EU|REACH規則附属書17の制限改正-D6を追加し、制限条件を拡充
2024-06-17

D6を追加・制限条件を拡充

2024年05月17日、欧州官報にてEUの化学物質の登録、評価、認可、制限等を規制するREACH規則の附属書17を改正し、D4、D5、D6に係わる制限エントリー(Entry 70)を更新する改正規則が公布されました。従来はD4とD5のみ対象となっていましたが、今回の改正ではD6が追加され、制限内容も「洗い流せる化粧品」に限定されないものとなっています。

注目すべき内容

対象物質の拡大

■ 対象物質は次の3種

Octamethylcyclotetrasiloxane (D4)

CAS No 556-67-2
EC No 209-136-7

Decamethylcyclopentasiloxane (D5)

CAS No 541-02-6
EC No 208-764-9

Dodecamethylcyclohexasiloxane (D6) ★新規追加

CAS No 540-97-6
EC No 208-762-8

制限条件の刷新

■ 2026年06月06日以降、対象物質を、物質単体として、またはほかの物質の成分として、あるいは混合物中に、0.01 wt%以上の濃度で含んで上市してはならない。
(これまでは、「洗い流せる化粧品」限定の制限内容だった)

■ 2026年06月06日以降、繊維、皮革、毛皮のドライクリーニング用溶剤として使用してはならない。

■ 制限条件が厳しくなったことに関連して、制限条件3項から7項では、用途別に個別の適用除外、猶予期間などの規定が置かれている。

概要・背景

■ 2018年02月に、欧州委員会から欧州化学品庁(ECHA)に対して、D6を制限に含めることに関連する提案文書を作成するよう要請がなされた。D6もD4やD5と同様、0.1wt%以上含む場合にはPBT特性を有すると評価されていた。また、既に同3物質は高懸念物質(SVHC)に特定されていた(vPvBを理由に)。

■ 今回の制限の更新にあたっては、水生環境や大気など環境への対象物質の放出の懸念が挙げられている。特に、化粧品への広範な使用が放出の主な原因となっているという。

 

参考情報

■ 改正規則(EU) 2024/1328 

REACH規則の制限とは?

REACH規則の規制の中で最も厳しい規制内容がこの「制限」に係わる内容である。物質の製造、使用または上市から生じるヒト健康または環境に対する許容できないリスクがあり、様々な用途へのリスク評価と社会経済便益の評価に基づいて、EU全体で対処する必要があると判断された物質を規制する制度となっている。この制限対象物質はREACH規則の附属書17に収載され、別途欧州化学品庁(ECHA)がウェブサイト上でも管理している。

制限対象物質の更新

新たに制限対象物質が追加されたり、更新されたりする際には、後の規制化プロセスで見るように、改正規則として欧州官報で公布される。特定され、リストに明記される情報には各物質または物質群ごとに、対象となる物質(群)の範囲詳細と制限条件が含まれる。制限条件は、一般的な規制条件のほか、必要に応じて特定用途または特定状況下での規制条件、猶予期間を設ける項目、適用除外項目、その制限の項目に関係する定義などの情報が含まれる。

対象となる物質(群)の詳細制限条件

(No.) (対象)

EC No.~

CAS No.~

(主となる制限条件)

(特定用途または特定状況下での規制条件)

(猶予期間を設ける項目)

(適用除外項目)

(その制限の項目に関係する定義)

制限対象物質リストのコンプライアンス対応

制限条件の遵守

附属書XVIIに収載されている物質については、同箇所に記載されている制限条件を遵守しなければならない(第67条)。注意が必要なのは、それが物質単体か、混合物か、それとも成形品も対象なのかはそれぞれの条件で異なるため、一つ一つ個別に確認しなければならないことである。加えて、その制限の対象となる行為も、製造なのか、使用なのか、上市なのか、あるいは情報伝達やラベル表示、訓練・教育が必要なのか、などこれも個別に異なっているため、やはりその物質(群)ごとに個別に制限条件を確認しなければならない。個別の制限条件ごとに、細かく遵守期限が決められていることが多い点にも注意しておきたい。

安全データシート(SDS)の更新と提供

制限が課された場合には、その物質およびその物質を含む混合物の受領者(過去12ヶ月以内)に、更新したSDSを遅滞なく、無償で提供しなければならない(第31条)。

SDSが必要とされない物質・混合物の受領者への情報伝達

SDSが必要とされない物質および混合物の受領者に対しても、制限内容が追加・更新された後、制限の詳細情報を遅滞なく、無償で提供しなければならない。(第32条)。


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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