き法規の動向に注目し、企業が市場の動向を的確に把握できるよう支援します。

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