米国|成層圏オゾンの保護:プロセス剤として使用するオゾン層破壊物質に関する最新情報
2024-12-02

EPA、オゾン層破壊物質に関する記録保持および報告要件を明確化して最終規則とする

2024年10月10日、環境保護局(EPA)は、プロセス剤として使用するオゾン層破壊物質(ODS)に関する記録保持および報告要件を定め、関連する定義を更新し、最終規則としました。

米国はオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書を締結しており、大気浄化法(CAA)に基づいたこの最終規則により、EPAは毎年収集、集計、報告している情報を明確化しました。この最終規則は2024年11月12日に発効されます。

プロセス剤としてODSを使用している事業体、例えば、産業ガス製造(NAICSコード325120)、その他の基礎無機化学品製造(NAICSコード325180)、およびその他の基礎有機化学品製造(NAICSコード325199)に関わる事業体に影響が及びます。

モントリオール議定書とギガリ改正

モントリオール議定書(Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer)とは、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」に基づき、オゾン層を破壊するおそれのある物質を指定し、これらの物質の製造、消費および貿易を規制することを目的とし、1987年にカナダで採択された議定書のことをいいます。

この議定書のキガリ改正(2019年01月01日により発効)では、代替フロンと呼ばれるハイドロフルオロカーボン(HFC)を、締結国は今後30年間で80%以上削減することを約束しました。主に先進国で製造されたHFCは、塩素を含まずオゾン層破壊の効果は低いものの、温室効果ガスで地球温暖化係数(Global Warming Potential、GWP)が高いため、ギガリ改正で対象となりました。2018年に日本が批准し、2021年までに米国や中国を含む122か国が批准しています。

この最終規則の背景

米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency、EPA)は、1990年に改正された大気浄化法(Clean Air Act 、CAA)改正などに基づいた規制により、オゾン層破壊物質(ozone-depleting substances、ODS)の段階的廃止を実施しています。CAAでは、ODSをクラスIもしくはクラスIIにクラス分けしています。

クラスIの規制物質はフロン、ハロン、四塩化炭素、メチルクロロホルム、臭化メチル、およびハイドロブロモフルオロカーボンなど、オゾン層破壊係数(Ozone Depletion Potential、ODP)が高いものが含まれています。一方、クラスIIの規制物質は、クラスI規制物質よりもODPが低いハイドロクロロフルオロカーボン種(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)のみで構成され、2030年までに、2種類のHCFC(HCFC-123とHCFC-124)以外のすべてのHCFCを段階的に廃止するとしています。

プロセス剤は一般に、他の物質を生産するために使用され、生産中にそれ自体が変化したり破壊されたりすることはないものとされています。ただし、プロセス剤はその微量が最終製品に残ったり、一定量が排出されたりする可能性があります。モントリオール議定書では、締結国はプロセス剤として使用するために生産または輸入されるODSの量を、規制対象ODSの一般要件から除外することで合意しています。

EPAは毎年、米国におけるプロセス剤の使用に関する情報を作成し、モントリオール議定書の事務局である国連環境計画( United Nations Environment Programme、UNEP)に提出しています。2023年10月19日、EPAはこの提出のための、プロセス剤としてのODSの使用に関する記録保持および報告要件を定め、現在の慣行を反映するように定義を更新することを提案していました。

この最終規則の内容

2024年10月10日、連邦規則集(Code of Federal Regulations、CFR)40編(CFR40)「環境保護(Protection of Environment)」パート82「成層圏オゾンの保護」の以下の点などが記載された最終規則となりました。

  1. 定義に「バッチ排出エピソード」、「バッチプロセスまたはバッチ運転」、「副産物」、「連続プロセスまたは運転」、「監視が困難」、「デュアルメカニカルシールポンプおよびデュアルメカニカルシール攪拌機」、「機器」「規制物質サービス中」、「ガスおよび蒸気サービス中」、「重い液体サービス中」、「軽い液体サービス中」、「真空サービス中」、「隔離された中間」、「外部シャフトポンプおよび外部シャフト攪拌機なし」、「運転シナリオ」などが追加されました。加えて、「施設」「工場」の定義が修正されました。

  2. 1回限りの報告、年次報告、および状況報告(変更の事前通知レポートという)の内容が確定されました。82.13「クラスI規制物質の記録および報告要件」、§82.24条「クラスII規制物質の記録および報告要件」が改正されました。クラスⅠもしくはクラスII規制物質を使用する事業体は、§82.25「記録および報告要件」に加え、使用する施設ごとにこれらのセクションを遵守しなければならない、とされました。EPAは、プロセス剤としてODSを使用する事業体に対する1回限りの報告、年次報告、および変更の事前通知レポートの内容、排出量を推定する方法、および関連する記録に関して「記録保持および報告要件」を定めています。

  3. 82.25「産業排出源からの規制物質の排出」が追加されました。主に、排出量などを計算する計算式などが追加されました。本措置において確定される1回限りの年次報告要件と整合させるため、EPAは、規制物質をプロセス処理剤として使用する事業体が排出量を報告する要件を確定しました。

  4. 82.26サブパートに基づき「本編に基づき提出されたデータの扱い」が変更されました。機密情報の取り扱い方法が記載されました。

この最終規則は2024年11月12日に発効されます。

参考情報

成層圏オゾンの保護:プロセス剤として使用するオゾン層破壊物質に関する最新情報


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