欧州連合REACHコンプライアンスの重要ポイント:複雑な製品タイプを三歩で正確に判断—物品か物質/混合物か
2025-06-18

世界的な化学品管理の要求がますます厳しくなる中、欧州連合の「化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則」(REACH)は企業に対してより高いコンプライアンス要求を求めています。

REACHの枠組みの下で、「物品」(article)と「物質/混合物」(substance/mixture)を正しく区別することは、企業が登録、通知、制限義務を履行する上で重要なポイントです。しかし、多くの製品は物品と物質/混合物の境界にあり、分類が複雑で、企業にとって混乱を招くことがよくあります。

企業がこの課題により適切に対応できるように、欧州化学品庁(ECHA)は2025年5月に第4版「物品と物質/混合物の境界ケース目録」(以下「目録」)を発行しました。この「物品識別のバイブル」は業界に明確な指針を提供します。


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REACHにおける物品と物質/混合物の定義

REACH規則では、「物品」(article)とは、製造過程で特定の形状、表面または設計を与えられ、その形状、表面、設計が機能に対して化学成分以上の影響を及ぼす物体を指します。例えば、ドリルはその螺旋状と切削加工で穴あけ機能を果たすため、明確に物品として分類されます。

物質」(substance)とは、自然状態にあるか製造工程により得られた化学元素及びその化合物を指し、その安定性を保持するために添加された安定剤や製造過程で生じた不純物を含みますが、その物質の安定性を損なわず、または組成を変えずに分離可能な溶剤は含みません。

混合物」(mixture)とは、二つ以上の物質で構成される混合物または溶液を指します。

簡単に言うと、物質/混合物はその化学成分が機能に主な影響を与えますが、物品は形状、表面または設計が機能に対して化学成分以上の影響を及ぼします。

境界ケースとして、物質を含む複雑な製品(ライターや再利用可能な冷温パックなど)は物品と物質/混合物の組み合わせと見なされ、それぞれの構成部分を個別に評価する必要があります。

三歩法:製品タイプの判断を支援します

企業が製品タイプを正確に判断できるように、ECHAは「三歩法」を出しています。

コア機能の判定:製品の主な用途は何ですか?

製品の主な機能を明確にすることが、タイプ判断の第一歩です。例えば、ドリルの主な用途は穴あけであり、水溶性プラスチック袋の主な用途は内容物を包み、放出することです。

形態の優先性:第一段階の機能に対して、その形状・表面・設計は化学成分よりも重要ですか?

ドリルの場合、その螺旋形状と切削刃は穴あけ機能を実現するための鍵であり、化学成分は耐久性に影響するのみです。したがって、形状や設計の重要性は化学成分より高いです。

水溶性プラスチック袋については、特定の溶解性設計によって内容物を包み、放出できるため、これも物品に分類されます。

分離可能性:製品に含まれる物質は分離可能ですか?

水溶性プラスチック袋に内容物(洗濯用カプセルなど)がある場合、前段で述べた通りプラスチック袋は物品ですが、内容物(洗剤)は分離可能です。したがって、内容物は物質/混合物であり、製品全体は物品と物質/混合物の組み合わせとなります。

以上の三歩を通じて、企業は機能、形状と化学成分の重要度、物質の分離可否などの要素を分析し、製品タイプを正確に判断できます。

代表的な事例分析


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物品と物質/混合物を正しく区別する重要性

物品と物質/混合物の正確な区別は、企業のその後のコンプライアンス義務に直接影響します。

  • 物品:高懸念物質(SVHC)が0.1%(w/w)を超える場合、通知および情報伝達義務を履行する必要があります。また、年間トン数が1トンを超える場合はSVHCの届出も必要です。物品に意図的に放出される物質が含まれる場合は、登録義務も課されます。

  • 物質/混合物:対応するREACH登録または特定の制限要求に従う必要があります。

  • 組み合わせ製品:物品部分と物質/混合物部分それぞれのコンプライアンス要件を評価する必要があります。例えば、ライターの燃料は物質/混合物として管理し、容器は物品として管理します。

EU向け輸出企業の対応策

ECHAが発行した「目録」は、企業にとってREACH規則下の物品と物質/混合物の判断に関する課題を解決する鍵となります。

明確な事例と科学的な評価方法により、企業はコンプライアンスの課題により自信を持って対応し、製品がEU市場で合法的に流通することを確実にできます。

しかし、技術の進歩や製品の多様化に伴い、境界ケースの複雑さは引き続き増加するため、企業は警戒を怠らず、変化する規制環境に対応してコンプライアンス戦略を適時更新する必要があります。REACH24HはEU向け輸出企業に注意を喚起します

  • 指導文書の熟読:企業はECHAの「物品中物質要求ガイドライン」および「目録」を参照にしし、評価プロセスや事例を理解して規制要件を明確に把握することが重要です。

  • ケース対照:製品を目録の事例と比較し、その機能、形状、化学成分の重要性を分析します。例えば、ライターに類似した製品(キャンプ用ガスストーブなど)は同様の分類ロジックを参考にできます。

  • 専門家への相談:複雑なケースに直面した場合は、専門のコンサルティング機関やECHAに相談し、違反リスクを回避してください。

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