米国|EPA、PFASデータのこれよりもより詳細な報告を義務付ける規則を最終決定
2023-11-02

EPA、TSCAに登録されているPFASから地域社会を守るため、その詳細な報告を義務付ける

2023年09月28日、米国環境保護庁(EPA)は、米国でパーフルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)を製造・使用している事業体に、PFASに関する詳細な情報をEPA、関連機関、および一般市民に提出する規則を最終規則としました。具体的には、提出義務のあるPFASの製造・使用に関する報告書で記載する内容とコード番号が表でまとめられて規則となっています。情報は、最終規則の発効日から18ヶ月以内にEPAに提出されなければならないとされています。ただし、PFASが含まれる成形品の輸入を行っている小規模事業者からの報告については、最終規則の発効日から24ヶ月以内が提出期限となっています。発効日は2023年11月13日となっています。

背景

PFASは、1940年代以降、産業や消費者製品に使用されてきた製造化学物質のカテゴリーで、様々な特性を利用して、焦げ付きにくい調理器具、防水加工された衣服、消火剤などに使用されてきました。しかし、自然界で分解されずに残り続けるため、河川や地下水などの環境汚染を引き起こします。また、人間を含む生物の体内に入ると排出されにくく、がんや成長障害などを誘導するとして、規制強化が進んでいます。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)は、2020年度の国防権限法(National Defense Authorization Act、NDAA)に基づく有害物質管理法(Toxic Substances Control Act、TSCA)において、2011年以降、PFASおよびPFASを含む成形品のすべての製造業者と輸入業者に対して、化学物質の特定、用途、製造・加工量、副産物、環境および健康への影響、労働者のばく露、および廃棄に関連する情報を報告することを義務付けています。また、PFASの危険性が特定された場合には、EPAはこの化学物質が商取引に入る前にそれらのリスクを軽減するための措置を講じています。

ただし、新規PFASの場合、それらがもたらす危険性を定量化し、その規制方法の決定を下すための情報が不十分なことが多いため、EPAの評価は難航し、一定の枠組みの必要性が考えられていました。また、多くのPFASは、環境や人々に残留(生物蓄積)することが知られており、化学物質を直接製造、処理、流通、使用、廃棄する人々だけでなく、蓄積したPFASにさらされる地域社会への影響も考慮する必要があるため、難分解性、生物蓄積と毒性(Persistent, Bioaccumulative and Toxic Chemicals)についても、定性的に評価する枠組みが必要でした。そのため、EPAは、2021年06月に本規則案を提案して以来、2022年04月の中小企業支援検討委員会(Small Business Advocacy Review Panel)、2022年11月の初期規制柔軟性分析(Initial Regulatory Flexibility Analysis)の一般意見募集などにおいて、関係者や一般市民の意見を求める機会を複数設けてきています。

注目すべき内容

今回の最終規則の決定により、EPAだけでなく州政府、地方政府、部族政府も利用できる実用的な情報源とするため、2011年以降に米国で製造または使用されたことが判明している少なくとも1,462種類のPFASに関して、その製造・輸入業者がより詳細な情報を提出する義務が生じています。以下は、この最終規則に記載されている内容の抜粋です。

  • PFASの製造・使用に関する報告書で記載する内容として、「施設のカテゴリー」、「販売製品の使用目的」、「PFAS物質の種類や含有量」、「PFASに晒される労働者数」、「破棄の方法」、「輸入する物品のPFAS最大含有量」を区別するコード番号が、表でまとめられています。

  • 製造業者の報告要件が合理化されています。また、研究開発目的で少量のPFASを製造または使用した者や、成形品に含まれるPFASを米国に輸入する事業者の報告が効率的に行われる枠組みも含まれています。

  • 製造業者は、最終規則の発効日から18ヶ月以内に、このPFAS情報のEPAへの提出が義務付けられています。

  • PFASが含まれている成形品の輸入に関する情報のみを報告する必要がある輸入関連の小規模事業者は、最終規則の発効日から24ヶ月以内に、このPFAS情報のEPAへの提出が義務付けられています。

この規則は、「バイデン・ハリス政権によるPFAS汚染と闘うための行動計画」の2年以上にわたる進展に基づくもので、EPAのPFAS戦略ロードマップにおいて重要な行動と位置付けられています。

参考情報

EPA、PFASデータの報告を義務付ける規則を最終決定

PFAS製品とは

パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(per- and polyfluoroalkyl substances、PFAS、ピーファス)とは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称で、水と油の両方をはじく効果があり、熱にも強いことから、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーテイング剤として、様々な製品に使われています。例えば、フライパンや防水服、自動車など身近なものに使われています。TSCA第8条(b)に基づき、米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)はTSCA化学物質目録(「目録」)を管理しており、この目録には、 TSCAの免除または除外に該当しない、米国で製造、加工、または輸入されるすべての既存化学物質が記載されています。EPAは、2023年02月時点で本規則の対象となる可能性がある、現在TSCAの対象となっている少なくとも1,462のPFASを特定し、そのうちの770は、活性化学物質目録(Active Inventory)に掲載されている(すなわち、米国内で商業的に使用されている)。 アクティブな化学物質のリストには、2006年6月以降に商業的に流通していることが判明した化学物質も含まれている。

有害物質管理法(TSCA)とは

有害物質管理法(Toxic Substances Control Act、TSCA)は、有害な化学物質による人の健康又は環境への影響の不当なリスクを防止することを目的とし、米国連邦議会で5年間の審議を経て1976年10月11日に承認され、1977年01月01日に発効した法律です。TSCAの対象は、農薬、食品、医薬品、化粧品及び医療機器を対象外として「特定の分子的特性を有する有機又は無機の物質」で、これら物質は米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)が作成・保管する製造、輸入又は加工される化学物質の最新リストである「TSCAインベントリー」によって管理されています。そして、リストに含まれる物質を製造、加工、流通、利用又は処分する個人及び企業に対して適用されます。EPAは、このリストに登録される予定の新規物質の届出に対応してリスク評価を審査する一方で、リストに登録されている既存物質の内容・数量報告のリスク評価を審査しています。


本記事の著作権は、株式会社先読に帰属します。なお、記事の相互掲載について、当社と株式会社先読との間で合意がなされています。

転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

規制に関する詳細については、お問い合わせください。
お問い合わせフォーム