化粧品原料|INCI名称とは?INCI名称の申請方法とは?INCIの命名規則とは?
2025-04-27

2023年6月8日、中国広州市市場監督管理局は、Μ-コノトキシンが既に備案された化粧品新規原料であり、その他の無関係な原料をΜ-コノトキシンと称することはできないことを明確にしました。

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この問答は業界内で大きな議論を引き起こしました。なぜなら、業界ではΜ-コノトキシンは一つのカテゴリに属する物質群であり、単一の原料ではないという共通認識があるためです。しかし、現在公表されている新規原料「Μ-コノトキシン」は、実際にはΜ-コノトキシンの一種のサブタイプ(μ-conotoxin CnIIIC)に過ぎません。

また、Μ-コノトキシンが「既存の化粧品原料目録(2021年版)」(IECIC)に記載されているアルギニン/リシンポリペプチドの構造と類似していることを考慮し、現在業界の多くの原料メーカーは、化粧品製品の登録・備案の際に「Μ-コノトキシン」の代わりに「アルギニン/リシンポリペプチド」という名称を使用することが一般的となっています。

「アルギニン/リシンポリペプチド」と「Μ-コノトキシン」は実際に通用可能なのでしょうか。「Μ-コノトキシン」は原材料のカテゴリーの名称として、特定のサブタイプの原材料の名称に使用することは合理的なのでしょうか。これらの問題は、化粧品原料の科学的命名に関する業界の考察を引き起こしました。

現在、化粧品配合成分の命名においては、多くの場合、原料メーカーまたは化粧品企業が既存の認識に基づき、または伝統的な名称を踏襲する形で命名を行っています。

では、どのようにして原料の科学的命名を確定すべきでしょうか。原料の命名方法が合理的かどうかはどのように判断すべきでしょうか。REACH24Hは、化粧品成分の国際命名(INCI)を中心に、これらの問題について解説いたします。ぜひご覧ください。

INCI名とは

INCI名は、化粧品の成分を識別するための国際的に認められた体系的名称であり、国際命名委員会(International Nomenclature Committee, INC)によって審査・配布され、最終的に米国パーソナルケア製品協会(Personal Care Products Council, PCPC)の「国際化粧品成分辞典とハンドブック(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook)」およびwINCIオンラインデータベースに公開されます。

その中で、wINCIデータベースは有料会員制であり、会員が原料の完全なモノグラフ(Monograph)を検索して閲覧するには、料金が必要です。モノグラフには、原料のINCI名、INCIモノグラフID、定義、分類、使用目的、出所、商品名およびその他の名称(中国名、日本語名、韓国語名)などの情報が含まれます。

注意すべき点として、INCI名称には法的効力はありません。INCI名称が付与されても、その原料が化粧品への使用を承認されていることを意味せず、またその原料の安全性を保証するものでもありません。

INCI名の一般的な適用シーン

INCI名の適用シーンが多いです

INCI名の命名法は、現在ほとんどの国で権威が認められており、化粧品の命名方法として自国/地域の基準に組み込まれています。そのため、INCI名は国際的に高い認知度と受容度を持っています。

もちろん、一部の国では、自国が定めた化粧品成分名を使用することを要求しており、例えば日本(化粧品原料のINCI名登録)、韓国などです。

欧州連合

Regulation (EC) No 1223/2009に基づき、化粧品ラベルには成分リストを含める必要があり、該当成分の名称は欧州委員会が作成・更新している用語集2(CosIngデータベース)に記載されている一般成分名(INCI名称を含む)を使用して表示しなければなりません。

アメリカ合衆国

Fair Packaging and Labeling Actに基づき、一般的な化粧品の包装およびラベルには、一般名称または通用名称を用いて化粧品成分を表示する必要があります。

また、The Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022(MoCRA)により、化粧品製品のリストにも製品成分名を含める必要があります。

