近日、英国政府は政策文書を発表し、PFAS(パーフルオロ及びポリフルオロアルキル物質)のリスク管理においてPMT(残留性・移動性・毒性物質)概念を採用することを明らかにしました。

背景
PFASは安定性が非常に高い化学物質であり、その独特な性能から工業製品や消費財に広く使用されています。しかし、この安定性により環境中で分解されにくく、高い残留性を有しており、これがPFAS規制を推進する主要な要因となっています。
また、PFASは環境および生体システムでの移動能力が高く、そのリスクをさらに高めています。これにより、排出源から離れた水域にも容易に到達する可能性があります。英国環境庁のモニタリングによると、2021年以降、2000件以上の地下水サンプルのうち、46%が検出され、1000件の地表水サンプルでは88%が汚染されていました。魚類サンプルのすべてからもPFASが検出されており、このような広範な分布は生態系への脅威となるだけでなく、水や食物連鎖などを通じて人間の健康にも潜在的な危害を及ぼす可能性があります。
従来の規制体系では、PBT(残留性・移動性・毒性物質)概念が主に用いられてきました。しかし、一部のPFAS物質については、生物体内での蓄積性が低いものの、極めて高い移動性があり、水環境に対して顕著な影響を及ぼす可能性があるため、PBT概念ではそのリスクを完全に把握できない可能性があります。したがって、PFASの潜在的な有害性をより包括的に特定・管理するために、新たな規制概念の提出と導入が必要とされています。
PMT概念とその発展
PMT概念は、PMT(残留性・移動性・毒性物質)およびvPvM(残留性および移動性が極めて高い)という2つの方法を含み、残留性と移動性を併せ持つ化学物質が引き起こす環境リスクをより正確に特定・管理することができます。しかし、現在ではPMT物質の識別に関する国際的な統一基準はありません。欧州連合(EU)はCLP規則においてPMT物質の識別基準を策定しています。この基準はまだEU REACH規則には採用されていませんが、EU REACHのPFASに関する制限提案では、PMT概念に基づく残留性と移動性の組み合わせによるリスクに対する懸念が示されています。このような物質は、十分に管理されていないリスクに直面する恐れがあるからです。
PMT概念は英国のPFASリスク管理を支援
現在、PMT概念は主に英国REACH規則におけるPFASリスク管理行動の指針として用いられていますそれは優先順位を付けるためのツールとして、広範囲かつ持続的で不可逆的な環境汚染を避けるために、さらなる評価が必要な物質を識別することができます。また、PMT概念は英国REACH規則におけるPFAS制限ファイルの作成にも活用され、これらの物質が人の健康、環境、または十分に管理されていないリスクをもたらすかどうかの評価に用いられます。今後、この概念はPFASに限らず、より多くの物質のリスク管理にも使われていくことが期待されています。
さらに、英国はPMT識別基準に関する国際的な議論にも積極的に参加し、それを自国のCLP規則体系に取り入れることを検討しています。これにより、化学物質管理の枠組みがさらに強化される見込みです。
REACH24Hからのアドバイス
PFASのリスク管理においてPMT概念を採用することは、残留性と移動性の両方を有する化学物質がもたらす環境リスク、特に水環境への潜在的脅威を明確に特定・管理することを目的としています。この政策文書では、化学物質の環境への進入に対する予防的管理が、後からの修復や対処よりもはるかに効果的であることが強調されています。これは、環境の発生源管理および水資源保護に対する英国の強い決意を示すものです。
REACH24Hも、英国が今後発表するPFASに関する具体的な管理措置を引き続き注目し、PFAS関連の規制動向を積極的に追跡することで、関連企業に対して正確かつタイムリーなコンプライアンス支援および専門的なサービスを提供してまいります。