EUの新バッテリー規制、EPR制度が全面発効:規制対象となる製品および関連企業の対応策
2025-08-28

2025年8月18日、EUの新バッテリー規制(Regulation (EU) 2023/1542)における拡大生産者責任(EPR)制度の中核条項が正式に施行されました。


この制度は、バッテリーのライフサイクル全体を管理するEUの規制体系の重要な柱の一つであり、EU市場にバッテリーおよびバッテリーを搭載した製品を投入するすべての企業に対し、強制的なコンプライアンス義務を課すものです。基準を満たさない企業は、製品の販売禁止、高額な行政罰金、サプライチェーンへの制限といった法的制裁に直面するため、企業戦略レベルでのコンプライアンス管理が必要です。

規制の背景

  • 規制の変遷: 2023年8月24日に公布された新バッテリー規制は、従来の「バッテリー指令」(2006/66/EC)に代わるものです。これにより、断片的な規制が解消され、バッテリーの「デザイン・生産・販売・使用・回収・再利用」を網羅する統一的な枠組みが構築されました。

  • 中核的な位置付け: EPR制度は、新バッテリー規制を執行する上での重要な一環であり、生産者の主要な責任を明確にすることで、バッテリー産業のグリーン転換を推進します。これは、EUの「カーボンニュートラル」戦略においてバッテリー分野の中核となる施策です。

規制対象と責任主体


規制対象となる製品


EU市場に投入されるすべてのバッテリー(単体または機器に内蔵されたもの)が規制対象となります。具体的な分類と要件は以下の通りです。

バッテリーの分類

具体的な要件

電気自動車用バッテリー

(EVバッテリー)

(electric vehicle batteries)

(EU)No168/2013において、Lクラスのハイブリッド車または電気自動車の動力牽引用に特化しているもの

重量25kg以上

(EU)2018/858において、M、NまたはOクラスのハイブリッド車または電気自動車の動力牽引用に特化しているもの

軽量輸送機器用バッテリー

(LMTバッテリー)

(light means of transport)

密閉型

重量25kg以下

電動自転車、スクーターなどの車輪付き車両の牽引用

SLIバッテリー

(Starting-Lighting-Ignitio)

始動、照明または点火用のあらゆるバッテリー

車両、その他の輸送機器または機械の補助/バックアップ目的で使用されるもの。例えば、(自動車用鉛蓄電池(始動用)

産業用バッテリー

(industrial batteries)

  • 産業用途に特化しているもの

  • 再利用または再利用準備がされているもの

  • 重量5kg以上

  • EV、LMT、SLIバッテリー以外

ポータブルバッテリー

(portable batteries)

  • 密閉型

  • 重量5kg以下

  • 産業用途ではないもの

  • EV、LMT、SLIバッテリー以外

責任主体の分類


以下の主体は、要件に従ってEPR登録を完了しなければなりません。

  • 越境EC/海外販売: EU域外の企業が、ECプラットフォームを通じてEUの最終消費者にバッテリーまたはバッテリー内蔵製品を直接販売する場合。

  • 域内再販売: EU域内に登記された企業が、自社ブランドでバッテリーまたはバッテリー内蔵製品を再販売する場合。

  • 無表示再販売: 再販売する商品に製造者情報が表示されていない場合、同様に生産者責任を負う必要があります。

  • 初回輸入: 初めて他国からバッテリー製品をEU市場に輸入する企業は、直接販売を行わなくても登録が必要です。

EPRの核心義務:4つの強制要件

企業は以下の義務を同時に満たすことで、合法的にEU市場に参入できます。

義務の分類

具体的な要件

地域別登録

製品を販売するEU加盟国ごとに個別にEPR登録を完了し、登録番号を取得する必要がある。

登録には約2~3ヶ月かかり、各国の要件は異なる可能性がある。

認定代理人の指定

EU域外の企業は、登録や申告などの義務を代行し、連帯責任を負うEU域内の認定代理人(AR)を指定しなければならない。

費用全額負担

生産者は、生産者責任組織(PRO)への加入または政府への環境税納付を通じて、使用済みバッテリーの収集、運送およびリサイクル処理にかかる費用を全額負担しなければならない。