さらに、21 CFR 701.3 COSMETIC LABELING - Designation of ingredients において、化粧品成分が21 CFR 701.30 COSMETIC LABELING - Ingredient names established for cosmetic ingredient labeling に指定されていない場合は、「国際化粧品成分辞典」に採用されている名称(すなわちINCI名称)を優先的に使用することが規定されています。

中国

中国においては、化粧品原料は新規原料と使用済み原料の2種類に分類され、IECICに収載されているかどうかによって新規原料と使用済み原料を区別しています。

科学的規範に基づき、IECICはPCPCが編纂した「国際化粧品成分辞典」(2018年版)に記載されたINCI名称を参照にして化粧品原料名を統一しています。

一部名称の相違

注意すべき点として、IECICはすでに市場に流通している化粧品に使用されていた原料を整理・収載したものであり、「中国薬典」「中国植物誌」なども参考にして補完されています。また、INCもINCI名称を継続的に審査・更新しているため、一部INCI名称には更新や削除が発生することもあります。

そのため、IECICに収載されている一部原料のINCI名称は、現行の「国際化粧品成分辞典」に収載されているINCI名称と若干の相違が生じる場合があります。

新規原料の登録・備案

「化粧品新規原料登録備案資料管理規定」に基づき、化粧品新規原料サンプルのラベルには原料のINCI名称を記載する必要があり、新規原料登録・備案の際にも新規原料のINCI名称及びそのID番号、または英語等の外国語名称を提供しなければなりません。

成品の登録・備案

「化粧品登録備案資料管理規定」に基づき、化粧品製品の登録・備案時には製品処方に全成分の名称を提供する必要があり、現在はIECICに記載されている標準中国語名称、INCI名称、または英語名称を統一して使用しています。処方中に安全性モニタリング中の化粧品新規原料が含まれている場合には、既に登録または備案されている原料名称を使用しなければなりません。

名称の参考

化粧品原料の監督管理を強化し、国際化粧品原料標準中国語名称の命名をさらに規範化するため、国家薬監局はPCPCの「国際化粧品成分辞典とハンドブック」の翻訳を定期的に組織しています。

現在、「国際化粧品原料標準中文名称目録(2010年版)」および「国際化粧品標準中国語名称目録(2018年版)(意見募集稿)」が作成されており、新規原料の登録・備案時に原料標準中国語名称を策定する際の参考資料とされています。

どのような原料がINCI名称申請を行ったほうがいいですか

シナリオ1:現在化粧品業界への進出を目指しており、ある原料がIECICに記載されているいくつかの原料名称と非常に似ていますが、どの名称を選べばよりコンプライアンスに適合するか判断できない。

シナリオ2:化粧品用途向けの全く新しい原料を開発しましたが、当該原料は国内外でほとんど報告されておらず、どのような名称を付けたほうがいいですか。

シナリオ3:新たに原料を開発し、中国において化粧品新原料申請を行おうとしますが、当該原料はIECICに記載されている既存の原料と類似しています。定めた新原料の名称が新原料申請時に受理されますか。

上記3つのシナリオに対して、まず原料が使用済み原料(IECICに収載されている)であるかどうかを判断することを推奨します。

1.使用済み原料の場合
使用済み原料(すなわちIECICに収載されている原料)については、原料の実際の由来、製造工程、実際の性質及び規格等に基づき、国際公式データベース(例:欧州CosIng、米国PCPCなど)に記載されている原料の定義及び由来と照らし合わせて総合的に判断したほうがいいです。

なお、判断が困難な場合は、INCI名称申請を行い、PCPC及びINCによる審定を経た原料標準INCI名称を取得することで、製品のコンプライアンスをより確実に確保することができます。

2.新原料/判断困難な場合
新原料登録・届出を予定している原料について、当該原料が新原料に該当するか判断できない場合、または既存情報に基づいて原料の科学的命名が判断できない場合、INCI名称申請を行い、原料の科学名称を取得したほうがいいです。

