2025年2月18日、日本の環境省は「化学物質に関するグローバル枠組み(Global Framework on Chemicals: GFC)-地球を化学物質と廃棄物の有害な影響から解放する-国内実施計画(案)」を正式に公表しました。この計画案は、2023年9月にドイツで開催された第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)で採択された新たな国際枠組み「GFC」に基づくもので、現在、2025年3月21日までパブリックコメントを募集しています。市民、事業者、研究者など多様な関係者からの意見を反映し、化学物質のライフサイクル全体を管理する包括的な国内計画を完成させることを目指しています。
背景と目的
GFCは、2006年に始まった「国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)」の後継として誕生した枠組みです。その主な目的は、化学物質と廃棄物の有害な影響を予防、もしくは最小化することで、環境と人の健康を守ることです。日本では、2024年4月に政府内に「GFC関係省庁連絡会議」を設置し、農業、環境、保健などの分野を横断する関係省庁や、産業界、学術界、市民社会などのステークホルダーと協力して計画策定を進めてきました。「化学物質と環境に関する政策対話」での議論や、これまでに寄せられた意見を踏まえ、今回、国内実施計画案がまとめられました。
この計画は、化学物質の生産から使用、廃棄に至る「全ライフサイクル管理」を軸に、国際基準と整合性を保ちつつ、日本の現状に即した具体的な施策と将来の方向性を示しています。
GFCの五大戦略目的
計画案では、GFCが掲げる以下5つの戦略目的に基づき、具体的な国内行動が提案されています。
戦略的目的 A:ライフサイクルを通じて、化学物質の安全で持続可能な管理を支援し、達成するための法的枠組み、組織的メカニズム及び能力が整備されている。
戦略的目的B:情報に基づいた意思決定と行動を可能にするために、包括的で十分な知識、データ及び情報が生成され、利用可能で、全ての人に入手可能である。
戦略的目的C:懸念課題が特定され、優先順位が付けられ、対処される。
戦略的目的D:人の健康と環境へのベネフィットが最大化され、リスクが防止され、防止が実行不可能な場合は最小化されるように、製品のバリューチェーンにおいて、より安全な代替品と革新的で持続可能な解決策が存在する。
戦略的目的E:増大した効果的なリソース動員、パートナーシップ、協力、能力形成及び全ての関連する意思決定プロセスへの統合を通じて、実施が強化される。
今後の展望
日本は、2026年に開催予定のGFC国際会議で進捗報告を提出し、国際的な議論を踏まえて国内計画を見直す予定です。環境省は、今回の意見募集を通じて、市民や関係者からの積極的な参加を呼びかけています。提出方法は、郵送または電子政府プラットフォーム経由で受け付けており、詳細は環境省の公式発表をご確認ください。