費用は通常、バッテリーの種類、重量または容量に基づいて計算される。

統一的な表示義務

基本表示:「×付きゴミ箱」のシンボルと化学成分のシンボル(例えば、Li, Pbなど)を表示する必要がある。

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将来の要件(2027年2月以降):すべてのバッテリーに、EPR登録番号、リサイクルガイドなどの追跡可能な情報を含むQRコードを付加する必要がある。

規制の施行タイムライン


2023年:基本管理の開始

管理の方向性

責任主体

中核的な要件

廃棄バッテリーの回収率

生産者/生産者責任組織(PRO)

1.すべての廃棄バッテリーを回収する(携帯バッテリーを初めて市場に投入した加盟国のみ)

2.段階的に回収率目標を設定する

2024年:安全性と性能管理の強化

管理の方向性

実施日

規制対象

中核的な要件

化学物質の制限

2024年2月18日

すべてのバッテリータイプ

制限リストにある有害化学物質の使用を制限

健康寿命情報

2024年8月18日

LMTバッテリー/EVバッテリー/定置型蓄電システム

バッテリーの健康度、予想寿命を提供

バッテリーの性能

2024年8月18日

LMT/EV/産業用バッテリー

付属の性能報告書(容量、寿命を含む)

2025年:中核的なコンプライアンス要件の全面実施

管理の方向性

規制対象

中核的な要件

カーボンフットプリント要件(PEF基準)

バッテリーの種類別

1.第三者検証済みのカーボンフットプリントデータ(25年以降)

2.性能等級の区分け(26年以降)

3.しきい値の設定(28年以降)

拡大生産者責任(EPR)

すべてのバッテリーおよびバッテリー内蔵製品

登録完了後に登録番号を提出、未提出の場合は販売禁止

ラベルと表示

すべてのバッテリー

回収シンボル、情報、QRコードを表示

バッテリー回収率

バッテリー/材料の種類別

「汚染者負担原則」(PPP)に基づき、回収費用を負担

2027年:トレーサビリティとサプライチェーン管理の深化

管理の方向性

実施日

規制対象

中核的な要件

バッテリーパスポート

2027年2月18日

LMT/EVバッテリー、2KWh以上の産業用バッテリー

パスポートを作成(型番/単一バッテリー情報を含む)、QRコードでアクセス可能

サプライチェーンデューデリジェンス

2027年8月18日

全サプライチェーン企業

1.サプライチェーンの社会・環境リスクを評価し、デューデリジェンス方針を制定

2.監査計画、早期警戒、是正措置メカニズムを策定

2028年以降:資源循環の強化

管理の方向性

実施日

規制対象

中核的な要件

再生材料比率

2028年8月18日

EV/産業用(蓄電池なし)/SLIバッテリー

コバルト、鉛、リチウム、ニッケルの割合と回収情報を明示

2031年8月18日

EV/産業用(蓄電池なし)/SLIバッテリー

強制的に回収する再生材料使用の最低比率:コバルト16%、鉛85%、リチウム6%、ニッケル6%

2036年8月18日

LMT/EV/産業用(蓄電池なし)/SLIバッテリー

回収率の目標を再引き上げ:コバルト26%、鉛85%、リチウム12%、ニッケル15%

まとめ

企業は、法規のタイムラインを主要な指針として対応計画を策定し、各段階のコンプライアンスの優先順位を明確にし、重要な節目となるタスクにリソースを集中させることで、準備不足による市場参入禁止や行政罰金などのリスクを回避する必要があります。

企業の皆様が効率的に上記の課題に対応できるよう、REACH24Hはワンストップのコンプライアンスサポートを提供しています。主なサービスは以下の通りです。

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