また、付与されたINCI名称とIECICとの対比結果に基づき、当該原料が中国において化粧品新原料に該当するかを判断することもできます。

INCI名の申請方法

INCI名を申請する際、申請者は原料の種類に応じた資料を収集し、PCPCのウェブサイトを通じて申請を行います。申請期間はおおよそ3〜6ヶ月です。

INCI名申請の流れは以下の通りです:

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INCは通常、2月、4月、6月、9月、11月に会議を開催し、申請者は会議開始の6〜8週間前にINCI名申請を提出する必要があります。INCI名の割り当て結果と原料のモノグラフ草案は、通常、INC会議終了後1ヶ月程度で完了します。

最終的な割り当て結果では、1つの原料成分には1つのINCI名が対応します。

もし割り当てられたINCI名に異議がある場合、申請者は追加資料と説明を準備し、PCPCにINCI名変更申請を提出し、次回のINC会議で審査されます。

INCI名申請に必要な資料

現在、PCPCシステムには以下の8種類の原料タイプ(INCI名称申請時の原料タイプは、INCI名称命名規則に定められたのと完全に一致するわけではありません)が含まれております。

No.

原料申请のタイプ

その例

1

バイオテクノロジー/動物細胞培養物(培地を含む)

SHEEP ADIPOSE STROMAL CELL CONDITIONED MEDIA, SHEEP DERMAL CELLS LYSATE等

2

バイオテクノロジー/バイオ製品、植物製品、その他

MORINDA CITRIFOLIA FRUIT EXTRACT, LACTOBACILLUS等

3

バイオテクノロジー/発酵技術

SACCHAROMYCES/RICE FERMENT FILTRATE, CHLORELLA FERMENT等

4

バイオテクノロジー/ペプチド(遺伝子組換え;固相/液相)

DIPEPTIDE-4, sr-SPIDER POLYPEPTIDE-1等

5

バイオテクノロジー/植物細胞培養物(培地を含む)

CRITHMUM MARITIMUM CALLUS CULTURE FILTRATE, AJUGA REPTANS MERISTEM CELL CULTURE等

6

一般化学品/無機

SODIUM CHLORIDE, DOLOMITE等

7

一般化学品/有機

GLYCERIN, LINOLEIC ACID等

8

ポリマー/シリコン類

POLYPROPYLENE, METHICONE等

原料タイプごとに申請資料の詳細要求が異なりますが、一般的に必要な資料には以下が含まれます:原料の基本情報(商品名、分子式、CAS番号、構造式、ラテン名など)、推奨されるINCI名、原料組成、使用目的、製造工程、純度情報など。

INCI命名規則とは

INCI命名規則は「化粧品成分の国際命名法」(INCI Nomenclature)(以下「規約」)に準拠すべきである。産業、技術及び化粧品成分の継続的な革新と発展に伴い、INCは規約の継続的な更新を行います。

現在、INCの更新頻度は年次更新となっています。

化粧品成分のINCI名称を決定するための規約は、一般規約、特定規約及びその他の規約という3つのぶぶんがあります。

一般規約

一般規約は、INCI命名の核心が原料の構成成分に基づき、できる限り簡単な化学名称を使用し、指定されるINCI名称は一般的に原料の化学組成及び純度に基づき、実際の製造工程の種類(ペプチド類を除く)は考慮しません。

特定規約

特定規約は、具体的な成分のカテゴリーに基づき命名規則を細分化しており、植物、発酵物、ペプチド類、鉱物類、アルカン類などが含まれます。

例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)を発酵後、機械処理、加熱処理、酵素分解などの手段で裂解して得られた原料は、規約に基づき「Lactobacillus Ferment Lysate」と命名すべきです。

その他の規約

その他の規約は、特定のINCI命名規則を定義しており、例えばエタンスルホン酸塩(ethanesulfonate)は「Esylate」という用語で表示するなどがあります。

REACH24Hは、各化粧品原料メーカーおよび製品企業におかれましては、化粧品原料の命名における科学的かつ合理的な側面にご注目いただき、自社製品に最も適した命名を行うようご提案申し上げます。









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