米国|EPA、新たに7種類のPFASについて有害物質放出インベントリー(TRI)の報告を要求
2024-03-26

2024年度TRI報告義務の対象となるPFASの総数は196種類となる

2024年01月09日、米国環境保護庁(EPA)は、有害物質排出目録(TRI)の対象化学物質リストに、新たなパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の以下の7種を追加することを発表しました。新規の7種を含む総数196種のPFASが、2024年度よりEPAへの報告義務対象となります。2024年度の報告の提出期限は2025年7月1日となっています。

米国のPFAS対策の背景

バイデン・ハリス政権の公約は事業者や企業に、環境中に排出する有害物質の内容を一般市民や地域社会へ説明する責任を課し、企業の環境への配慮や排出を抑える技術の向上を目指しています。そのため、米国では、各企業は環境中に放出された化学物質の量や廃棄物として管理された化学物質の量などの有害物質の情報を、有害物質放出インベントリー(Toxics Release Inventory、TRI)を通じて報告し、その内容はオンライン上で公開されます。

今回、米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)より、このTRIに新たに7種のパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(per- and polyfluoroalkyl substances、PFAS)が追加されることが、発表されました。この追加は、永遠の化学物質(半永久的に残存するため)と呼ばれるPFASの取り扱いに対処するEPAの「PFAS戦略ロードマップの一環」となっています。

追加された7種類のPFAS

以下の7種類のPFASが、TRIリストに追加され、報告年度2024年よりEPAへの報告義務対象となります。2024年度の報告の提出期限は2025年7月1日となっています。

■ パーフルオロヘキサン酸アンモニウム; 化学抄録サービス登録番号 (CASRN) 21615-47-4

■ リチウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]アザニド; CASRN 90076-65-6

■ パーフルオロヘキサン酸 (PFHxA); CASRN 307-24-4

■ パーフルオロプロパン酸 (PFPrA); CASRN 422-64-0

■ パーフルオロヘキサン酸ナトリウム; CASRN 2923-26-4

■ 1,1,1-トリフルオロ-N-[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタンスルホンアミド;CASRN 82113-65-3

以上6種は、最終の毒性値が決定されたために追加されたPFASです。

■ ベタイン、ジメチル(.γ.-.ω.-パーフルオロ-.γ.-ヒドロ-C8-18-アルキル); CASRN 2816091-53-7

以上1種は、2023年2月に行われたTRIの更新で、物質の内容が機密情報から解除されたために追加されたPFASです。

今回のPFASの新たな追加により、TRI報告義務の対象となるPFASの総数は196種類となりました。

この指定された196種類のPFASを製造、加工、その他一定量以上使用している指定業種の施設および連邦政府施設は、その詳細を2024年度から毎年EPAに報告する義務が生じます。PFASは低濃度で使用されている場合でも、施設はPFASに関する情報の報告を行う義務があります。

参考情報

EPA、新たに7種類のPFASについて有害物質放出インベントリー(TRI)の報告を要求

PFASとは

■ パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(per- and polyfluoroalkyl substances、PFAS、ピーファスと呼ばれる)とは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称で、水と油の両方をはじく効果があり、熱にも強いことから、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーテイング剤として、様々な製品に使われています。例えば、フライパンや防水服、自動車など身近なものに使われています。
■ しかし、このような性質から、分解されずに自然界に残り続けるため、河川や地下水などの環境汚染を引き起こし、いったん人間を含む生物の体内に入ると排出されにくく、がんや成長障害などを誘導するとして、規制強化が進んでいます。

■ 近年EPAはPFAS国家試験戦略を立ち上げ、構造、物理化学的特性、および既存の毒性データの類似性の観点から、PFAS種を細かく分類し、PFASの分類への理解を深め、毒性のあるもしくは曝露されやすいPFASの情報を得ることを目標としています。

有害物質排出インベントリーとは

■ 有害物質排出インベントリー(Toxics Release Inventory、TRI)とは、米国において人の健康を害すもしくは環境汚染を促進する可能性のある特定の有害化学物質の管理状況を、追跡・調査・リスト化し、さらに集計して(オンライン)公表する仕組みです。
■ 米国の指定された産業分野の施設は、各化学物質をどれだけ地域社会や環境(大気、水域、埋め立て等を含む)に放出したか、あるいはリサイクルやエネルギー回収、処理を通じて管理されたかを毎年TRIに報告しなければなりません。

■ 一般に、TRIプログラムの対象となる化学物質は、「がんまたはその他の慢性的な人体への影響」「急性人体への重大な悪影響」「環境への重大な悪影響」を及ぼすものが対象となり、2024年02月現在で、33の化学物質カテゴリーに分けられて約770種類がリストアップされています。

■ TRIへの報告義務のある施設は、通常、製造、金属採掘、発電、化学物質製造、有害廃棄物処理に関わる大規模施設で、標準産業分類(SIC)コード別に対象業種が決められています。米国ではこのTRIを毎年7月に集積して一般に公開することで、企業は環境汚染に対する取り組みをより向上させ、より良い取り組みを行っている企業に対してインセンティブを生み出しています。


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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