米国|TSCAインベントリで「不活動」と指定されたPFASの新規使用に関する規則(SNUR)
2023-04-10

パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化学物質(PFAS)のPFAS戦略ロードマップの一環

 2023年1月26日、米国環境保護庁(EPA)は、TSCA化学物質インベントリで「不活動(Inactive)」とされているパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)に対して、「新規使用に関する規則(SNUR)」の変更を提案しました。ここでは、「TSCAインベントリにおける不活動化学物質とは」「今回の提案の背景」「今回の提案の内容」について記事になっています。

TSCAインベントリにおける不活動化学物質とは:

 パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化学物質(PFAS)は、1940年代から使用されている合成化学物質のグループであ、現在でも幅広い消費者製品や産業用途で使用されています。多くのPFASは非常にゆっくりと分解し、時間の経過とともに人、動物、環境に蓄積し、ヒトの健康や他の生物に悪影響を与える可能性があります。2016年に有害物質管理法(Toxic Substances Control Act、TSCA)が改正される以前、環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)は新規化学物質の約20%について対処する権限がなかったため、PFASを含む多くの化学物質が完全なレビューがないまま商取引が許可されています。しかし、EPAはPFAS戦略ロードマップ新しい法律の下では、許可されている化学物質の安全性を100%正式にレビューする必要があると考えています。

 化学物質が、TSCAのインベントリ(TSCAインベントリ)に記載されると、その化学物質は米国の商取引における「既存の」化学物質として扱われます。この中にはTSCAインベントリに記載されてはいるが長年積極的に製造または輸入されておらず、TSCAインベントリ内で「不活動(Inactive)」として指定されている物質があります。

今回の提案の背景:

 EPAは、TSCAインベントリに記載されている物質を新たに製造や輸入する人(事業者)は、「重要な新規使用に関する規則(Significant New Use Rule、SNUR)」に基づき、この化学物質を製造または輸入、そして処理を開始する場合、少なくとも90日前にEPAに通知する必要があるとしています。通知を受け取ると、EPAは必要で適切な措置を決定し対処を講じます。しかし、一度化学物質がTSCAイベントリ記載され「不活動」に指定されているとSNURの要件ではなくなるため、通知の必要がありませんでした。現在「既存の」PFASで、2006年6月21日以降全く製造、輸入、処理されておらず「不活動」と指定され、結果SNURの対象となっていない330種のPFASがあります。

 EPAは、PFAS全般が人間の健康と環境に持続して悪影響を与える可能性があるため、「PFAS戦略ロードマップ:EPAの行動へのコミットメント2021-2024」という包括的な対処のためのロードマップを描いており、その中にこの330種のPFASへの対処も考えられていました。

今回の提案の内容:

 有害物質管理法に基づき、EPAは長年製造、輸入、処理されておらず、その結果TSCA化学物質インベントリで「不活動」として指定されているPFASに対して、「重要な新規使用に関する規則(SNUR)」を使用するように提案しています。今回の規則案が決定すると、現在「不活動」となっているPFASを使用予定の事業者は、開始する少なくとも90日前にEPAに重要な新規使用に関する通知(significant new use notice、SNUN)を提出する必要があります。EPAは通知を受け取ると、レビューの段階に入り対象となる化学物質使用がヒトの健康または環境に悪影響をもたらす可能性があるかどうかを評価します。レビュー対象にすることで、EPAは今後、不活動とされている種も含めたPFAS全般をSNURの対象としてレビューし、輸入や加工などが行われる前に対処することができるようになります。

 今回、EPAは「不活動」と特定されたPFASの新しい用途に関することについてパブリックコメントを求めています。この規則案が有効となった場合、PFASおよび混合物を製造、輸入、加工、または商業的に流通する事業者はこの規則により事業に影響を受ける可能性があります。SNUNが必要となった場合、大企業の事業者であるなら、SNUNの提出ごとに約26,737ドル、中小企業の事業者提出者の場合は11,047ドルと見積もられます。さらに、SNURの対象となる物質を輸出する人の場合、特定の国への最初もしくは特別な輸出について、1回限りの通知が必要となり、EPAへ106ドル程度を支払いが見積もられています。

参考

■ TSCAインベントリで「不活動」と指定されたPFASの新規使用に関する規則


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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